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人類の祖先が179万年前に「火をつかった痕跡」を発見

人類の祖先が179万年前に「火をつかった痕跡」を発見

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

人類の歴史を大きく変えた道具の1つが「火」です。

火は夜の闇を照らし、寒さをしのがせ、猛獣を遠ざけ、やがて食べ物を調理する力にもなりました。

では、私たちの祖先はいつから火を扱っていたのでしょうか。

この問いに新たな手がかりを与える発見が、南アフリカのワンダーワーク洞窟で報告されました。

スペイン・科学研究高等評議会(CSIC)らの研究チームは、約107万年前から最大で約179万年前にさかのぼる地層から、火で焼けたとみられる小型哺乳類の骨を発見したのです。

これはヒト族が火を使っていたことを示す最古級の証拠となる可能性があります。

研究成果は2026年6月1日付で学術誌『PLOS One』に掲載されました。

 

目次

  • 洞窟の奥で見つかった「火に焼けた骨」
  • 火を「起こした」のではなく、火を「運んだ」可能性

洞窟の奥で見つかった「火に焼けた骨」

ワンダーワーク洞窟は、南アフリカにある有名な考古学遺跡です。

長い期間にわたって人類の祖先が利用していた痕跡が残されており、以前の研究では、約100万年前の地層から焼けた骨や灰、熱で変化した石器などが見つかっていました。

つまり、この洞窟はすでに「人類と火の関係」を考えるうえで重要な場所だったのです。

今回の研究チームが注目したのは、さらに古い地層です。

彼らは、第10層と第11層と呼ばれる前期更新世の堆積層(約179万年前)から見つかった小型哺乳類の化石骨161点を調べました。

【洞窟の場所と内部での調査の様子がこちら】

興味深いことに、これらの小動物の多くは、ヒト族が食べた獲物ではなく、メンフクロウによって洞窟内に持ち込まれた可能性があります。

フクロウは消化できない骨や毛をペリットとして吐き出します。

そのため、洞窟の床には小動物の骨が長い時間をかけて積み重なっていきました。

研究チームは、その骨の一部が後に火と接触したのではないかと考えたのです。

では、数十万年以上前の骨が本当に焼けていたかどうかを、どうやって確かめるのでしょうか。

研究では、「フーリエ変換赤外分光法」と呼ばれる方法に加えて、「骨ルミネセンス」という新しい光学的手法が使われました。

フーリエ変換赤外分光法は、骨が高温で加熱されたときに起きる構造変化を調べる方法です。

一方、骨ルミネセンスはもっと視覚的です。

灰色や白色の化石骨に青い光を当て、特殊なフィルター越しに見ると、焼けた骨だけが赤く光るのです。

チームは、現代の骨を実験的に加熱した試料や、スペインの青銅器時代の遺跡から得られた骨とも比較し、この方法が焼けた骨の判定に有効であることを確認しました。

その結果、より古い第11層から見つかった白色・灰色の骨は、調べられたすべてで加熱の痕跡を示しました。

しかも、フーリエ変換赤外分光法と骨ルミネセンスの2つの方法が、同じ結論を示していたのです。

火を「起こした」のではなく、火を「運んだ」可能性

今回の発見で重要なのは、焼けた骨が見つかった場所です。

化石は、洞窟の入口から少なくとも30メートル奥の堆積物から見つかりました。

もし外で自然の草原火災や山火事が起きたとしても、その炎が洞窟の奥深くまで入り込み、床に散らばった小さな骨を焼くとは考えにくい場所です。

さらに、焼けた骨は発掘範囲全体に均一に広がっていたのではなく、特定の場所にまとまって見つかりました。

これは、単なる偶然の火災というより、洞窟内の決まった場所で燃焼が繰り返された可能性を示しています。

そして、その同じ地層からは、アシュール文化の石器や大型動物の化石も見つかっています。

アシュール文化とは、握斧(あくふ、ハンドアックス)などに代表される前期旧石器時代の石器文化です。

チームは、こうした状況から、火の痕跡をヒト族の活動と結びつけられると考えています。

ただし、ここで注意が必要です。

今回の研究は、人類の祖先が約179万年前に火を自分で起こしていたことを示すものではありません。

また、火を使って料理をしていた証拠でもありません。

研究が示しているのは、初期のヒト族が自然界の火を外から持ち込み、洞窟内でしばらく維持していた可能性です。

自然の火を持ち運んで維持した可能性/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

火を持ち運ぶだけでも、簡単なことではありません。

燃えた枝や炭を消さずに運び、洞窟の奥で燃え続けさせるには、火の性質をある程度理解し、扱う力が必要です。

この火が何のために使われたのかは、まだはっきりしません。

しかし、火があれば洞窟の中を照らせます。

寒さをしのぐこともでき、捕食者を遠ざける助けにもなります。

夜の洞窟で小さな炎が揺れていたとすれば、それは私たちの祖先にとって、単なる自然現象ではなく、生活空間を変える力だったはずです。

今回のワンダーワーク洞窟の発見は、人類が火を「発明」した瞬間を示すものではありません。

しかし、約107万年前から179万年前という非常に古い時期に、ヒト族が洞窟の奥で火を管理していた可能性を強める証拠です。

床に散らばっていたフクロウ由来の小さな骨が、遠い祖先の火の記憶を残していたという点も、この研究の面白さです。

火を使う力は、ある日突然生まれたものではなく、自然の炎を拾い、運び、消えないように保つところから少しずつ始まったのかもしれません。

参考文献

Wonderwerk Cave bones reveal possible fire use by human ancestors 1.79 million years ago
https://phys.org/news/2026-06-wonderwerk-cave-bones-reveal-human.html

Early humans used fire in Wonderwerk Cave up to 1.8 million years ago
https://archaeologymag.com/2026/06/early-humans-used-fire-in-wonderwerk-cave/

元論文

New evidence for Early Pleistocene use of fire at Wonderwerk Cave (South Africa)
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0347480

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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