
「もっときれいになりたい」「外見を変えれば、自分に自信が持てるかもしれない」
美容整形に対する考え方は、ここ数年で大きく変わってきました。
かつては特別な選択肢と見なされがちだった美容整形も、SNSや美容医療の普及によって、若い世代にとっても身近な自己改善の手段になりつつあります。
では、どのような人が美容整形に前向きになりやすいのでしょうか。
イラク・ソラン大学(Soran University)の研究チームは、大学生を対象に「性格特性」と「美容整形への受容度」の関係を調査。
その結果、ナルシシズムなどの「ダークトライアド」と呼ばれる性格特性が高い人ほど、美容整形を受け入れやすい傾向があることが示されました。
ただしこれは、「美容整形をしたい人はナルシストだ」という単純な話ではありません。
研究が示しているのは、外見を変えたいという気持ちの背後に、自己イメージや他者からの評価をめぐる心理が関係している可能性です。
研究の詳細は2026年4月28日付で学術誌『Aesthetic Plastic Surgery』に掲載されています。
目次
- 美容整形に前向きになりやすい特性とは?
- 背景にある「周囲からどう見られるか」への敏感さ
美容整形に前向きになりやすい特性とは?
今回注目されたのは「ダークトライアド」と呼ばれる3つの性格特性です。
これは
・ナルシシズム(自分への強い関心や優越感、他者からの称賛を求める傾向)
・マキャヴェリズム(目的のために他者や状況を操作しようとする傾向)
・サイコパシー(衝動性や共感性の低さ、他者の感情を軽視しやすい傾向)
をまとめた概念です。
これらは極端な悪人だけが持つものではなく、多くの人が程度の差こそあれ持っている性格傾向です。
研究チームは、2024年10月から11月にかけて、大学生1321人を対象に自己報告式の調査を実施。
参加者は女性984人、男性337人で、年齢は18歳から35歳でした。
調査では、ダークトライアドを測る質問票と、美容整形に対する受容度を測る質問票が使われました。
美容整形への受容度は、単に「手術を受けたいか」だけでなく、いくつかの側面に分けて調べられました。
たとえば「見た目に悩み続けるより、軽い手術を受けたほうがよいと思うか」といった個人的な利益への考え方。
また、「パートナーが望むなら受けるか」といった社会的な動機。
そして、将来的に実際に美容整形を検討する可能性です。
つまりチームは、美容整形への関心を、見た目への悩み、周囲からの評価、実際の行動意図という複数の角度から捉えようとしたのです。
分析の結果、男性は女性よりも、ナルシシズム、マキャベリアニズム、サイコパシーのすべてで高いスコアを示しました。
一方、美容整形を将来的に本気で検討する可能性については、女性の方が高いスコアを示しました。
そして全体のデータを詳しく見ると、ダークトライアドの特性が高い人ほど、美容整形に対して前向きな態度を示しやすいことがわかりました。
中でも最も強い予測因子となったのが、ナルシシズムでした。
背景にある「周囲からどう見られるか」への敏感さ
ナルシシズム傾向が強い人は、外見的な魅力を、他者から注目を集めたり、評価を得たりするための重要な手段として捉えやすいと考えられます。
そのため、美容整形によって外見を整えることが、自分の価値を高める方法として魅力的に見えるのかもしれません。
チームは、ナルシシズムの背景には、表面的な自信とは別に、外部からの承認を求める不安定な自己評価が関係する可能性にも触れています。
つまり、強く自分をよく見せたいという気持ちは、単なる自信の表れではなく、他者からどう見られるかへの敏感さとも結びついている可能性があるのです。
ただし、今回の研究から「ナルシシズムが美容整形願望を引き起こす」とまでは言えません。
研究は一時点の調査であり、示されたのはあくまで性格特性と美容整形への態度の関連です。
また、対象はイラク・クルディスタン地域の大学生に限られているため、この結果をすべての国や年齢層にそのまま当てはめることもできません。
それでも今回の研究は、美容整形を「美意識」や「流行」だけで語るのではなく、その背後にある自己イメージや承認欲求にも目を向ける必要があることを示しています。
美容整形は、外見を変える医療であると同時に、「自分をどう見せたいか」「他者からどう見られたいか」という心理とも深く関わる選択です。
美しくなりたいという願いの奥には、ときに鏡に映る顔だけでなく、他人の目に映る自分を変えたいという思いが隠れているのかもしれません。
参考文献
Narcissism and dark personality traits predict a strong desire for cosmetic surgery
https://www.psypost.org/narcissism-and-dark-personality-traits-predict-a-strong-desire-for-cosmetic-surg/
元論文
The Dark Triad of Personality in Relation to Acceptance to Cosmetic Surgery Among University Students
https://doi.org/10.1007/s00266-026-05875-3
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

