
1988年の誕生以来、今なお根強い人気を誇る『機動警察パトレイバー』シリーズ。その完全新作アニメーション『機動警察パトレイバー EZY』 File 1が大ヒット公開中。本作で新たな第二小隊のイングラム1号機コンビを演じるのが、久我十和役の上坂すみれと天鳥桔平役の戸谷菊之介だ。伝説のシリーズを受け継ぐプレッシャーから、アフレコ現場でのエピソード、そして令和の時代に描かれる「パトレイバーらしさ」まで、二人にたっぷりと語ってもらった。【※本記事は『機動警察パトレイバー EZY』File 1(第1話〜第3話)の展開に関する記述が含まれます。未見の方はご注意ください】
■伝説のシリーズを受け継ぐプレッシャーと、令和に繋がる「特車二課」
――誕生から40年近く愛され続ける作品ですが、「新たな第二小隊のコンビ」となったお気持ちはいかがですか?
戸谷 歴史のあるシリーズですので、やっぱり最初は不安もありました。ただ台本を読ませていただくと、キャラクターも時代も前のシリーズとの繋がりが明確に描かれていて、めっちゃ熱い気持ちになったんです。自分もこの世界の一員になれるんだと実感してからは、不安よりもワクワクや嬉しさのほうが大きくなっていきました。
――本作は、野明や遊馬がいた特車二課から地続きの世界ですよね。
戸谷 そうです。舞台は2030年代ですけど、シゲさんたちも普通に出てきますから。そういう意味でも、しっかりとシリーズのバトンを受け継いでいるんだという喜びがあります。

――戸谷さんはリアルタイム世代ではないですが、本作はご存知でしたか?
戸谷 有名なシリーズなので名前は聞いたことはありましたけど、中身に触れたのは今回が初めてで、オーディションの段階で初めて初期OVAシリーズを見させていただいたんです。
――ご覧になった印象はいかがでしたか?
戸谷 世界観やキャラクターも魅力ですけど、何よりアニメーションの演出がすごいなと思いました。他のアニメではやっていないような間の取り方とかをしていて、それが印象的でした。あと、観る前までは漠然と「ロボット作品」だと思っていたんですけど、それが前面に出ていないというか。『アーリーデイズ』の第1話もイングラムが登場するまでけっこう引っ張っていて「まだ出ないんだ」って(笑)。
――上坂さんはいかがでしたか?
上坂 私はもともとシリーズのファンなので、まずは「新作やるんだ!」ってすごく嬉しかったです。しかもイングラムの1号機フォワードなんて、一番の憧れなので本当に夢のようです。『パトレイバー』ってロボットアニメではありますけど、限りなくお仕事ものというか、「働く車」の延長線上としてイングラムがあって、それがたまらなく好きなんです。

――上坂さんは以前「小さいロボットが好き」とおっしゃっていました。イングラムのようなサイズ感がツボなんですよね。
上坂 そうですね。人間とロボットが一緒の画面に映った際の独特なバランスが好きなんです。もともと『装甲騎兵ボトムズ』が好きで、その主人公機が4メートルぐらいのサイズ感なんですけど、それにめちゃくちゃグッときていたんです。イングラムは約8メートルとそれよりは少し大きいんですけど、大好きですね。特に市街地とか、私たちが馴染みのある風景に違和感なく共存できるサイズで、そこにロマンを感じます。
――マニアならではの視点ですね。メカ以外の魅力についてはいかがですか?
上坂 やっぱりお仕事ものならではの雰囲気がいいですよね。基本的には日常なんですけど、瞬間的に緊迫した場面になったり、また戻ったり。今回もヘッドギアの面々の皆様が携わっているので、その遺伝子はしっかりと受け継がれていて、「File 1」から『パトレイバー』っぽさを全身で感じることができました。往年の視聴者からしたらグッとくる演出だと思います。


■十和と桔平の「新生・1号機バディ」の演じ方
――今回コンビを組むにあたり、キャラクターを演じる上で気をつけたことや、ディレクションで変わっていった部分はありますか?
戸谷 僕は最初のテストでは、少し押され気味な桔平を演じていたんです。十和がワーッて言うのに「やれやれ」みたいな。でもディレクションで「桔平はもっと強くていい。怒っちゃってもいい」と言っていただいて。対等で、ちゃんと言い合える関係性なんだということを意識して演じました。
上坂 十和に関しては「思いっきりやってくれ、以上!」みたいなディレクションで(笑)。フォワードができる私個人の喜びと、最前線に出て暴れられる十和の喜びがシンクロして、すごく楽しくやらせていただきました。「多少尺がこぼれても気にしないでいい」と言われて、実際によくこぼしていて(笑)。でもその分、桔平がそれを受けて調整してくれたりとか、掛け合いの中でコンビネーションが培われていきました。
――二人の対等なコンビ感というのは、会話の中でも随所に感じました。
戸谷 十和がワーッと行こうとするのを、桔平が「それはダメだ!」って手綱を握ろうとするんですよね。
上坂 その対等な関係が「フォワードとバックアップの一心同体感なんだな」と感じられてすごかったです。
戸谷 まあ、最終的には根負けして手綱を離しちゃうこともあるんですけど(笑)。
――現場には大御所の方々もいらっしゃると思いますが、アフレコの雰囲気はいかがですか?
上坂 第1話の時は本当に緊張していました。戸谷さんとのフリートークもなかなか難しかったです(笑)。でも特車二課の皆さんやゲストキャラの大先輩が「『パトレイバー』はいいよね」っていう空気を率先して出してくださって、それで気分が楽になったところはあります。
戸谷 僕もです。特に佐伯隊長役の林原めぐみさんは、すごく『パトレイバー』を感じるお芝居で、感激しましたね。
上坂 そうそう。後藤隊長っぽい食えない感じというか、いいキャラです。

――収録を通じて、今ではだいぶお二人の仲も縮まりましたか?
戸谷 ……そうだと思います……ですよね?
上坂 ……そう……です。「もちろん!」って書いておいてください(笑)。でも私と戸谷さんって、話せば話すほど正反対で、そこが結構面白いなって思います。
――例えばどんなところが正反対ですか?
戸谷 お笑いの趣味とか。上坂さんは好きな芸人さんは?
上坂 私はハリウッドザコシショウさんが好きなんです。
戸谷 で、僕はバカリズムさんが好きなんです(笑)。
――正反対ですね(笑)。ではもしお二人がコンビを組んだ場合、どちらがフォワード(肉体派)で、どちらが指揮役(頭脳派)になりますか?
戸谷 それはもちろん、上坂さんが肉体派ですよ。
上坂 まあ、体を張ったネタは私が。タライとか水被るのは私がやりますんで(笑)。
――「File 1」が公開中ですので、少し内容の話もさせてください。まず第2話「閑中妄あり」ですが、妄想シーンでの誇張したお芝居がとても印象的でした。
戸谷 あれは難しかったですね。
上坂 まだキャラが固まる前の序盤で、こんなお話が来ちゃうなんてという驚きはありました。
戸谷 僕のセリフの1個前が間昭彦役の小林親弘さんだったんですけど、すごく激しめにやっていたので「僕もこのくらいやらなきゃ」と思って。「これは街を守ってるんです!」というセリフはかなりオーバーにやった記憶があります。
上坂 イングラムが十和を放り出して相手に向かっていく妄想シーンは、乙女な八久万さんが書いている設定なので、だいぶロマンチックに「一緒に最後まで戦おうって言ったじゃないか!」みたいなノリでやりました。旧作でも「このノリってなんなんだろう?」みたいな回ってちょいちょいあるので、それを思い出してすごく楽しかったです。
――続けて第3話「ホンモノが一番」も超コメディでしたね。旧作キャラクターの太田功や進士幹泰が出てくるのも、ファンとしては嬉しいポイントです。
戸谷 結構すごいことが起きていて、下手をしたら人が死んでもおかしくない状況なのに、みんなわりと呑気にやっているのが『パトレイバー』っぽいなと思いました。
上坂 やっぱ太田さんは燃えたり凍ったりしないと(笑)。期待に応えてくれて、進士さんもキレてくれて。変わっていないんだっていうのが嬉しかったですね。
――本作で初めて『パトレイバー』の世界に触れる人も多いと思います。最後にメッセージをお願いします。
戸谷 僕もこの『EZY』をきっかけに『パトレイバー』という作品を知ることができて、本当に良かったなという気持ちです。世間的に「Z世代」と呼ばれる僕が『アーリーデイズ』を見ても「こんな演出あったんだ」と新鮮に感じたので、同じ年代の人が見てもきっと楽しめると思います。気になっている方は、ぜひ過去作をサッとご覧になって、それから『EZY』に触れてもらえると、よりハマれるんじゃないかと思います。
上坂 『パトレイバー』を知らない方は「警察ロボットアニメ」みたいなイメージがあるかもしれませんが、本当に肩肘張らずに見られる作品です。なんなら、家事やご飯を食べながらでも楽しく見られるエピソードばかりです。「キャラが可愛い」「イングラムかっこいい」など、見る人によってポイントは違っても、その奥には深ーい沼が待っています。沼にハマるってオタクとしては幸せなことなので、これからの人生、ずっと『パトレイバー』の沼にはまってほしいなと切に願っています。
――ありがとうございました。
◆取材・文=岡本大介


