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サッカーW杯の観戦には「心の健康メリット」がある

サッカーW杯の観戦には「心の健康メリット」がある

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

サッカーW杯のような大きなスポーツイベントは、見る人の心を大きく揺さぶります。

勝てば飛び上がるほど嬉しくなり、負ければ何日も引きずるほど落ち込むこともあります。

では、こうしたスポーツ観戦は、私たちの心にとって良いものなのでしょうか。

英アングリア・ラスキン大学(Anglia Ruskin University)の研究チームは2023年に、スポーツのライブ観戦と主観的幸福感、孤独感の関係を調査。

その結果、過去1年以内にスポーツのライブイベントへ参加した人は、参加していない人よりも生活満足度が高く、人生に価値を感じやすく、孤独感が低い傾向があると示されたのです。

目次

  • スポーツ観戦で幸福度が高まる傾向
  • テレビ観戦でもOK!

スポーツ観戦で幸福度が高まる傾向

研究チームが使用したのは、英国政府が委託した「Taking Part Survey 2019–2020」のデータです。

対象となったのは、イングランド在住の16〜85歳の成人7209人

参加者には、過去12カ月以内にスポーツのライブイベントへ参加したかどうかが尋ねられました。

さらに、生活満足度、幸福感、不安、自分の人生には価値があるという感覚、孤独感なども調べられました。

そのうえでチームは、性別、年齢、健康状態、雇用状況、居住地域の貧困度など、幸福感に影響しやすい要因を統計的に調整しています。

その結果、スポーツのライブイベントに参加した人は、参加していない人よりも、生活満足度が高く、自分の人生には価値があると感じやすく、孤独感が低い傾向を示しました。

一方で、幸福感そのものや不安については、スポーツ観戦との明確な関連は確認されませんでした。

つまり、この研究から言えるのは、「スポーツ観戦をすれば気分が明るくなる」「必ず不安が消える」ということではありません。

より正確には、スポーツを観戦する人ほど、人生への満足感や価値感が高く、孤独を感じにくい傾向があった、ということです。

また、この研究は観察研究であるため、因果関係を断定することはできません。

もともと友人が多い人や、健康状態が良い人、経済的に余裕のある人ほど、スポーツイベントに行きやすい可能性もあります。

それでも、スポーツ観戦と心の健康のあいだに関連が見られたことは、見逃せないポイントです。

では、なぜスポーツ観戦は私たちの幸福感や孤独感と結びつくのでしょうか。

テレビ観戦でもOK!

研究者たちは、スポーツ観戦のメリットには「社会的つながり」が関わっている可能性を指摘しています。

スポーツ観戦は、ただ試合を見るだけの行為ではありません。

同じチームを応援し、同じ場面で歓声を上げ、同じ勝利や敗北を共有する体験です。

サッカーW杯のような大会では、普段はスポーツに強い関心がない人でも、家族や友人、職場の人たちと一緒に代表チームを応援することがあります。

その瞬間、私たちは「同じものを応援している」という感覚を持ちます。

このような共有体験は、社会的アイデンティティ、つまり「自分はこの集団の一員である」という感覚と関係しています。

同じチームを応援するファン同士は、互いに直接の知り合いでなくても、心理的なつながりを感じやすくなります。

勝利の喜びを分かち合えば、自分自身の成功ではなくても、まるで自分のことのように嬉しく感じます。

一方で、チームが負けたときには落ち込むこともありますが、その悔しさもまた、誰かと共有できる感情です。

この「一緒に喜ぶ」「一緒に悔しがる」という体験が、孤独感をやわらげる一因になっているのかもしれません。

先行研究では、テレビやオンラインでスポーツを観る人でも、観ない人より抑うつ症状が少ない傾向が報告されています。

また、日本の脳画像研究では、野球のような人気の高い観戦スポーツを見ているとき、心理的報酬に関わる脳領域がより活発になることも示されています。

このことから、スポーツ観戦の価値は、必ずしもスタジアムに足を運ぶことだけに限られないと考えられます。

自宅のテレビの前であっても、友人とオンラインで感想を言い合う場合でも、そこに共有体験があれば、心理的なメリットにつながる可能性があります。

もちろん、今回の論文が直接調べたのは、サッカーW杯ではなく、スポーツのライブイベントへの参加です。

そのため、「W杯観戦には健康効果がある」と言い切るのは行き過ぎです。

しかし、W杯のように多くの人が同じ試合を見て、同じ感情を共有するイベントは、スポーツ観戦が持つ社会的な力を理解するうえで、とてもわかりやすい例だと言えます。

スポーツ観戦は、勝ち負けに一喜一憂するだけの娯楽ではありません。

誰かと同じチームを応援し、感情を分かち合うことで、私たちは自分がひとりではないと感じられるのです。

次にサッカーW杯を観るときは、試合結果だけでなく、誰とその時間を共有しているかにも目を向けてみるとよいかもしれません。

応援の声が重なる場所には、心を少し健康にする力が隠れているのかもしれません。

参考文献

Watching The World Cup May Actually Be Good For You, Evidence Shows
https://www.sciencealert.com/watching-the-world-cup-may-actually-be-good-for-you-evidence-shows

元論文

Attending live sporting events predicts subjective wellbeing and reduces loneliness
https://doi.org/10.3389/fpubh.2022.989706

Watching sport enhances well-being: evidence from a multi-method approach
https://doi.org/10.1080/14413523.2024.2329831

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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