
いつも明るく、ちょっとした出来事にも笑顔で反応できる人がいます。
物事が思い通りに進まなくても、「まあ、こういうこともある」と前向きに受け止められる人を見ると、生まれつきの性格なのだろうと思うかもしれません。
心理学では、このように喜び、熱意、興奮といったポジティブな感情を経験しやすい傾向を「ポジティブ感情傾向」と呼びます。
かつては、こうした性格傾向はかなり固定されたものだと考えられていました。
しかしポジティブ心理学の研究は、幸福感が完全に生まれつき決まっているわけではなく、日々の行動によって育てられる可能性を示しています。
では、私たちはどんな行動によって、より幸せを感じやすい状態に近づけるのでしょうか。
目次
- 幸福感は何で決まるのか?「幸せの円グラフ」
- 幸福感が高まりやすい「5つの行動」
幸福感は何で決まるのか?「幸せの円グラフ」
米カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学者、ソニア・リュボミアスキー氏が提案した有名なモデルでは、幸福を円グラフのように考えます。
このモデルによると、幸福のおよそ半分は遺伝的な要因で説明され、住んでいる場所、結婚しているかどうか、収入がどれくらいあるかといった生活環境の影響は約10%とされています。
そして残りのおよそ40%は、私たちが意図的に行う活動や行動によって左右されると考えられています。

もちろん、これは「誰でも簡単に幸せになれる」という意味ではありません。
つらい状況や大きなストレスを、前向きな行動だけで消せるわけではないからです。
それでも、この考え方が重要なのは、幸福を「持っているか、持っていないか」だけで捉えない点にあります。
幸福感は、日々の習慣によって少しずつ育てられるものでもあるのです。
また、心理学のビッグファイブ性格モデルでは、ポジティブ感情傾向は外向性と深く関連するとされています。
外向性というと、社交的でよく話す性格をイメージしがちです。
しかし、そこには「報酬になりそうな経験に気づき、それを求める傾向」も含まれています。
つまり、幸せを感じやすい人は、単に明るいだけでなく、日常の中にある喜びやつながりのチャンスを見つけやすいのです。
そして、その見つけ方は、日々の行動によって鍛えられる可能性があります。
では、具体的にどのような行動が幸福感を高める助けになるのでしょうか。
幸福感が高まりやすい「5つの行動」
1つ目は「感謝」です。
ポジティブ心理学でよく研究されている方法の1つに、自分の生活の中でうまくいっていることへ意識的に目を向ける実践があります。
たとえば、感謝についての日記をつける、誰かにお礼のメッセージを書く、その日に起きた良いことを3つ思い出すといった方法です。
大きな幸運でなくても構いません。
「思ったより仕事が早く終わった」といった小さな出来事でも、意識して味わうことで幸福感につながりやすくなります。
2つ目は「人間関係への投資」です。
強い社会的つながりは、幸福を予測する安定した要因の1つとされています。
友人に電話する、家族と食事する、しばらく連絡できていなかった人にメッセージを送る。
そうした行動は、孤立感をやわらげるだけでなく、ポジティブな感情を他者と共有する機会にもなります。
うれしい気持ちは、誰かと分かち合うことでさらに大きくなることがあります。
3つ目は「親切な行動」です。
誰かを助けることは、助けられた人だけでなく、助けた本人にも良い影響をもたらすと考えられています。
小さな手助けをする、相手を気づかう言葉をかける、見返りを求めずに行動する。
こうした親切は、ポジティブな感情を増やし、人間関係を強め、人生に目的意識を感じる助けになる可能性があります。
4つ目は「身体を動かすこと」です。
運動と聞くと、厳しい筋トレや長時間のランニングを想像するかもしれません。
しかし、気分を改善するための身体活動は、必ずしも過酷である必要はありません。
散歩、ガーデニング、ダンス、ハイキング、気軽なスポーツなど、自分が楽しめる動きで十分です。
重要なのは、義務感だけで続けるのではなく、「これなら気持ちいい」と思える活動を選ぶことです。
5つ目は「ポジティブな経験を味わうこと」です。
私たちは、楽しい瞬間が訪れても、次の予定や別の心配事に意識を向けてしまいがちです。
しかし、朝のコーヒーの香り、美しい夕焼け、大切な人との会話などを少しだけ長く味わうことで、ポジティブな感情は持続しやすくなります。
ネガティブな感情は、差し迫った締め切りや危険など、今すぐ対処すべき対象へ注意を絞る働きを持っています。
一方で、ポジティブな感情は、私たちの視野を広げ、喜び、つながり、意味を見つける機会に気づきやすくしてくれます。
感謝し、人とつながり、親切にし、身体を動かし、良い瞬間を味わう。
こうした行動を繰り返すうちに、最初は意識的な習慣だったものが、少しずつ「幸せを見つけやすい自分」の一部になっていくのかもしれません。
参考文献
Become a Happier Person
https://www.psychologytoday.com/us/blog/self-made/202606/become-a-happier-person
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

