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人間は「反時計回りに歩く」のを好む、研究で判明

人間は「反時計回りに歩く」のを好む、研究で判明

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

何も考えずに街中や百貨店を歩き回るとしたら、あなたは右回りと左回りのどちらに進むでしょうか。

一見すると、そんなものは気分次第に思えます。

しかし新たな研究によると、人間は自由に歩き回るとき、平均的には「反時計回りに動きやすい傾向」があるようです。

スペイン・ナバーラ大学(University of Navarra)らの研究チームは、スペインと日本で歩行者の動きを調べる実験を行いました。

その結果、人々は単独でも集団でも、時計回りより反時計回りに曲がりやすいことが示されたのです。

研究成果は2026年6月10日付で科学誌『Nature Communications』に掲載されています。

目次

  • 無意識に「反時計回り」に歩いていた
  • なぜ反時計回りになりやすいのかは不明

無意識に「反時計回り」に歩いていた

この発見の始まりは、もともと「歩く方向」を調べる研究ではありませんでした。

研究チームはコロナ禍の中、人々が同じ空間の中でどれくらい安全な距離を保てるかを調べるため、歩行者の動きを記録していました。

ところが映像を見返していると、思いがけないパターンが見えてきました。

参加者たちがランダムに歩いているはずなのに、集団全体として見ると、中心の周りを反時計回りに回転する傾向があったのです。

しかもこの傾向は偶然とは考えにくいほど繰り返し現れました。

チームによると、最初の実験では33試行中32試行で、人々が反時計回りに動く傾向を示したとされています。

研究者たちは、この奇妙な偏りが本当に人間に共通するものなのかを確かめるため、さらに実験を重ねました。

スペインでは円形の囲いの中だけでなく、学校の校庭のような開けた空間でも調査が行われました。

日本でも同様の実験が行われ、文化や歩行習慣が違っても反時計回りの傾向が再現されました。

これは、単に「壁に沿って歩いたから」「その国の交通ルールの影響を受けたから」といった説明では片づけられないことを意味します。

さらにチームは、利き手、性別、片眼を隠した状態なども調べました。

しかし、これらの要因によって反時計回りの傾向が大きく変わることはありませんでした。

唯一目立った違いは、子どもの方がこの偏りをやや強く示した点です。

つまり人間の歩き方には、自分でも気づかない「わずかな方向のクセ」が潜んでいる可能性があるのです。

では、なぜ私たちは反時計回りに歩きやすいのでしょうか。

なぜ反時計回りになりやすいのかは不明

この研究で重要なのは、反時計回りの動きが「みんながそうしているから生まれる集団心理」だけでは説明できなかった点です。

人混みでは、歩行者同士がぶつからないように避け合い、その結果として自然に列や流れができます。

しかし今回の反時計回りの偏りは、集団で歩いているときだけでなく、1人で歩いているときにも観察されました。

つまり、集団内の相互作用だけで生じた現象ではなく、一人ひとりの身体や感覚処理に由来する小さな偏りが、全体の流れとして現れている可能性があります。

東京大学の発表では、全体としては反時計回りに動く人が約65%を占めていたと説明されています。

また、反時計回りの動きは、全員が同じ程度に持つ弱いクセというより、その方向に強い選好を示す一部の人が全体平均を押し上げている可能性も示されています。

ただし、なぜそのような偏りが生まれるのかは、まだ分かっていません。

研究者たちは、身体の左右差、脳による感覚情報の処理、筋肉の制御など、生体力学的または認知的な要因が関係している可能性を考えています。

一方で、片眼を隠しても傾向が残ったため、少なくとも「目の使い方だけ」で説明するのは難しそうです。

また、地球の自転によるコリオリの力や地磁気の影響についても、研究者たちは可能性が低いと見ています。

この発見は、一見するとささいなクセのように思えます。

しかし、駅、博物館、スーパー、避難経路など、人が多く移動する場所の設計を考えるうえでは重要です。

もし多くの人が自然に反時計回りへ動きやすいなら、その傾向に合わせた動線の方が、よりスムーズで安全な移動につながるかもしれません。

もちろん、この研究は「人間は必ず反時計回りに歩く」と言っているわけではありません。

あくまで、自由に歩き回る状況では、平均として反時計回りの傾向が現れやすい、という結果です。

私たちは普段、自分の意思でまっすぐ歩いているつもりです。

しかしその足取りには、本人も気づかない小さな偏りがあり、それが集まると人の流れ全体を一方向へ傾けるのかもしれません。

何気なく歩いているだけの私たちの体にも、まだ説明のつかない「クセ」が隠れているのです。

参考文献

Humans prefer to walk anticlockwise, scientists find – but reason is unclear
https://www.theguardian.com/science/2026/jun/10/humans-prefer-to-walk-anticlockwise-scientists-find-reason-unclear

元論文

Individual locomotor bias drives counterclockwise motion in pedestrian crowds
https://doi.org/10.1038/s41467-026-73713-w

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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