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全長4.4ミリの「極小手術ロボット」を開発、5つの機能あり【動画】

全長4.4ミリの「極小手術ロボット」を開発、5つの機能あり【動画】

全長4.4ミリの5-in-1な手術ロボット。※イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

まるで体内を進む「小さな万能ナイフ」のような手術ロボットが開発されました。

シンガポールの南洋理工大学(NTU)の研究チームは、全長わずか4.4mmのロボットに、移動、切断、薬剤放出、組織採取、局所加熱という5つの機能を持たせることに成功しました。

このロボットは外部の弱い磁場で遠隔操作され、機能の切り替えは1秒未満で行えるといいます。

まだ実用化前の実験段階ですが、体を大きく切らずに診断や治療を行う未来の医療につながるかもしれません。

研究成果は2026年5月15日付で学術誌『Advanced Materials』に掲載されました。

目次

  • 全長4.4ミリの極小ロボットに5つの機能を持たせることに成功
  • 鶏レバーやゼラチン製モデルで5つの機能を確認

全長4.4ミリの極小ロボットに5つの機能を持たせることに成功

体を大きく切らずに治療する「低侵襲手術」は、患者の負担を減らせる方法として広く使われています。

しかし、体内には細く曲がった通路や、柔らかくて滑りやすい組織が多くあります。

こうした場所に届くには、従来の大きな手術器具では限界があります。

そこで近年注目されているのが、外部から磁場をかけて動かす小型ロボットです。

ロボットは体の外にある磁気コイルから弱い磁場を受けて動くため、将来的には狭い場所での治療に役立つ可能性があります。

ただ、これまでの磁気ロボットには大きな課題がありました。

多くは「薬を運ぶ」「組織をつかむ」など、1つか2つの機能に特化していたのです。

その理由は、磁場をかけるとロボット全体が一緒に反応しやすいためです。

たとえば、刃の部分だけを出したいのに、ロボット全体が同じ方向に動いてしまえば、細かい処置はできません。

NTUの研究チームは、この問題を解決するため、ロボットの中心に特殊な磁気モジュールを組み込みました。

このモジュールは、磁化(磁石化)、消磁(磁力を消すこと)、そして異なる方向への再磁化が可能です。

つまり、ロボット内部の「磁石の向き」を必要に応じて書き換えられる仕組みになっています。

それぞれの磁気の向きは異なる機能に対応しており、ある向きでは組織を切断する刃が作動し、別の向きでは組織をつかむ機構が働く、といった具合に機能が切り替わります。

さらに、ロボット内の各部分が磁場に対して異なる反応を示すよう設計されているため、同じロボットでありながら、必要な部分だけを選択的に動かせます。

同じ磁場をかけても、一部だけが形を変えて道具を起動し、他の部分はそのまま保たれるのです。

これにより、研究チームは、4.4ミリのロボットに、移動、切断、薬剤放出、組織採取、局所加熱という5つの機能を持たせることに成功しました。

小さな体の中で5つの異なる機能を切り替えて使えるのです。

では、この「5-in-1」の仕組みは、実際にどこまで働いたのでしょうか。

鶏レバーやゼラチン製モデルで5つの機能を確認

研究チームは、ロボットの性能を調べるため、ゼラチンで作った柔らかい組織モデルや鶏レバーを使って実験を行いました。

実験室内では、ロボットが柔らかく凹凸のある表面を移動し、生物組織を切断できました。

さらに、薬剤を模した粒子を放出し、組織サンプルをつかんで保存することが確認されました。

また、ロボット内部の磁性材料を発熱させ、狙った場所に局所的な熱を生じさせることも確認されました。

この加熱機能は、がん治療への応用が研究されている「磁気ハイパーサーミア」と関係しています。

磁気ハイパーサーミアとは、磁性材料を目的の場所で温め、その熱によって腫瘍細胞にダメージを与えることを目指す方法です。

今回のロボットがそのまま治療に使えるわけではありませんが、将来的に薬剤投与、組織採取、局所加熱を1台でこなす医療機器につながる可能性があります。

材料面でも、研究チームは初期的な安全性を調べています。

ロボットは、柔らかいシリコーン系材料で作られており、内部には約5マイクロメートルの磁性微粒子が埋め込まれています。

培養したヒト皮膚細胞を使った実験では、ロボット材料にさらされた後も99%を超える細胞が生存し、対照群と同じ程度だったと報告されています。

ただし、これは研究室内での細胞実験であり、人間の体内で安全に使えることを示したものではありません。

実際の医療に応用するには、体内でロボットの位置をどう確認するのか、医師がどのように操作するのか、処置後にどう回収するのかなど、多くの課題が残されています。

研究チームも現在、画像技術やセンサー、より本物の臓器に近い人工モデルとの組み合わせを検討している段階です。

今はまだ研究室の中の小さなロボットですが、将来は体内で薬を届け、組織を採り、熱を加える「医療用マルチツール」になるかもしれません。

参考文献

A ‘5-in-1’ seed-sized surgical robot
https://www.ntu.edu.sg/news/detail/a--5-in-1--seed-sized-surgical-robot

元論文

Miniature Soft Robot With Magnetically Reprogrammable Surgical Functions
https://doi.org/10.1002/adma.202523056

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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