
オランダは隙が見えにくい相手。奇襲的な戦いで出鼻を挫くのはどうか。小川航基、前田大然、伊東純也を使って消耗戦に持ち込み…【識者コラム】
北中米ワールドカップが開幕した。
森保一監督が率いる日本代表は、グループステージでオランダ、チュニジア、スウェーデンの順に対戦することが決まっている。1、2位が自動的にノックアウトステージに勝ち進める。3位になった場合、他のグループとの兼ね合いになっている。
いくらシミュレーションしても、何勝何敗で、勝点や得失点差はいくつで、など全く見えない。サッカーはその不確定要素こそ、醍醐味である。最もジャイアントキリングが多いスポーツだ。
その点、これはとても陳腐な格言だと思うのだが、「初戦が大事」になるのは間違いない。この場合、オランダとどう戦うか。短期決戦だけに、試合内容以上に勝点を奪えたか、は一つのバロメータになるだろう。
過去、4度のW杯で日本代表はラウンド16に勝ち上がっているが、いずれも初戦は負けていない。逆に言えば、3度、グループステージで敗退したW杯では初戦に敗れている。この統計は参考にすべきだろう。
3試合のグループステージ、初戦に負けた場合、やはり勢いが削がれる。
とくに、今回のように「W杯優勝」という大風呂敷を広げていると、期待を大きく裏切ったことで失望と悲壮感が漂う。実際、期待された2006年ドイツW杯、2014年ブラジルW杯と初戦の逆転負けが大きく響き、2戦目は調子を崩したままドローが精いっぱい、3戦目は捨て身で挑むも無残に跳ね返される格好だった。1戦目を落とすと、あとがない、と心理的に追い込まれる。フィジカル的な消耗も甚大だ。
今回、日本は強敵オランダと1戦目で、高い壁である。
オランダは大会直前の強化試合でアルジェリアに敗れているが、サッカーでは相手を圧倒していた。本来は負けにくいチームで、本大会までは帳尻を合わせてくる。ロナウド・クーマン監督は退屈で凡庸な戦術志向の持ち主だが、それだけにフィジカルや闘争心や守備のオーガナイズでチームをまとめ上げる手腕を持っている。
言い換えれば、前回のカタールW杯のドイツ、スペインのように攻撃色の強い相手ではないだけに、隙が見えにくい相手だ。
森保ジャパンとしては引き分けで上々だろう。無論、狙って引き分けるのは極めて難しい。しかしリスクを負って主力で四つに組むよりも、立ち上がり10分は奇襲的な戦いで前線から激しく追い、出鼻を挫くのはどうか。
先発で小川航基、前田大然、伊東純也を使って消耗戦に持ち込みながら、勝負どころで上田綺世、中村敬斗、久保建英、鎌田大地を...負ける可能性もあるが、主力で格下チュニジア戦に挑める余力を残せるのはメリットだ。
2010年南アフリカW杯、スペインは初戦でスイスに負けながら見事に優勝を果たしたが、それは例外的である。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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