現地時間6月10日(日本時間11日)にニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンで行なわれたサンアントニオ・スパーズとニューヨーク・ニックスによる「NBAファイナル2026」の第4戦。第3戦でシリーズ初勝利をあげたのスパーズは、4戦続けて第1クォーターに2桁リードを手にし、前半を終えて27点差(76-49)をつけた。
第3クォーター残り9分40秒、ディアロン・フォックスのジャンパーでスパーズはこの日最大となる29点のリード(81-52)を手にする。通常の試合であれば、ブローアウトと呼べる圧巻の試合展開のはずだった。
ところが、ジェイレン・ブランソンとOG・アヌノビーを中心にニックスに徐々に点差を詰められる。1点リードで迎えた残り1分47秒には、ヴィクター・ウェンバンヤマがフリースローを2本ともミス。
さらに最終盤、1点リードの場面ではフォックスのレイアップがアヌノビーにブロックされると、残り1.2秒、今度はアヌノビーに勝ち越しのティップショットを決められ、106-107で悪夢の逆転負け。スパーズは48分間のうち46分37秒でリードを奪いながら、土壇場で試合をひっくり返され、シリーズ1勝3敗と追い込まれた。
この試合でフォックスは計18得点、5リバウンド、7アシスト、2スティールを残した一方で、フィールドゴール成功率37.5%(6/16)、両チームワーストの4ターンオーバーを犯し、ソーシャルメディアでは批判が殺到。
それでも、ミッチ・ジョンソンHC(ヘッドコーチ)のフォックスに対する信頼は変わらない。12日の会見で39歳の指揮官は、次のように語っていた。
「私はソーシャルメディアに影響されたりはしない。人それぞれ意見を持っている。私は気にしない。私が気にかけているのはこのチームとこの組織、そしてロッカールームにいる人間が、私の気持ちを理解してくれることだ。明日の試合終盤、ディアロン・フォックスはボールを手にしているだろう。そして、彼がこれまで何度もそうしてきたように、必ず結果を出してくれると確信している」
NBAファイナルの歴史において、1勝3敗と王手をかけられた38チームのうち、逆転でシリーズを制したのは2016年のクリーブランド・キャバリアーズのみ。スパーズは第5戦で控えセンターのルーク・コーネットが体調不良で出場がクエスチョナブル(Questionable=不確か)となっており、状況は決して良いとは言えない。
それでも、ウェンバンヤマはここから形勢逆転に持ち込むことができると強く信じている。
「誰もが勝つのは僕たちと思っているし、誰もがそう信じている。ただ、僕たちは目の前の試合に集中し、1試合ずつ戦っていかなければならない。複数の試合へエナジーを費やすのは間違いだと思う。1試合ずつ戦っていくよ」 今年のファイナルは、第1戦こそ10点差がついたが、第2戦、第4戦はいずれも1点差、第3戦も4点差と僅差での決着となった。そして、いずれの試合も第4クォーター残り1分に4点差以内の接戦が展開されている。これは1973年以来初であり、このシリーズが紙一重の戦いであることを示している。
また、スパーズはレギュラーシーズン、そしてプレーオフと成長を遂げており、ウェンバンヤマが逆転優勝を信じる要因もそこにある。
「何よりも、自分たちの能力にある。試合を重ねるごとに、誰も僕たちに勝てないんだと証明してきた。ある意味、自分たち自身に負けてきたんだ。だから自分たちの運命は、自分たちの手中にあるという自信が生まれている」
29点リードから逆転負けを喫した第4戦は、NBA史上で見ても稀有な展開で、スパーズの選手たちが受けたダメージは計り知れない。しかし、このまま終わるわけにはいかないとウェンバンヤマは言う。
「どれほど乗り越えるのが難しかったかは言わないけど、これまでのどの試合よりもずっと辛かった。でももう乗り越えた。今はプレーオフなんだ。ずっと後悔している時間なんてないからね」
なお、ニックスは今年のポストシーズンでシリーズ突破に王手をかけた3戦で無敗。1回戦でアトランタ・ホークスに51点差、カンファレンス・セミファイナルではフィラデルフィア・セブンティシクサーズに30点差、カンファレンス・ファイナルでもキャブズに37点差をつけて圧勝している。
ウェンバンヤマ擁するスパーズにとって、ニックスは限りなくタフな相手。第4戦の敗戦から気持ちを切り替え、シリーズの流れを変えることができるか注目したい。
文●秋山裕之(フリーライター)
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