
俳優の山田杏奈が6月13日、都内で行われた映画「NEW GROUP」公開記念舞台あいさつに、青木柚、ピエール瀧、下津優太監督と共に登壇した。
■組体操という「集団行動」における人間の行動心理をコミカルに描いた作品
映画「みなに幸あれ」を手がけた下津監督の最新作で、組体操という「集団行動」における人間の行動心理の根底を、コミカルにそしてシリアスに炙り出した本作。
家族に問題を抱える、引っ込み思案な普通の高校生の主人公・愛を演じた山田は「撮影中も結構時間がタイトだったり、やらなければいけない要素がたくさんあったりして、振り返ってみるとかなり過酷な撮影期間だったという印象が強いです」と振り返り、「撮影中に真剣に取り組んでいたシーンが、誰かにとってはすごく笑えるポイントだったりするようで、昨日公開されて『面白かった』という声を頂き、とてもうれしかったです」と笑顔を見せた。
愛のクラスメイトで、海外帰りで日本の学校の協調性を重んじる集団行動になじめない転校生・優を演じている青木は「公開する前から、ビジュアルや予告編からインパクトがある映画で『楽しみ』という声を頂いていたのですが、友人から『組体操の映画、公開されたね』と言ってもらい、公開されたことを肌で感じています」と語った。
不敵な笑みを浮かべて集団を導く校長を演じたピエールは「撮影の時から『この映画はどんな人間が見るのだろう?』と思っていましたが」と発言し、客席を見渡して「なるほど、こういう人たちなんだな」というと会場に笑い声が響いた。そして、「本当に奇妙な映画ではありますが、SNSなどを見ると『なるほど』と分かった人もいれば『全然分かんねえ!』という人もいて。そうやって二分するのは、この映画の良さなんだなと思いました」と映画の魅力をアピールした。

■山田杏奈「台本からは全く想像できなかった」
登壇者が口々に「奇妙な映画」という中、下津監督も「こんな天気のいい土曜日に奇妙な映画を見に来てくださってありがとうございます」とあいさつして会場を沸かせる。また、「組体操に襲われる」という奇抜な設定に、山田は出来上がった作品を見て「私も台本からは全く想像できなかった」と驚いたことを明かし、青木も「僕も動いているものが近づいてくるという恐ろしさに慄いていたのですが、完成した映像を見ると、すごく芸術的で。改めてすごい作品だなと思いました」と感想を伝えた。
ダイナミックな人間の身体表現が恐怖に変わる本作。ピエールは「騎馬戦のシーンがありますが、時間に追われてとても大変だった。撮影の時に『やべぇ、日が暮れちゃう』と言いながら、みんなで日の当たっている場所に移動することもあって。その中でよく撮り切ったなと感心しました」とチームワークの良さに脱帽。
下津監督は、物語の後半でこの映画のテーマをメッセージとして伝える役割を果たしたピエールに「説得力が本当にすごくて、映画がすごく引き締まりました」と感謝の言葉を伝えると、ピエールは「僕は台本に書いてあることを演じていただけなんですけれどね」と恐縮しつつ、「でも『これが本当の狂気なのか』という感じで見ていました」と振り返り、モニター越しにも伝わる異様な存在感を絶賛した。


■山田杏奈、中学の校則に違和感「当時はすごく短くしたくてモヤモヤしていました」
ピエールと対峙するシーンについて、山田は「台本だけ見ると校長先生もかなり奇天烈な役じゃないですか。あれを体現される瀧さんが本当にすごいと現場で感じていました」と圧倒的な存在感があったと話す。
青木も「瀧さんとのシーンが終わって、瀧さんが先にクランクアップされたのですが、僕らがいる控室にいらっしゃって『よく分かんないけど、頑張ってね!』と言って帰られたのがすごく印象的でした」と当時を振り返り、「僕らも同じ気持ちで現場を戦ってきたので『そうだよね、頑張るしかないな』という気持ちで残りを駆け抜けられました。こんなにはっきりと『よく分かんない現場』と言ってくれる大人がいるんだと、すごく救われました」と回顧。
下津監督は「いろいろな本を読んでいた時に、社会学の本に“社会はさまざまな集団でできている”と書いてあったんです。集団って見方を変えると怖いなと思ったんです。ゾンビみたいな自由な集団も怖いけど、規則正しい集団も怖いなと。規則正しい集団って何だろうと思った時に『集団行動を極めると人間ピラミッドだ』という発想に至ったんです」と本作の発想の種を明かした。
そんな「集団行動」に対して違和感を覚えた瞬間を聞かれた山田は「中学校の時、スカートの長さを短くしちゃいけないという校則があったんです。ずっと『この数センチで何が変わるんだ』と思っていました。今振り返るとそれなりの理由があるんだと思うんですけど、当時はすごく短くしたくてモヤモヤしていました」と回答すると、青木は「僕は出席番号です。僕はほぼ出席番号が一番で。何をするのも最初は出席番号順だったので、それが違和感でした」と答えた。
ピエールも「僕は野球部だったので、同調圧力の塊でした」と笑うと「理不尽なルールの温床でしたね。『水を飲むな』から始まり『1年生はノーマルなスパイクじゃなければだめだ』とか、今思うと違和感だらけですね」と語った。

■下津監督「ハマった方は声を大にして、いろいろと広げていただければ」
イベントには、劇中で披露した組体操に特別協力した日本体育大学の体操部員18人も登壇。整列された「集団」で登場すると、肩車→サボテン→扇→やぐら→塀と組体操を披露。黙々と組体操を行う中、ピエールがDJさながらに実況を繰り広げ、会場は大盛り上がり。
下津監督は「日体大さんに何度か通わせていただきました。特に廊下バトルのシーンは『なんか気持ち悪い動きないですか?』と相談して、一緒に作り上げて行ったんです」と感謝すると、山田も「日体大の皆さんも同じく過酷なスケジュールの中で、すごく大変な中、頑張ってくださって、本当に感謝してもしきれないです。エンドロールの一番上に日体大の皆さんがいらっしゃるなという感じです」と、彼らの存在なくして映画が完成しなかったことをしみじみと語った。
最後は、山田が「肯定的な意味で、これほどまでに好きな人と嫌いな人が分かれる映画もないだろうなと思います。でも、それがこの映画の本当の良さだと思います」と胸を張ると、青木も「友達や知人と話したら何かしら盛り上がる作品だと思います。そういう輪を広げていただけたらうれしい」と伝え、ピエールも「さまざまな感想がおありかと思います。しかし、一番大事なのは『これを劇場でやっている』ということのような気がします。それがこの映画の大事なところだと思います」と個性的にアピール。
そして、下津監督が「少し変わった映画なので、ハマった人、ハマらなかった方、どちらもいらっしゃると思います。ぜひハマった方は声を大にして、いろいろと広げていただければなと思います」と客席に呼びかけて舞台あいさつを締めくくった。


