
日本から新種のオオサンショウウオ化石が報告されました。
京都大学総合博物館のの研究チームはこのほど、大分県宇佐市の安心院(あじむ)地域にある約350万年前の地層から見つかっていたオオサンショウウオ科の化石を詳しく分析。
その結果、この化石は既知の属や種とは異なる新属新種であることが判明。
新たに「リムノスポンディルス・アジムエンシス」、和名「アジムオオサンショウウオ」と命名されました。
研究成果は2026年6月3日付で国際学術誌『PeerJ』に掲載されています。
目次
- 全長1.5メートル級に成長した可能性
- 現代のオオサンショウウオと生息環境が違っていた
全長1.5メートル級に成長した可能性
オオサンショウウオ科は、現生の両生類の中でも最大級の体をもつグループです。
現在は、日本や中国に分布するオオサンショウウオ属、そして北米にすむヘルベンダー属が知られています。
ところが、この仲間の進化史には大きな空白がありました。
特にアジアでは、現生種につながる地域でありながら、漸新世(ぜんしんせい)以降〜現代までの化石記録が少なく、過去にどのような種類がいたのかはよく分かっていなかったのです。
今回調べられた化石は、1995年から1997年にかけて、大分県宇佐市の安心院(あじむ)地域から見つかった3点の椎骨です。
この地層は約350万年前のもので、当時の湖沼環境で形成されたと考えられています。
【発見されている新種の化石の画像がこちら】
これらの化石は、以前にもオオサンショウウオ科のものとして報告されていました。
しかし当時は比較できる骨格資料や研究が限られており、正確にどの部位の骨なのか、またどの分類群に属するのかまでは十分に判断できませんでした。
そこでチームは、現生のオオサンショウウオ科の全身骨格や、既知の化石種と比較しながら、3点の椎骨を改めて詳しく分析。
その結果、この化石個体は既知のオオサンショウウオとは異なる、新種新属のオオサンショウウオであることが特定されたのです。
チームは、新種の学名を「リムノスポンディルス・アジムエンシス(Limnospondylus ajimuensis)」、和名は「アジムオオサンショウウオ」と命名。
チームはさらに、椎骨の大きさから体のサイズも推定。
現生のオオサンショウウオ科における椎骨サイズと全長の関係をもとにすると、アジムオオサンショウウオは全長およそ1.0〜1.15メートルに達していた可能性があります。
また、骨の表面に残された成長線から、少なくとも17〜18歳前後の個体だった可能性が示されています。
これは、かなり大きく成長した個体だったと考えてよいでしょう。
現代のオオサンショウウオと生息環境が違っていた
興味深いのは、その生息環境です。
化石が見つかった津房川層は、約350万年前の湖沼環境でできた地層です。
この地域からは、ゾウやワニなど、現在の日本にはいない大型動物の化石も見つかっています。
当時の九州北部は、現在よりも温暖で湿潤な環境だったと考えられており、湖や湿地、森林が広がる豊かな淡水環境が存在していた可能性があります。
そのためアジムオオサンショウウオも、現在の日本産オオサンショウウオのように主に河川にすむというより、湖沼や湿地に適応した大型両生類だった可能性があります。
これは「オオサンショウウオ科は昔から今とほとんど同じ姿・暮らしをしていた」という単純な見方に再考を迫る発見です。
【アジムオオサンショウウオの復元イメージがこちら】
もちろん、今回の研究では系統解析は行われていません。
そのため、アジムオオサンショウウオを現生オオサンショウウオの直接の祖先とみなすことはできません。
それでも、この発見は重要です。
なぜなら、オオサンショウウオ科はこれまで化石種と現生種を含めても限られた属しか知られておらず、アジアの化石記録にも大きな空白があったからです。
今回の新属新種は、その空白を埋めるだけでなく、過去の日本に、現在とは異なる生態をもつ巨大サンショウウオがいた可能性を示しました。
現在、安心院(あじむ)地域には現生のオオサンショウウオ属も生息しています。
同じ地域から、約350万年前の別属の化石と、現生のオオサンショウウオが確認されることは、この場所がオオサンショウウオ科の進化史を考えるうえで特別な意味をもつことを示しています。
オオサンショウウオは「変わらない生き物」ではなく、長い時間の中で多様な姿と暮らし方を試してきた一族だったのかもしれません。
参考文献
日本産オオサンショウウオ化石を新属新種として報告―アジアにおける本グループの多様性の高さを証明―
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-06-04
元論文
A new genus of giant salamander (Urodela, Cryptobranchidae) from the Pliocene of Japan
https://doi.org/10.7717/peerj.21362
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

