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ナルシストやサイコパス傾向が高い人の脳に“共通する特徴”を発見

ナルシストやサイコパス傾向が高い人の脳に“共通する特徴”を発見

Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部

「あの人は自分の話ばかりする」「人の気持ちがわからない」――日常では、そんな相手を「ナルシストっぽい」「サイコパスっぽい」と言ったりすることがあります。

心理学では、実際これらは共通した反社会的な傾向を含む性格特性として研究されており、ナルシシズムは自分を特別視しやすい傾向、マキャベリズムは目的のために他人を操作しようとする傾向、サイコパシーは冷淡さや衝動性、罪悪感の薄さなどに関わる傾向があるとされています。

そして、これら3つの性格特性はいずれも「他者への冷淡さ」や「自分の利益・評価を優先しやすい」といった共通の反社会的な傾向を含むため、合わせて「ダークトライアド(Dark Triad:暗い性格特性)」と呼ばれます。

ただ、この3つはどこまで共通するのか、また脳構造の面でも共通点と違いが見られるのかは、まだ十分に分かっていません。

そこでドイツ・ハイデルベルク大学(University of Heidelberg)医学部・大学病院のEmilia L. Mielke氏らの研究チームは、この疑問を脳構造の側から調べました。

その結果、ダークトライアド傾向が高い男性では、低い男性と比べて、いくつかの脳領域で灰白質の体積に違いが見られたのです。これは私たちが性格として見ているふるまいの一部は、脳の構造とも関係している可能性を示しています。

研究の詳細は、2026年4月6日付けで科学雑誌『Journal of Neural Transmission』に掲載されています。

目次

  • 「暗い性格特性」は脳構造にも表れるのか?
  • 脳から見た3つの暗い性格特性の共通点と違い

「暗い性格特性」は脳構造にも表れるのか?

これまでダークトライアドの研究では、質問紙によって性格傾向を測る方法が多く用いられてきました。

つまり、簡単に言うならアンケートのようなものを用いてどんな回答をするかを見て、性格傾向を測っていたのです。

ただ、この方法で分かるのは、主に「回答パターンとしての共通点と違い」です。

3つの性格傾向が脳構造の面でも似た特徴を持つのか、それともそれぞれ異なる関連を示すのかについては、まだ十分なデータがありませんでした。

そこで研究チームは、MRIで脳を調べることで、ダークトライアドの3つの性格傾向が、脳構造の面で共通点があるのかを調査しました。

この研究では、まず264人に短縮版ダークトライアド尺度(Short Dark Triad:SD3)という質問紙に回答してもらいました。

その後、ダークトライアド傾向が高い男性24人と、低い男性27人を選び、MRI(magnetic resonance imaging)で脳を撮影しました。

MRIとは、磁場を使って体の内部を画像化する装置です。

なお今回の研究対象は、精神疾患や人格障害の診断に該当しない健康な男性です。そのため、これは犯罪者や人格障害患者を調べた研究ではありません。

研究チームが調べたのは、脳の灰白質(gray matter)の体積です。灰白質とは、神経細胞の本体が多く集まる部分で、脳の情報処理と関わります。

解析の結果、ダークトライアド傾向が高い男性では、低い男性と比べて、右の中心前回から背外側前頭領域に広がる部分と、小脳の一部で、灰白質の体積が小さいことが報告されました。

中心前回は主に体の動きに関わる領域ですが、他人の動きを見て理解することにも関係すると考えられています。

背外側前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex)は、考えを整理したり、感情を調整しながら判断したりする働きと関わる領域です。

また小脳は運動だけでなく、近年では認知や感情の調整との関係も研究されています。

ダークトライアド傾向が高い人が、低い人と比べ共通してこれらの領域で灰白質の体積が小さかったという発見は、彼らには、脳構造の面でも社会的な判断や感情処理に共通点が見られることを示しています。

脳から見た3つの暗い性格特性の共通点と違い

研究チームはさらに、ダークトライアド傾向が高い群の中で、3つの性格傾向を別々に解析しました。その結果、それぞれに脳構造で異なる特徴が見られることもわかりました。

マキャベリズムのスコアが高い人では、左の背外側前頭前野の灰白質体積が小さい傾向が示されました。

背外側前頭前野は、道徳的な判断や、感情に流されず、状況を整理しながら判断する働きと関わる領域とされています。

マキャベリズムは、目的のために他人を操作しようとする傾向があると言われます。そのため、この領域の灰白質体積が小さいことが、他人との関係を判断する場面で、道徳的な配慮や感情的な判断をしづらい傾向と関連している可能性があります。

ナルシシズムのスコアが高い人では、前帯状皮質、内側眼窩前頭皮質、島皮質、上側頭回などで、灰白質体積が小さい傾向が示されました。

これらは、感情の処理、自分への評価、体の内側の感覚、他人の表情や声の理解などと関わる領域とされています。

ナルシシズムは、自分を特別視しやすく、他人への共感が弱い傾向があると言われます。これらの領域の灰白質体積が小さいことは、そのような自分をどう評価するか、他人の感情をどう受け取るかについて、他の人たちとは異なる処理を脳が行っている可能性を示しています。

サイコパシーのスコアが高い人では、前帯状皮質と左の背外側前頭領域で、灰白質体積が小さい傾向が示されました。

前帯状皮質は感情や葛藤の処理に関わり、背外側前頭領域は道徳的な判断や、感情に流されずに行動を選ぶ働きと関わる領域とされています。

サイコパシーは、冷淡さや衝動性、罪悪感の薄さなどが特徴の性格特性です。そのため、これらの領域の灰白質体積が小さいことは、他人の苦痛への反応や、自分の行動にブレーキをかける能力の低さと関連している可能性があります。

こうした結果から、ダークトライアドには共通する脳構造上の特徴がある一方で、ナルシシズム、マキャベリズム、サイコパシーにはそれぞれに脳に異なる特徴があることも示されました。

ただし、この研究だけで「脳の構造が性格を作った」とまでは言えません。

今回の研究は、性格傾向と脳構造に関連性があることは示されていますが、これは因果関係を示しているわけではありません。

また、対象者は高い群24人、低い群27人と小規模で、参加者は男性のみでした。

そのため、女性や他の年齢層、異なる文化背景の人にも同じ結果が当てはまるかは、今後の研究を待つ必要があります。

さらに、灰白質の体積差が実際の行動や共感の働きにどうつながるかも、構造MRIだけでは判断できません。だから今回の研究から、MRI画像だけで個人を「ナルシスト」や「サイコパス」と判断できるようになるということにはなりません。

今後は、より大きなサンプルを用いた研究や、脳活動を調べるfMRI、実際の対人判断や共感性を測る行動実験との組み合わせが重要になります。

とはいえ、私たちが性格として見ているふるまいの一部が、脳の構造とも関係している可能性が今回の研究からは示されています。

こうした研究がもっと進めば、話さなくても相手がどんな人かわかる時代も来るのかも知れません。

元論文

Common and distinct morphometric correlates of the Dark Triad traits: machiavellianism, narcissism and psychopathy in a healthy male sample
https://link.springer.com/article/10.1007/s00702-026-03147-7

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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