![[本田泰人の眼]オランダ戦のMVPを挙げるなら、文句なしで伊東純也。対峙する相手にとって悪夢でしかない【W杯】](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/185/2026/6/1781501634002_ghim2zgtb4v.jpg?maxwidth=800)
[本田泰人の眼]オランダ戦のMVPを挙げるなら、文句なしで伊東純也。対峙する相手にとって悪夢でしかない【W杯】
【W杯GS第1節】日本 2-2 オランダ/6月14日/ダラス・スタジアム
価値のある、本当に価値のある勝点1だ。
常に先行される苦しい展開のなか、優勝候補の一角であるオランダを相手に、二度も追いついてみせた。ここで「黒星」を喫するのか、それとも「引き分け」で終えるかによって、これからのグループステージの戦い方は大きく変わってくる。
逆境のなか、最後まで粘り強く戦って、貴重な勝点をもぎ取った選手たちの奮闘を称えたい。
前半の戦い方に関しては、前線からのハイプレスではなく、完全にブロックを作って、まずは守備から入る選択をした。馬力のある前田大然をスタメンに置いたから、立ち上がりから積極的にプレスに行くのかなと思ったら、意外にもしっかりブロックを敷いてきた。結果的にそれが功を奏したとは思う。
ただ、ちょっと気になったのは、前半の立ち上がり早々にコディ・ガクポのカットインから中央のドニエル・マレンにクサビを入れられて、1人かわされてシュートを打たれた場面。オランダの最前線に入ったマレンのキレは厄介で、あれは鈴木彩艶のビッグセーブがなかったら、いきなり失点していてもおかしくなかった。ヒヤッとしたよね。
それ以外では、谷口彰悟、渡辺剛、伊藤洋輝の3バックを含めて、組織として粘り強く守れていた。34分に相手のコーナーキックから、再びマレンにヘディングシュートを打たれた場面も、鈴木のセーブと谷口のクリアでなんとか凌ぎ切った。
でも、後半のスタートからは少しポジションのズレが出始めて、相手に間、間でパスを繋がれるシーンが徐々に増えてきてしまった。ちょっと守備の寄せが甘くなる時間帯があった。慌てて閉めたけど、また嫌なところにパスを入れられてピンチを招く場面もあった。
1失点目では、左サイドからライアン・フラーフェンベルフに精度の高いクロスを上げられて、フィルジル・ファン・ダイクに完璧なヘディングシュートを叩き込まれてしまった。
ここは完全に渡辺とのミスマッチを突かれた形になったね。いくら渡辺はヘディングが強いと言っても、あの高さと強さを持つファン・ダイクを1人で抑え込むのはやはり厳しい。それ以外の局面はよく守れていただけに、こうした一瞬の「個のミスマッチ」からファン・ダイクに決められたのは、さすがオランダと言わざるを得ない。
2失点目は、クリセンシオ・サマービルのカットインからのシュートが、本当に良いコースに決まってしまった。ポストに当たるくらいのギリギリのコース。相手のシュートの精度を褒めるべき部分もあるけれど、その前の局面で、前半にできていた「間を締める対応」が少しズレてしまったのは悔やまれる点だ。
一方で、日本の反撃は見事だった。57分の中村敬斗の同点弾。オランダのDFミッキー・ファン・デ・フェンがラインを上げるのを一瞬怠ったところを突いた形だった。もちろん、相手のミスや隙に助けられた部分もあるけれど、そこを逃さずにきっちり突いた中村のポジショニングと決定力をまずは褒めるべきだよ。
そして、この試合のMVPを挙げるなら、文句なしで後半の途中から入った伊東純也だ。彼の投入によって、オランダに傾きかけていた流れが完全に一変した。
あの圧倒的なスピードと縦への推進力、そして仕換けるテンポには、ファン・ダイクらオランダの守備陣も明らかに後手に回り、苦労させられていたからね。
相手が疲れてきた後半から伊東が出てくるのは、戦術的にもすごく効果的だし、対峙する相手にとっては悪夢でしかない。間違いなく、オランダを最も慌てさせた日本の最大の“武器”だった。
オランダのロナルド・クーマン監督は終盤、リードを守り切ろうと守備的な選手交代に踏み切った。でも、結果的にこれが完全に裏目に出て自滅する形になったね。
守りを固めたはずのオランダが、あそこまで自陣に押し込まれて対応に窮してバタついたのは、明らかに引き気味になってしまった戦略的なミスだ。「攻めの姿勢」を貫いた森保一監督のベンチワークとは対照的だった。
この試合、二度目の同点弾が生まれたのは88分。コーナーキックから小川航基がヘディングシュート。これが鎌田大地の頭をかすめてネットを揺らした。
オランダ戦を振り返って改めて痛感したのは、日本の「総合力」だ。ピッチ内外の全員がハードワークし、組織の歯車を噛み合わせる。その成果を表現できていたと思う。
その総合力を最大化させられるかどうか、僕たちの悲願である「ベスト8以上」へ進めるかどうかの鍵は、まさに森保監督の腕にかかっている。
プラン通りに試合をコントロールして、価値のある勝点をもぎ取った。こういう大きな大会で最後にモノを言うのは、やっぱり「チーム力」であり「組織としてのまとまり」なんだ。
オランダ戦の3日前に、遠藤航の離脱と代表引退という、チームの根幹が揺らぐような大きなニュースがあった。正直、外から見ていて「大丈夫か?」と心配したファンも多かったと思う。
でも、ピッチ上の選手たちは冷静だった。新キャプテンに指名された板倉滉を中心に、むしろこれまで以上の強い一体感を持って、オランダ戦に集中して入れていたと思う。この大変な状況で、チームをさらに引き締めるようなエネルギーを発していたはずの板倉の牽引力は、本当に見事だったと思う。
前回大会のアルゼンチンのように、「メッシを中心にまとまる」とか、「誰々のために世界一を獲るんだ」という強い個の求心力で勝つチームがあるけど、今の日本代表はちょっと違う。
誰か一人のカリスマに頼るのではなく、ピッチにいる全員、ベンチにいる全員が「一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」という精神で戦えている。
攻撃センスに秀でる堂安律と久保建英が、献身的なディフェンスでガクポに自由にプレーさせない。そういったプレーが随所に見られたのは大きかった。
キャプテンが離脱してもビクともしない。むしろ絆が深まるようなメンタリティを今の日本が持てていることを証明できたのが、このオランダ戦の勝点1以上に大きな収穫だったんじゃないかな。
次のチュニジア戦も簡単な試合にはならないだろうけど、このオランダ戦で見せた粘り強さと“ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン”の絆をベースに、次こそ勝点3を掴み取ってほしいね。
▼オランダ戦の採点
スタメン)
GK 鈴木彩艶/6.5
DF 伊藤洋輝/6.0
DF 谷口彰悟/6.0
DF 渡辺 剛/6.0
MF 佐野海舟/6.5
MF 鎌田大地/6.5
MF 中村敬斗/7.0
MF 前田大然/6.0
MF 堂安 律/6.0
MF 久保建英/6.0
FW 上田綺世/6.0
途中出場)
DF 冨安健洋/6.0
DF 菅原由勢/6.0
MF 伊東純也/7.0
FW 小川航基/6.5
FW 塩貝健人/-
監督)
森保 一/7.0
【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。
【美女サポ画像】北中米W杯を華やかに彩る各国ファンを一挙公開!
【画像】メッシ、エムバペ、ネイマールも! 世界のスター選手はどんなポーズ? FIFA公式ポートレートの厳選ショットを一挙公開!
【記事】「今だったらもっと化け物に」──森保ジャパンでも共存可能? 中田英寿という“終わらない夢”
