
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の、末永裕樹・馬上鷹将による落語漫画を原作にしたアニメ「あかね噺」(毎週土曜夜11:30-深夜0:00ほか、テレビ朝日系ほか/ABEMA・Netflix・ディズニープラス・FOD・Huluほかにて配信)。6月7日放送の第十席「寿限無」では桜咲朱音(CV.永瀬アンナ)が可楽杯で二度目の「寿限無」を披露。登場人物の心情に寄り添う落語に聴衆は聴き入り、視聴者からも大きな反響が集まった。(以降、ネタバレが含まれます)
■一生から最高の評価を引き出した朱音の心情に寄り添う「寿限無」
練磨家からし(CV.江口拓也)の現代風改作落語、高良木ひかる(CV.高橋李依)の劇場型落語に会場が沸いたあとの登場となった朱音。緩いテンポで淡々と「寿限無」の噺をつむぐ朱音の落語は最初こそ勝負を投げたのかと思われたが、次第に観客は耳を澄まし、聴き入りだす。前の二人とは真逆の、噺に浸らせる凪のような高座だった。
朱音は役を演じて表現するのではなく、子を想う親の心情に寄り添い、噺を染み込むように聴かせることで、登場人物とともに噺そのものを情景として浮かび上がらせる。予選で行った早口の技術でもなく、言い立てのキレでもない。これが、朱音が考え辿り着いた「寿限無」のキモだったのだ。

アニメーション演出もこれまでと違って、第三者による噺の解説は入らない。やがて演者(朱音)の姿も消えていき、これが今観客が見ている世界だというように、画面は「寿限無」の光景が広がる。阿良川一剣(CV.平田広明)は朱音のこの落語から、彼女が阿良川志ぐま(CV.てらそままさき)に師事しているのだと悟る。そんな朱音の落語には、「月刊落語」の記者・樫尾公久(CV.岩崎諒太)も評価を忘れ、普通に聴き入ってしまっていた。
朱音の高座が終わり、コメントを求められた審査員長の阿良川一生(CV.大塚明夫)は、「お前…ここはお前が来ていい場所じゃないってわかってるよな」と、怒りすらこもった声で問いかける。からしは歯軋りをするように、ひかるはただ見つめて、今見た「寿限無」の衝撃を受け止める。そして、分かる人には分かる、それは「素人の大会にプロが出て荒らすな」という、いわば逆説的にプラスの評価であったと言えるだろう。

■一生は朱音の問いにどう答える? 次回、6年前の事の真相に
役の心情に寄り添う落語を披露した朱音は、聴く人の人情にも寄り添っていた。現代ではサゲはたんこぶの話になっている「寿限無」だが、もともとのサゲは寿限無が川で溺れ死んでしまうというものだ。物語の流れから、朱音はここでその古典のサゲをやるのかと思えたが、緊迫した最後のとき、寿限無はひょこっと顔を現す。きっと、子を想う親の心と無事を願う観客に寄り添ったのだろう。朱音がアレンジした優しい「寿限無」のサゲだった。
この朱音の「寿限無」をもって、今年の可楽杯本選は終了。優勝は、演者の芸ではなく、落語の芸を見せた朱音に決まった。そして、朱音は一生との対談に臨む。
一剣が気付いたということは、一生も朱音が志ぐまの教えを受けていると気づいているはず。6年前、阿良川志ん太を破門にしたのはなぜなのか? 次回、朱音の問いに一生がどう答えるのか、謎だった事の真相に注目が集まるところだ。
放送後のSNSには、「心情に寄り添う朱音の優しい表情が印象的」「一生の落語を聴ける場面はあるのかな、あっという間に10話まで終わってしまった」「たまんねーな10話、朱音ちゃんの実力は一生も認めざるを得なかった!」「あかねによる洗い直しの語り、うまい。巧いではなく旨い、味があった」など様々な感想が寄せられていた。
◆文=鈴木康道


