
金田喜稔がオランダ戦を斬る!「伊東純也の存在は欠かせない。この試合で得た勝点1は非常に大きな意味を持つ」【W杯】
[北中米ワールドカップ]日本 2-2 オランダ/6月14日/ダラス・スタジアム
日本代表は、北中米ワールドカップのグループステージ(F組)第1節で、オランダ代表とダラス・スタジアムで対戦。50分に失点し、57分に中村敬斗のゴールで試合を振り出しに戻すも、64分に勝ち越し弾を許す。それでも88分に鎌田大地が同点弾を挙げて、2-2で引き分けた。
追いついて、本当に良かった。負けと引き分けでは、全然違うからね。特に今日のゲーム内容を考えれば、この試合で得た勝点1は非常に大きな意味を持つと思う。
先制して追いつかれる引き分けと、リードをされて追いつく引き分けでは、同じ勝点1でも大きな差がある。前者は『(オランダ相手に)勝点1を取れたから良しとしよう』の気持ちになるが、後者は『よし。追いつけた!』と勝利に等しいほどの勢いがつく。まさに今日の日本は、後者だった。
オランダ戦は、日本の守備が非常によく機能していた。効果を発揮できたポイントは2つあった。
1つ目は、オランダの攻撃の起点、フレンキー・デ・ヨングへの対応だ。1トップの上田綺世は、フィルジル・ファン・ダイクらが最終ラインでボールを回している時、常にデ・ヨングへのパスコースを切りながらプレッシャーをかけ続けていた。さらに、前田大然も上田と連動してプレスをかけて、相手にビルドアップの起点を作らせなかった。これは相手の攻め手を封じるうえで非常に大きかった。
2つ目は、相手のキーマンの1人である左サイドのコディ・ガクポに対するディフェンスだ。まずは堂安律がしっかりと距離を詰め、久保建英が中盤から帰陣して内側のコースを消す。それによって、縦に突破されてもセンターバックの渡辺剛がカバーに入れる態勢を整え、ガクポに決定的なクロスをほとんど上げさせなかった。
また、2つ目のポイントに挙げた守備が機能するきっかけとなったプレーがあった。それは、試合開始早々の3分のシーンだ。
左サイドのガクポからの鋭いパスをボックス内で受けたドニエル・マレンに、強烈なシュートを打たれた。しかし、これをGK鈴木彩艶が横っ飛びでスーパーセーブ。ピンチを凌いだ。
試合開始直後に迎えたピンチで、日本の選手たちは『あの鋭いパスを入れられたら、やられる。もっとシビアに距離を詰めていかないといけない』と肌で感じたはずだ。その一瞬の気づきが、その後の守備に繋がったと思う。
日本の失点シーンを振り返ると、1失点目は高さの部分で最も警戒していたファン・ダイクに、FKの流れからヘディングで決められてしまった。選手たちのショックは大きかったはずだ。ただ、2失点目のクリセンシオ・サマービルのゴールは仕方ないね。あのコントロールシュートは彩艶でも流石に止められないよ。
得点を決めた選手では、特に1点目を挙げた中村は素晴らしかったと思う。彼が決めたカットインからのシュートはもちろんだが、僕が最も評価したいのは守備の部分だ。中村は90分間、集中力を切らさずに攻撃だけでなく、守備にも奔走していた。常に首を振って左右や背後を確認し、サボることなく走り続けた。あの献身的な姿勢があったからこそ、チーム全体のバランスが保たれていた。
そして、中村のハードワークを引き出したのは前田の存在だと僕は思う。前田の前線からのアグレッシブなプレスがあったからこそ、中村は自分の対応するべき相手に集中できた。森保一監督が前田を先発で起用した狙いは、まさにここにあったと思うよ。
オランダ戦での同点劇を語るうえで、66分に前田に代わって途中出場した伊東純也の存在は欠かせない。伊東がピッチに入ってから、日本の攻撃のリズムは明らかに変わった。右サイドからの効果的なクロスやプレースキックでチャンスを作り出し、献身的なプレスバックも含めて、彼がこのゲームを引き分けに持ち込んだと言っても過言ではない。森保監督の采配のタイミング、伊東が与えられたポジション、すべてが理にかなっていた。
次の相手はチュニジアだね。アフリカ予選を無失点で勝ち上がってきた彼らの堅守は脅威だ。しかし、もしチュニジアが前に出てこないといけない状況になれば、日本のカウンターが活きる展開が期待できる。その状況とは、チュニジアがスウェーデンに敗れた場合だ(チュニジアは初戦でスウェーデンに1-5で敗戦)。連敗できない相手が前がかりにくれば、背後に広大なエリアが生まれる。その場合、久保や伊東、中村らがカウンターから空いたスペースを突くことができる。
そうなれば、鎌田のゲームメイク、ゴールキーパーの彩艶やセンターバックの伊藤洋輝からの正確なロングフィード一本で局面を打開できる可能性も高まる。さらに、今日の試合で特に守備を頑張った堂安や中村らが、より攻撃的なプレーを見せるチャンスが増えるはずだ。
もちろん、チュニジアがどういった戦術をとるかは分からない。相手が引いて守る戦い方を採用すれば、守備を崩すのは難しい。しかし、相手が攻撃的に前線から仕掛けてきた場合は、日本の良さが引き出されるはずだ。
上田のゴールにも期待したい。とにかく彼が点を取れば、チームはさらに勢いに乗るはず。上田が思い切って得点を狙いに行く姿を、チュニジア戦では期待したい。今日の価値ある引き分けを、次の勝利へ繋げて欲しいと心から願っているよ。
【著者プロフィール】金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、68歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜FM)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。
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