北中米ワールドカップは、開幕直後から得点王争いが熱を帯びている。6月17日、アルゼンチン代表のリオネル・メッシがグループステージ初戦、アルジェリア戦でハットトリックを達成。38歳にしてなお、世界最高峰の舞台で試合を決め切る力を見せつけた。6大会連続出場という途方もないキャリアの集大成に臨むレジェンドは、いきなり今大会のゴールデンブーツ候補の先頭集団に躍り出たが、ライバルたちも着実にその背中を追いかけている。
48カ国大会でゴール量産の予感 メッシ、エムバペ、ハーランドが好発進
初戦でいきなりハットトリックを達成したメッシ。
今回の得点王争いは「メッシの独壇場」と単純に言い切れるほど甘くない。フランス代表のキリアン・エムバペはセネガル戦で2得点。前回大会で得点王に輝いた爆発力は健在で、スピード、決定力、PKを含めた得点パターンの多さを考えれば、連続受賞の可能性は十分にある。
ノルウェー代表のアーリング・ハーランドも、イラク戦でワールドカップ初出場とは思えない落ち着きを見せて2ゴール。大会前から「初の大舞台でどこまで量産できるか」が注目されていた怪物ストライカーは、初戦でその問いに早くも答えを出した。
今大会の得点王争いが例年以上に読みにくい理由は、大会形式の変化にもある。出場国は32から48へ拡大され、総試合数も大幅に増えた。強豪国が順当に勝ち上がれば、得点機会は過去大会より多くなる。一方で、グループステージでは戦力差のあるカードも生まれやすく、初戦から複数得点を記録する選手が続出している。従来なら6~8点前後で争われることの多かった得点王ラインが、今大会ではさらに上振れする可能性もある。
最有力候補を挙げるなら、まずはエムバペだ。年齢的にもピークにあり、フランスは優勝候補の一角。チームが長く勝ち残るほど出場試合数が増え、彼の得点チャンスも広がる。左サイドからの突破、中央でのフィニッシュ、カウンターでの独走、セットプレー後のこぼれ球への反応と、得点の入口が多い点も強みだ。相手がフランスを警戒して守備を固めても、一瞬で試合を壊せる個の力がある。
ハーランドは、純粋な「ゴールを奪う能力」では大会屈指だ。ノルウェーがどこまで勝ち進めるかは未知数だが、前線に彼がいるだけで試合の設計は明確になる。クロス、スルーパス、セットプレー、相手DFのミス。
どんな形でもペナルティーエリア内で一度ボールが入れば、得点に変える確率は極めて高い。グループIにはフランスもいるため、直接対決でエムバペとハーランドが同じピッチに立つ構図は、得点王争いのグループステージ最大の山場になり得る。
メッシは、年齢を考えれば大会を通じたフル稼働には慎重な見方も必要だ。それでも初戦のハットトリックが示したのは、彼がまだ「試合の文脈」を支配できる選手だという事実である。スプリントの回数では若いスターに及ばなくても、どこに立ち、いつ加速し、どの角度で打つべきかを誰よりも理解している。
アルゼンチンは総合力が高く、勝ち上がりが見込めるチーム。出場時間を管理しながら決定的な場面でゴールを重ねられれば、メッシが最後のワールドカップで得点王をさらう筋書きも十分に現実味を帯びる。
そのほかの候補では、イングランド代表のハリー・ケイン、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド、ブラジル代表の前線陣、スペインやドイツの新鋭アタッカーも外せない。得点王は単なる個人能力だけで決まらない。PKのキッカーを任されているか、チームが上位進出できるか、初戦から複数得点で波に乗れるか。こうした条件が重なった選手が一気に抜け出す。
では、日本代表から得点王を狙える選手はいるのか。
得点ランキングに日本代表から食い込む条件
現実的には、世界的ストライカーたちと同じペースで量産するのは簡単ではない。日本は初戦のオランダ戦を2-2で引き分け、中村敬斗と鎌田大地がゴールを挙げた。強豪相手に複数得点を奪えたことは大きな材料だが、得点王争いに絡むには、グループステージ残り2試合で一気に数字を伸ばす必要がある。
候補の筆頭は上田綺世だ。日本の中で最も「点を取る役割」に近いストライカーであり、ゴール前での動き出し、ヘディング、ワンタッチでのシュートに強みがある。日本がサイド攻撃やセットプレーから好機を増やせれば、上田が2試合連続、あるいは1試合複数得点を挙げる展開も考えられる。
中村敬斗も面白い存在だ。オランダ戦で得点したことで自信をつかんでおり、左サイドから中へ入って右足で狙う形は明確な武器になる。得点王という観点では、サイドの選手は中央のストライカーより不利に見えるが、今大会のように試合数が多く、相手が前に出てくる展開が増えれば、カウンターから追加点を奪うチャンスはある。
鎌田大地は、純粋な得点量産型ではないものの、重要な場面で顔を出せる選手だ。セカンドボールへの反応、遅れてペナルティーエリアに入る動き、セットプレーでのこぼれ球。日本が長く勝ち残るなら、鎌田のような2列目の選手が複数得点を積み上げる可能性もある。久保建英や堂安律も、得点だけでなくチャンスメークを担いながら、自らフィニッシュに絡める選手として注目される。
結論として、得点王争いの本命はエムバペ、対抗にハーランドとメッシ。そこにケインや各国のエースが続く構図だろう。日本勢が割って入るには、まずグループ突破、そして特定の選手に得点が集中する展開が必要になる。大会の主役は、すでに初戦から名乗りを上げた。メッシの伝説が最後にもう一度頂点へ向かうのか。エムバペとハーランドの時代が本格的に始まるのか。北中米の夏は、ゴールの数だけ物語を濃くしていく。
取材・文/集英社オンライン編集部

