ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。
斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!
技術を自己増殖させるために必要なこと

どのスポーツであれ、レベルが拮抗しているプロはリスクを冒さないと勝てないため、プレッシャーのなかあえて挑戦してミスをすることもあるが、普段の練習ではほぼパーフェクトなパフォーマンスを発揮する。我々アマチュアゴルファーが目指さなければならないのは、通常のショットであれば「捕ったボールを無意識に投げ返す」ように、ごく自然に打てるところまでセンスを高めておくことだ。
体系の理解には法則性を見出すことが重要
計47回、ほぼ4年に渡って“テニス屋”目線からゴルフを語ってきましたが、それも今回が最終回となります。納得した記事を書けるように、毎回しっかり検証をしてきたことが、自分に課題を課す形にもなり、毎月ゴルフがとても上達しているのを実感していました。
じつをいうと、コロナを経てクルマ(足)をなくし、練習場オンリーで連載開始から1度もコースに出てはいないのですが、ドライバーからロングアイアンまでの長いクラブも苦手意識なく打ちこなせるようになり、フェード・ストレート・ドローも意のままに打ち分けられるように。アプローチではさまざまなスピンのかけ方で、手でトスするように打てるようになっています。
この状態をテニスの経験に照らすと、すでに中・上級者のレベルにいると確信しています。もちろん、フィールドスポーツとしてのゴルフでは、実際のコースボールを使っての距離感の醸成や芝という自然物の上での対応などは練習場では練習不可能ですので、そこを補強したら、という前提つきですが……。
昔、自社ソフトウェアの導入教育をしていたときに、プログラムとしては同じエディタで、それをデータベース内のさまざまなカテゴリーへの編集に給していました。同じエディタなので操作は同じですが、羅列されるパラメータの種類が異なると違って見えるらしく「さっき同じことをしましたよ」とアドバイスしても、納得できないのか、すべてのパターンをメモして覚えようとする受講生が多くいた一方で、その法則性に気がついて一気に操作を覚えてしまう受講生もいました。ここでの分水嶺は、見えている事象のなかに法則性を発見し、単純化できるかどうかという点だったのです。
これは、ゴルフでもほぼ同じようなことが起こっています。たとえば、ある人はアイアンとドライバーの打ち方は違うといいますし、ある人は同じだといます。もちろん、ティーアップしてあおって打つと地面から打つは、同じではないのですが、どちらもフェースでボールを打つという意味では一緒で、そこには必ず共通点はあるのです。そのなかで両者に共通する法則性を見つけ出せれば、ひとつのセンスでスイングを俯瞰して考えることができ、ドライバー、アインアの打ち方にかぎらず、スイング自体を汎化して応用力を高めることができます。
体系を理解するときに重要なのは、要素を単純なプリミティブな形に分解し、その関連のなかで法則性を見出す力です。これは多項式の因数分解と基本的に同。本連載のなかでもたびたび引用してきたテニスとの対比も、テニスとゴルフのスイングのなかにある因数(共通点)を求め、自由に打ちこなせるテニスのセンスの流用でゴルフスイングを理解しようとしていたということにほかなりません。
基本は自分の感覚(実体験)を通して理解すること
ここでもうひとつ重要なのは、理屈のさじ加減で対処するのではなく、実感覚をベースとしてスイングを理解することです。テニスでは強く打てば打つほどトップスピンがかかってアウトしにくいというシステムがベースにあって、その安心感から何でも挑戦できる感覚が生まれるのですが、そういうものです。
ゴルフはボールも小さく遠いためビギナーのころはボールにしっかり当てられず、トップしたりダフったりで自信を失いがち。フェアウェイウッドは払うように打つなどという人もいますが、どのような状況でも絶対にダフらないのは、ボールの赤道より上の北半球を直接叩きにいくことです。いろいろと考えがちですが、フェース概念のないパッティング時に地面のボールを打つことから考えてみれば、リーチを一定にして上から打ちにいくのは当然の答え。払うように入れて地面でクラブヘッドがバウンドしてしまうミスもありません。
すなわちダウンブローで打つということの言い換えなのですが、ティーアップして打つことのできるドライバー以外は、このボールの上からとらえる感覚が基本となります。
絶対にボールを直接打てるイメージができたらアイアンに持ち替えて、次はしっかり力を入れられる感覚を見つけます。プロ野球、ロッテマリーンズで打撃コーチを務めた金森氏の提唱する「ふすま理論」のように、もっとも力の入るインパクトの形を探すことで、ムダなく力を入れられるうえにダフらない無理のないスイングのイメージが脳に記憶される。そのうえで、打ちたい弾道をイメージして、その実現のためにインパクトイメージ(フェースの方向、スライド方向、インパクト圧)を作る。
ハーフスイングで充分なのでボールを掌握し、感覚重視でフェード・ストレート・ドロー、遠・中・近と思ったようにコントロールすることを目指せば、本連載で目標にしていた「キャッチしたボールを無意識に投げ返すように打つ」コアセンスができます。さまざまな理論に惑わされず、自分の確固たるコアセンスに対して理論を肉づけしていくようにしましょう、と最後に提案して、連載を締めさせていただきます。
いかがでしたか? 今回でサンドラー博士の連載は最終回となります。今までありがとうございました!

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

