
俳優・芳根京子が主人公の日本版声優を務めた、ディズニー&ピクサーのアニメーション映画「私がビーバーになる時」が、6月10日に配信された。芳根は正義感の強い大学生メイベル役として、そして“ビーバー”として動物たちとコミュニケーションを取るキャラクターを好演。細かい発声やコミカルな会話シーンなど、芝居で見せる演技力を吹き替えでも発揮した。そこで今回は、本作で見せた芳根の演技力について紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
■主人公がビーバーとなって動物の世界へ
「私がビーバーになる時」は、「もしも動物の世界に入れたら」というユニークな発想をテーマに描かれる世界を舞台に、キュートで個性的なキャラクターたちが奮闘する物語。メイベルは、大好きなおばあちゃんとの思い出の詰まった森にある池が、ジェリー市長(日本版声優:渡部篤郎)が計画する高速道路建設によって、埋められてしまうことにたった1人で反対運動をしていた。
それでも止まらない工事計画の進行によりタイムリミットが迫る中、メイベルは池の近くで1匹のビーバーを見つける。しかしビーバーは突然現れた車に連れ去られてしまう。動物を愛するメイベルは、ビーバーを救うために後を追い掛ける。
すると着いた場所はメイベルの通う大学の実験室で、そこでは彼女が“ドク”と呼んで慕うサム博士(日本版声優:高島雅羅)と助手たちが秘密の実験をしていた。それは、動物型ロボットに人間の意識を伝送し、その人間は文字通り動物になって、本物の動物たちと会話もできるという最先端のテクノロジーだった。
それを見たメイベルは「このテクノロジーを使ってビーバーになれば森の池、そして動物たちを守れるのではないか」とひらめき、博士たちを振り切ってビーバーになり、動物界へ飛び込むことに。しかし、そこには人間の常識が通じない動物たちのルールがあり、想像以上にハチャメチャな世界だった。
動物の世界では、哺乳類の王様キング・ジョージ(日本版声優:小手伸也)をはじめ、さまざまな動物たちと関わっていくうちに、彼女は今まで感じたことのない感情や気付きを得ていく。
そして考え方や生き方も違う動物たちと共に、メイベルは高速道路の建設計画を阻止すべく奮闘していく――というストーリー。
■芳根の声の演技に思わず感情移入
芳根といえば、初期の代表作の一つ「表参道高校合唱部!」(2015年、TBS系)で演じた合唱が大好きで天真らんまんなヒロイン・香川真琴をはじめ、関西弁をマスターしてヒロインに扮(ふん)した連続テレビ小説「べっぴんさん」(2016-2017年、NHK総合ほか)、売れないお笑い芸人・潤平(仲野太賀)と長年交際するキャリアウーマンの奈津美を演じた「コントが始まる」(2021年、日本テレビ系)など、「けなげでピュア、明るい芝居が得意な俳優」という印象も強い。
特に見ている側としては、彼女の表情から感情移入してしまうことが多いのだが、アニメーションの吹き替えを担う本作では、芳根自身の声の表現力を通して感情移入してしまったというのが本作を視聴してすぐの感想だった。
大学生のメイベルが“もふもふ”のビーバーになってからも、ジェットコースターのように動く感情や、動物たちに対してリーダーシップを発揮していく様も、持ち前の“はつらつ”とした声だけでなく、キャラクターのエッセンスを巧みに織り交ぜて表現していることが分かる。
また、メイベルの喜怒哀楽(特に喜怒)の激しさ、ジョージやジェリー市長とのテンポよく展開されていく会話シーンはうるさくなり過ぎず、むしろ自然体の声の演技を見せているため、すんなりと会話を聞き入ってしまうほど。洋画アニメーション映画の吹き替え版声優となると「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」(2021年)以来約4年半ぶりとなるが、全くブランクを感じさせず、視聴者の心にスッと声が入ってくるのは彼女の表現者としての努力あってだろう。

■真っすぐで芯の強いメイベルの姿はまさに芳根そのもの
劇中ではユニークな動物たちが多く登場し、思わず「かわいい」と言いたくなるシーンが多い一方で、かくいう芳根“メイベル”はビーバーでありながらもカナヅチという設定にもクスッとしてしまう。
ジョージに泳ぎ方を教えてもらい、慣れない水中で前後の足をバタバタとさせながら会話を続けようとするシーンは、本当に水中でしゃべっているのではないか、と錯覚するほどリアル。
そしてビーバーから大学生に戻り、再び森を守ろうと立ち向かう姿からは、正義感にあふれるメイベルの強さが感じられた。彼女らしい真っすぐで芯の強い演技力がここぞとばかりに発揮されている。
映画公開時に行った当メディアのインタビューでは「普段の芝居と声で表現する芝居の違い」について、「実写のお芝居のときは、ある程度事前に想定していても『ここまで大きな声が出るとは思わなかった』『ここまで感情的になるとは思わなかった』などと、演じながら気付かされることが多くて。それが面白いなと思っていました。声のお芝居のときは、完成した映像に声をあてていくことが多いので、自分でしっかりと決めて演じなければ成立しないと感じています。アプローチの仕方も全く違うところが学びになりますし、楽しいと感じる部分です」と、実写の芝居との演じ方の違いを語っていた。
その上で本作で演じたメイベルについて「メイベルも真面目で一生懸命なところがありながらも、ちょっと抜けている点も魅力だったりするので、その塩梅をうまく表現できたら、と思い演じていました」とも話しており、絶妙なバランス感があってこそ、魅力的なキャラクターになったのだ。
2023年にデビュー10周年を迎え、2026年2月28日には29歳になった芳根。デビュー当時から変わらず、真摯(しんし)に芝居と向き合う彼女の演技力を思う存分に堪能できる、新たな代表作になるだろう。
ディズニー&ピクサーの最新アニメーション映画「私がビーバーになる時」はディズニープラスで見放題独占配信中。
◆文=suzuki

