史上最多48か国が出場する2026年ワールドカップは、北中米3か国で連日、熱戦が繰り広げられている。
アジア、アフリカ、中南米、オセアニアからこれまで以上に多くの国々が世界最高峰の舞台に立ち、初出場国の躍進や各地のサポーターによる熱狂も話題となっているが、その一方で大会規模の拡大を巡っては賛否が分かれており、各国メディアも様々な視点から論評を展開している。
厳しい見解を示したのはイタリアのスポーツ紙『Gazzetta dello Sport』で、「インファンティーノの方式は説得力を欠く」と題した記事では、試合数が従来の64試合から104試合へとほぼ倍増し、出場国も32から48へ拡大された状況を「巨大化」と表現。FIFA(国際サッカー連盟)が推し進めたこの拡大路線に疑問を呈し、「規模の拡大が、必ずしも競技レベル向上に繋がっていない」と指摘した。
特に問題視したのは「昼間の厳しい暑さの中で行なわれる試合が少なくない点」で、「1994年アメリカ大会で批判された正午キックオフの教訓が生かされていない」と主張。さらに、「一部の試合では実力差が大きく、48か国制によって競技レベルのばらつきが目立つようになった」として、「試合のクオリティー低下」を強調している。
また、自国代表チームが今回で3大会連続の予選敗退を喫した背景もあり、欧州の出場枠配分にも不満を示し、「欧州が不当に扱われた」「出場国増加によって、競争力の高い欧州勢の割合が相対的に低下した」と分析。加えて給水タイムについても、「選手保護というより、広告収入拡大を目的とした制度ではないか?」「試合の流れが細切れになり、観客の集中力や感情移入を損なう恐れがある」と疑問を投げかけた。
こうした懸念を裏付ける事例として、スポーツ専門チャンネル『ESPN』はドイツ対キュラソー戦を挙げている。グループE初戦で、欧州の強国は初出場となったカリブ海の小国を7-1で圧倒したが、この実力差が明確に表われた一戦を、同メディアは「大会規模拡大の長所と短所の両方を示した」と評価。以前からW杯には大量得点差の試合は存在したものの、出場国の裾野を広げた結果、「強豪国と初出場国の力の差が露呈するケースが増えるのではないか、という懸念を改めて浮き彫りにした」という。
もっとも、同メディアは否定的な側面だけを強調しておらず、「(21分に)MFリバノ・コメネンシアが決めた歴史的な同点ゴールは、キュラソーのサッカー史に永遠に刻まれるものであり、スタンドを埋めた同国サポーターが大会に独特の熱気をもたらした」と、初出場国ならではのポジティブな要素が大会を彩った点を評価。ドイツのユリアン・ナーゲルスマン監督が「キュラソーのファンは素晴らしかった」と称賛した事実も紹介されている。
さらに同メディアは、初出場での初陣で優勝候補筆頭のスペインと引き分けるという快挙を成し遂げたカーボベルデにも言及し、人口約50万人のアフリカの小国によるW杯出場を「あり得ないような旅路」と表現。「長年にわたる干ばつや貧困、移住の歴史を抱える国にとって、W杯出場は単なるスポーツイベントではなく、国民的悲願の達成だった」と伝え、「世界中に散らばる人々を結び付け、その国の文化や歴史を発信する舞台となった点こそが、大会拡大の意義だ」と主張した。
一方、フランスのサッカー専門サイト『SO FOOT』は、UEFA(欧州サッカー連盟)のアレクサンデル・チェフェリン会長が「48か国制では興味を引かない試合が増えた」と発言した件に対し、カーボベルデ、キュラソー、ウズベキスタン、ハイチ、モロッコなど13の連盟が「欧州の傲慢さ」だと反発し、「初出場国や久々に本大会へ戻ってきた国々にとって、W杯出場は何世代にもわたる夢の実現であり、その価値を軽視すべきではない」との共同声明を発した動きに注目している。
同メディアは、キュラソーの大敗について「W杯における大差の試合は、今に始まった話ではない」と指摘。1982年スペイン大会のハンガリー対エルサルバドル戦(10-1)や、2014年大会で開催国ブラジルがドイツに1-7の大敗を喫した衝撃の一戦などを例に挙げ、「強豪同士でも、一方的な結果は起こり得る」と論じた。
「もし競技レベルだけを重視するのであれば、世界大会にするのではなく、各大陸王者による小規模大会で済む話だ」と主張し、「むしろ、小国と強豪国が同じ舞台に立てる点こそがW杯の本質的な魅力だ」と訴える同メディアは、「UEFA自身も、EUROやチャンピオンズリーグで参加チーム数を増やしてきた経緯がある」と指摘した上で、「拡大批判には一定の“偽善”も含まれている」との見解を示している。
構成●THE DIGEST編集部
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