『ロスト・イン・トランスレーション』や『マリッジ・ストーリー』、『ブラック・ウィドウ』など、多くの代表作を持つ俳優、スカーレット・ヨハンソンが初めて監督を手がけた『エレノアってグレイト。』が全国公開中。
長年一緒に暮らしていた親友・ベッシーの急死によって、娘と孫が住む故郷ニューヨークに居を移したエレノアは、ふとホロコースト生存者の会に迷い込み、ベッシーが自分に語っていたホロコースト生存者としての半生を、自分の経験として話してしまう。それをきっかけに、ジャーナリスト志望の学生ニナとの距離が縮まり、孫世代のニナとの新たな友情に浮足立つエレノア──。行動力と反骨精神に溢れるエレノアを演じるのは『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』で当時93歳で初主演を果たし、多くの映画祭で賞賛されたジューン・スキッブ。エレノアを通じて、友人や親子のかけがえのない結びつきを生き生きと伝えている。96歳とは思えないほどエネルギーに溢れたジューン・スキッブにインタビューした。
――『エレノアってグレイト。』主演のオファーがあった時、どう思いましたか?
脚本を読んで、エレノアという人物にとても好感を持ちましたし、私に相応しい役で演じるべきだと思いました。エレノアは思ったことをオブラートに包まずそのまま言ってしまう。人からどう思われても構わないようなところが魅力的だと思いました。世代が大きく違うニナとの関係性も面白いです。今の若い世代の方はとてもパワフルなエネルギーを持っているので、エレノアとニナの関係性も理解できました。
――下の世代とのコミュニケーションを通じてどんな刺激を受けますか?
彼らはたくさんのことを話してくれます。私が彼らと同じ年齢だった頃と比べても、大きく違う日常を送っているので、本を読んでいるような気分になります。長い間、友人関係を育んでいる人が何人かいますが、彼らの話は大きな学びになります。
――エレノアは新たに生まれたニナとの友情を壊したくないがために、戸惑いや葛藤を感じながらも嘘を重ねます。演じる上で意識したことはありますか?
特に意識したことはなかったですね。ニナを演じたエリン・ケリーマンさんとお芝居をするのはとても楽しかったので自然と演じられました。エリンさんとは今でも仲が良いです。
――ジューンさんにとってお芝居の楽しさとは。
自分とは違うキャラクターになりきるのが楽しいです。私は昔からごっこ遊びが好きだったんですよね。納得できるお芝居をできた時の喜びは大きいですし、そういう時は監督も同じように手ごたえを感じてくれていることが多いので、より楽しみが増します。
――スカーレット・ヨハンソンさんは『エレノアってグレイト。』。が初監督作品です。ご一緒してみてどんな魅力や特性を持つ監督だと感じましたか?
仕事を大事にしている方だと思いました。多くの監督さんは演技経験がありませんが、彼女は俳優なので、私がどこに向かってお芝居をしているか、どういう演出を必要としているかということをうまく感じ取ってくれるので、とてもやりやすかったです。阿吽の呼吸でご一緒できました。スカーレットさんのことをとても尊敬しているし、愛しています。
――ベッシーをはじめ、ホロコースト生存者が抱える苦しみが重要なモチーフになっています。どう受け止めましたか?
脚本を読んだ時、とても印象に残った要素です。引き続き向き合わなければいけない歴史だと思いますが、なぜエレノアは自分がホロコースト生存者だと嘘をつき、そのストーリーを語らなければいけないと思ったのか。とても新しい切り口でホロコーストを描いていると感じました。ベッシーを演じたリタ・ゾーハさんのお芝居から大変な出来事をくぐり抜けてきた信憑性が滲み出ていますよね。
――友情や親子関係といった人間関係が描かれていますが、人との関係性において思考したことはありますか?
エレノアの娘・リサ役のジェシカ・ヘクトさんとお芝居をする中で、自分の母親が思い浮かびました。人にどう思われようと自分を貫く強さがあって、自分がこうと決めたら現実すら無視できてしまう。そんな自分を強く持っているところがエレノアに似ていると思いました。
――ジューンさんはお母様に似ているところはあると思いますか? それとも全く違う性格なのか。
ある程度受け継いでる部分はあると思います。若い頃は母親のようになるまいと躍起になってたいたんですが、年を重ねるとある程度の諦めが生じるんですよね(笑)。
――(笑)。エレノアは親友のベッシーとの暮らしを楽しんでいましたが、ジューンさんの生活の楽しみや糧というと?
猫を1匹飼っていて、猫からエネルギーをもらっています。前は2匹飼ってたんですが、1匹は亡くなってしましました。ロサンゼルスにいる時は猫の世話に勤しんでいて、別の場所に行く時は人に世話してもらっています。あとは読書をすることですね。
――最近読んで面白かった本、おすすめしたい本は何かありますか。
ここ数年北欧のミステリーにハマっています。北欧のミステリーは幅広く読んでいますね。エジプトのナギーブ・マフフーズさんの小説も好きです。
――読書をすることは脚本を読んで役やストーリーを頭の中で膨らませることに役立つものなのでしょうか?
それはありますね。私は子どもの頃から読書好きで、読むものがない時は、シリアルのボックスに書いてある文字を読むくらい活字が好きでした(笑)。
――『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』で93歳にして初主演を果たしたことをはじめ、90代でのご活躍が多くの人にエネルギーを与えています。
ありがとうございます。『テルマがゆく!~』で演じたテルマは電動スクーターを乗り回していましたが、プロデューサーをはじめ、みんなが私が運転すると危ないんじゃないかって心配してたんですよね。私は車を運転していたし「できますよ」と言ったんです。スタントコーディネーターがやってきて、「こういう風に乗ってみてください」と指示をしてくれる中、「もっと乗れる」とか「こういう運転もできる」って私から説得にかかるような勢いでした(笑)。いろんなものが散らばった部屋をスクーターで突き進むシーンもあったので、みんな「転んで怪我したらどうしよう」と心配してくれたんですが、「大丈夫だから!」って言って、劇中の運転シーンはほぼ私が演じました。
――とてもパワフルな運転シーンだったので、ほぼご自身が運転されていたというのは驚きました。
自分のことを誇りに思います(笑)。
――長く俳優を続ける上で大事だと思うことは何でしょう?
やり続けていないと感覚や記憶力は衰えていくので、とにかく続けることが大事だと思います。
――新たな役を演じる時はワクワクするのかプレッシャーを感じるのか、どんな気持ちで向き合うことが多いですか?
ワクワクすると同時にセリフを覚えて学ばなければいけないというプレッシャーもあります。役者をやる上で誰しもがそのプレッシャーは経験するものですよね。役に入り込んでいくアプローチは人それぞれですが、私は時間をかけるタイプです。先日共演した若い女性の俳優は、脚本を読んだらすぐに覚えてしまうと言っていたので驚きました。
――約一年前のインタビューでは「健康のために週に1回1時間のピラティスと毎日のウォーキングが欠かせない」とおっしゃっていました。今でも続けていますか?
そうですね。若い頃はダンスをやっていて、体を痛めてしまったところがあるのですが、何もしないとエネルギーは下降していきますし、体を動かすことは大事です。ピラティスをやるとエネルギーが湧いてくるんです。
【インタビュー・執筆】小松香里
編集者。音楽・映画・アート等。ご連絡はDMまたは komkaori@gmail~ まで
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