
偶然ではない“番狂わせ”。ポルトガルを苦しめたDRコンゴ、何が凄い? 台風の目になり得ることを世界に示した90分だった【現地発】
テキサス州ヒューストンで現地6月17日に行なわれた北中米W杯のグループK第1節で、DRコンゴが優勝候補の一角と目されるポルトガルと1-1で引き分けた。
戦前の下馬評から見れば、2日前にカーボベルデがスペインと0-0で引き分けた試合と同様の“番狂わせ”と言えるが、その内容は決して偶然ではない。組織的な守備と鋭いカウンターを武器に、DRコンゴは90分を通してポルトガルを苦しめ、歴史的な勝点1を手にした。
試合は開始早々に動いた。6分、ポルトガルは中盤のヴィティーニャを起点に左サイドを攻略する。ペドロ・ネトが上げたクロスに対し、ゴール前で構えるクリスティアーノ・ロナウドの手前へジョアン・ネベスが飛び込む。DRコンゴ守備陣の間にうまく入り込んだネベスがヘディングで合わせ、ポルトガルが幸先良く先制点を奪った。
しかし、この失点でDRコンゴは動揺しなかった。セバスチャン・デサブル監督のチームは、自分たちのゲームプランを崩さずに戦い続けた。
守備では5-3-2のブロックを形成し、5バックと中盤3枚で中央のスペースを徹底的に閉鎖。ポルトガルにボールを持たれることは織り込み済みとばかりに、危険なエリアへの侵入を許さなかった。
一方で、ボールを奪えば素早く前線へ展開する。前線には豊富な経験を誇るセドリク・バカンブと、プレミアリーグで活躍するヨアンヌ・ウィサの2トップが構える。バカンブが起点となり、ウィサが背後へ飛び出す形で、ポルトガルの最終ラインに対して何度も鋭いカウンターを繰り出した。
時間の経過とともに、試合はむしろDRコンゴの狙い通りの展開になっていく。
ポルトガルは70%を超えるボール保持率を記録しながらも、C・ロナウドが待つペナルティエリア内へ効果的なボールを送り込めない。DRコンゴの5バックと中盤3枚が中央を締め続けたことで、攻撃は外回りになり、支配率ほどの脅威を生み出せなかった。
対照的にDRコンゴは少ないチャンスを確実にゴールへ結びつける。
前半終盤、左サイドの仕掛けからCKを獲得すると、その流れからアルテュール・マスアクがクロスを供給。ゴール前へ飛び込んだウィサがヘディングで合わせ、貴重な同点ゴールを奪った。
このゴールは単なるワンチャンスではなかった。それまでの時間帯もDRコンゴは、カウンターやセットプレーで相手ゴールを脅かしており、内容面でも十分に得点の予感を漂わせていた。むしろ決定機の数という意味では、DRコンゴが互角以上に渡り合っていたと言っても過言ではなかった。
後半も時計が進むにつれて、勝利を求めるポルトガルも圧力を強める。ロベルト・マルティネス監督は打開策としてFWゴンサロ・ラモスを投入。切り札とも言える本職ストライカーをC・ロナウドと縦に並べる形で、前線の枚数を増やし、ゴール前での迫力を高めようとした。
しかしDRコンゴの守備ブロックは最後まで崩れない。中央を閉じられたポルトガルは決定機を思うように作れず、攻撃は単調さを拭えず。結局、試合はそのまま1-1で終了した。
試合後、マルティネス監督はW杯初戦の難しさを口にした。しかし、優勝候補として期待されるチームであることを考えれば、満足できる結果とは言い難い。
エースのC・ロナウドは不発に終わり、チーム全体としても攻撃面で課題を残した。今後のグループステージを勝ち抜くうえで、修正が求められる内容だったことは間違いない。
一方で、DRコンゴにとっては大きな価値を持つ勝点1となった。しかも、単なる守備的な引き分けではない。粘り強い守備から攻撃面では彼ららしい特長を発揮して、内容面でもポルトガルを苦しめたうえで、掴み取った結果だった。
もっとも、デサブル監督は試合後に一定の満足感を示しながらも、ラウンド32進出にはさらなる勝点が必要だと強調した。ここからグアダラハラでのコロンビア戦、アトランタでのウズベキスタン戦と、長距離移動を伴う厳しい戦いが続く。指揮官はまず良い回復を行ない、次戦へ向けた準備を整えることの重要性を説いた。
北中米W杯特有の過酷な移動環境も含めれば、DRコンゴの挑戦はまだ始まったばかりだ。しかし、優勝候補ポルトガルを相手に見せた戦いぶりは、このチームが単なる伏兵ではないことを十分に証明した。
組織的な5バックのシステム、前線のバカンブとウィサを軸とした鋭いカウンター、そして最後まで崩れない規律ある守備。ヒューストンで見せた試合は、1974年にザイールとして出場して以来、二度目のW杯となるDRコンゴが大会の台風の目になり得ることを世界に示した90分だった。
取材・文●河治良幸
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