
『お前らはどうせ消える』『他の選手に抜かれる』反骨心や闘争心をかき立てられて逞しく成長。“敬斗ゾーン”の原点を恩師が回想「シュートが強烈、得点は一番決めていた」【日本代表】
現地6月20日の北中米ワールドカップ第2戦・チュニジア戦に向け、日本代表は16日の完全オフを経て、17日から再始動した。
左膝負傷の久保建英(レアル・ソシエダ)はこの日のトレーニングに姿を見せず、上田綺世(フェイエノールト)は別メニュー。上田の方は「大丈夫です」と繰り返していて、プレー可能な状態と思われるが、久保はグループステージでの出場はほぼ絶望的。試合を決定づけられるアタッカーの不在は、森保一監督が率いるチームにとって小さくない不安材料だ。
それでも「誰が出ても勝つ、誰と組んでも機能することを常に目ざしてきた」と指揮官のポリシーは崩れない。既存戦力をうまく組み合わせて苦境を乗り切っていくはずだ。
チュニジアは初戦でスウェーデンに1-5の大敗を喫し、ラムシ監督からルメール監督に指揮官が交替。ルメール監督は自身がサウジアラビアを指揮していた時と同様、ローブロックを引いた守備的な戦い方で挑んでくるはずだ。
そこをこじ開け、ゴールを奪うには、個の仕掛けと強烈なフィニッシュが必要不可欠。今の日本で両方を兼ね備えているのは、中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)ではないか。S・ランスでかつてチームメイトだった伊東純也(ゲンク)も「敬斗は得点を取る能力が一番のストロングポイント」と太鼓判を押している。次戦も中村の一挙手一投足がキーになりそうだ。
その中村は2017年のU-17W杯、19年のU-20W杯に参戦するなど、世代別代表にも名を連ねていた選手。同い歳の菅原由勢(ブレーメン)、瀬古歩夢(ル・アーブル)、1つ下の久保はU-20W杯では同時期にコパ・アメリカがあったために参戦していないが、中村はずっと彼らと共闘してきた間柄である。
この2000・01年生まれの選手たちを鍛え上げたのが、15~17年にかけてU-15~17日本代表を率いた森山佳郎監督(現・仙台監督)だ。
「それまでの年代別代表は、技術を重んじる傾向が強かった。当時のA代表を見ると、年代別代表経験がゼロに近い選手たちが主力を担っていた。『この状況を変えてほしい』という日本サッカー協会からの要請もあって、『将来、大物になる可能性のある選手を育てる』という方針で選手をピックアップし、あえて厳しい環境の国々に遠征。タフさを養い、戦える選手を育成したんです」と、森山監督は以前、話したことがある。
中村や菅原は今でも「ゴリさんには『お前らはどうせ消える』『他の選手に抜かれる。これでバイバイだ』と言われた」と苦笑いすることがある。当然ながら、指揮官が本気でそう言っていたわけではない。もっとできるだろ――選手たちは徹底的に反骨心や闘争心をかき立てられ、貪欲に高みを目ざすようになっていったのだ。
久保という超エリート少年が身近にいたことも、早い段階で世界基準を知る良い機会になったのだろう。森山ジャパンという“原点”が、中村らの成長に大きく寄与したのは紛れもない事実と言っていい。
「敬斗に関しては、A代表になったことは正直、一番の驚きです」
恩師はこういった驚きの発言もしていた。
「タケや瀬古、由勢、(鈴木)彩艶(パルマ)なんかは、17歳の段階で『A代表に入る』と思いましたが、敬斗は未知数の存在だった。三菱養和という町クラブにいたせいか、ワイワイと賑やかなJクラブ所属の瀬古や由勢たちとは少し距離を置いていて、『自分は自分』というスタンスだったので、どうなっていくのか注視していました。
ただ、その頃からシュートが強烈で、得点は一番決めていた。自分の間合いになった時の迫力は凄まじいものがありました。それに加えて、守備力が格段に伸びた。それが代表定着につながったのかなと感じます」
森山監督の見立て通り、中村はペナルティエリア左45度、いわゆる“敬斗ゾーン”での仕掛けからのフィニッシュを磨き上げ、点を取り続けてA代表に定着。今回のW杯では、2-2で引き分けた初戦のオランダ戦で1得点。守備面でのハードワークも文句なし。怪我の影響によりW杯メンバーで選外の南野拓実(モナコ)、三笘薫(ブライトン)、さらに久保までもが離脱した今、「日本の新エースは中村ではないか」という声も聞こえてくる。
チュニジア戦は左ウイングバックに中村、右ウイングバックに菅原が揃って先発することもあり得る。伊東が「相手が引いてきた時は、サイドからのクロスが大事。ローブロックの時は1本、しっかり合わせて決めることですね」と話すように、サイドの2人の仕掛けとクロスが得点のポイントになってくる。その流れで中村自身が今大会2点目を奪うことも大いにあり得る。
森山ジャパン時代からのガツガツ感をさらに押し出し、異彩を放つ背番号13の姿をもっともっと見てみたい。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
【美女サポ画像】北中米W杯を華やかに彩る各国ファンを一挙公開!
【画像】メッシ、エムバペ、ネイマールも! 世界のスター選手はどんなポーズ? FIFA公式ポートレートの厳選ショットを一挙公開!
【記事】「今だったらもっと化け物に」──森保ジャパンでも共存可能? 中田英寿という“終わらない夢”
