
子供のころ、「危ないからやめなさい」と言われたことがあるでしょうか。
スリルの伴う遊びが好きだった人は、そうした言葉をよく聞いたかもしれません。
それでも、高い場所に登る、不安定な足場を渡る、スピードを出して走るといった“少し危ない遊び”は、子どもにとって危険を学ぶ大切な練習になっている可能性があります。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)などの国際研究チームは、VR空間を使った実験により、遊びの中でリスクを取る子どもほど、道路横断を想定した場面でも、安全性を損なわずに素早く判断する傾向を示しました。
この研究は、2026年5月2日付で学術誌『Journal of Environmental Psychology』にオンライン掲載されました。
目次
- 子どもの「少し危ない遊び」はやめさせるべきか
- リスクを取る子どもは「危機管理能力」が高くなる可能性
子どもの「少し危ない遊び」はやめさせるべきか
リスキーな遊びとは、子どもがワクワク感や不確実性を感じながら、身体的な挑戦をする遊びのことです。
たとえば、高いところに登る、速く走る、不安定な足場を渡る、大人の細かい監視なしに探索するといった行動が含まれます。
大人から見ると、こうした遊びはケガにつながる危険なものに見えます。
しかし研究者たちは、子どもが小さなリスクに触れる経験は、自分の身体能力を知り、環境の危険を読み取り、行動を調整する練習になると考えました。
そこで今回の研究では、ノルウェーとカナダの7〜11歳の子ども424人を対象に、2種類のVR課題を行っています。
1つ目は、仮想空間の遊具を3分間自由に探索する課題です。
遊具には平均台のような構造や小さな柱、高さの異なるゾーンがあり、最も高い場所は1.5メートルに設定されていました。
研究チームは、子どもがどれくらい速く動いたか、不安定な柱の上にどれくらい進んだか、高い場所にどれくらい滞在したかを測定しました。
これらをまとめて、「リスクを取ってみようとする傾向」、つまりリスク意欲の指標にしました。
2つ目は、VR内で自転車道や車道を横断する交通課題です。
車や自転車は一定の速度で移動し、交通量は時間がたつほど少なくなるよう設定されていました。
そして子どもがどれくらい待ってから横断したか、衝突やニアミスがあったかが記録されました。
結果として、リスク意欲が高い子どもほどVR遊具では落下しやすい一方、交通課題ではより短い時間で判断することが分かりました。
これは何を意味するのでしょうか。より詳細な結果を次項で見ていきましょう。
リスクを取る子どもは「危機管理能力」が高くなる可能性
興味深いのは、リスク意欲の高い子どもが、単に無謀だったわけではない点です。
確かに、遊具課題ではリスク意欲が高い子どもほど落下しやすい傾向がありました。
全体では21%の子どもがVR遊具で落下しており、統計的には、リスク意欲が1単位高くなるごとに落下する可能性は78%高くなっていました。
ここだけを見ると、「やはりスリルが伴う遊びは避けるべきだ」と感じるかもしれません。
ところが、道路横断課題では別の結果が出ました。
リスク意欲が高い子どもほど、交通状況を評価してから横断を始めるまでの時間が短かったのです。
しかも、その判断の速さは、衝突やニアミスの増加とは結びついていませんでした。
つまり、リスク意欲の高い子どもは、危険を無視して飛び出していたのではなく、状況をより効率よく読み取り、安全性を損なわずに判断していた可能性があります。
研究チームは、こうした結果を「リスキーな遊びが、危険を管理する力の発達に関わる」という考えと結びつけています。
子どもは遊びの中で、少し高い場所に登り、足場の不安定さを感じ、失敗したら次の動きを調整します。
こうした経験を通じて、どこまでなら自分にできるのかを身体で学んでいくのです。
ただし、この研究は「子どもをどんどん危険にさらすべきだ」と主張しているわけではありません。
重要なのは、子どもの能力に合った管理可能なリスクです。
ちなみに、今回の実験はVR環境で行われたため、現実の道路や遊び場の複雑さを完全に再現しているわけではありません。
それでも結果は、子どもを守る方法を考えるうえで、すべての危険を取り除くことだけが正解ではない可能性を示しています。
失敗しても取り返せる小さな挑戦の中で、自分で考え、試し、調整する経験こそが、将来の安全な行動につながるのかもしれません。
参考文献
Risky play helps children develop real-world safety skills, new virtual reality research suggests
https://www.psypost.org/risky-play-helps-children-develop-real-world-safety-skills-new-virtual-reality-research-suggests/
元論文
The developmental importance of risky play: A cross-national virtual reality study
https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2026.103062
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

