昨シーズン終盤、めったに選手を個別に褒めないバルセロナのハンジ・フリック監督が、その不文律を破った。対象はガビだった。
「私がリーダーについて語る時、それは選手の年齢とは関係がない。各選手のパーソナリティを非常に重視する。ガビがその1人になれるのは明白だ。彼ははるかに成熟し、集中した状態で怪我から戻ってきた」
「ガビはチームの心臓だ。彼が怪我から復帰して以来、トレーニングのレベルが上がった」
ガビは昨シーズン再び怪我に悩まされた。2023年11月に右膝の前十字靭帯を断裂。2024年10月にカムバックしたものの、復活を期していた中で開幕直後に同じ右膝の半月板を損傷した。手術を経て復帰は3月まで持ち越された。ワールドカップ(W杯)出場に黄信号を灯しかねない事態だったが、スペイン紙『EL PAÍS』によると、スペイン代表のルイス・デ・ラ・フエンテ監督は当初からプレーできる状態を示せば、北中米に連れて行く考えだったという。
その根底にあるのは、フリック監督と同じ信頼だ。デ・ラ・フエンテ監督は次のように語っている。
「彼は私たちがよく知っている選手であり、あのエネルギーと激しさはまさに彼の長所の一つだ。その熱量を今後はコントロールし、配分していく必要はあるだろう。しかし、私はガビに変わってほしくない。間違いなく、私のチームにはこのガビが必要であり、彼を望んでいる」
W杯に向けた練習中、ガビは勢い余って、ロドリの足を踏んだことがあった。幸い大事には至らなかったが、現地のソーシャルメディアでは批判の声も出た。しかし指揮官は次のように擁護した。
「これがフットボールであり、トレーニングというものだ。すべての選手が高い熱量を持って取り組んでいる。誰にも謝罪する必要はなく、非難されるべき要素は何もないプレーだ。どちらに対してもそうだ。全く問題ない」 代表の同僚ジェレミ・ピノも、その出来事について言及した。スペイン語で蹴りを意味する『patadas』という単語を最後まで言いきらずに笑い始めると、こう続けた。
「ガビは闘志、仲間意識、そして喜びを体現する存在だ。すべてのチームメイトにエネルギーを伝染させ、グループに多くをもたらす選手だ。ピッチ内では常に全力プレーで、あらゆる局面で命を懸けている。それは僕たちが非常に高く評価している部分だ。代表にとっても重要な選手だ。ガビは魂だ」
確かに賛否両論を巻き起こしやすい選手だ。全コンペティションで13試合、プレータイムにして約700分の出場でW杯メンバー入りしたことに疑問の声も出た。しかしこれまでバルサ、代表を問わずすべての監督が、戦術を超えてチームの闘争心を呼び覚ますその熱量を重宝してきたのは決して偶然ではない。
ガビ自身はこのスタイルについて次のように語っている。
「僕はとても自然体だ。ピッチ内でもロッカールームでも、どこにいても常に自分らしくいようと努めている。そうやってチームメイトからのリスペクトを勝ち取ってきたと思っている」
フリージャーナリストのアルベル・ブラジャ氏は、チームに活力を与える存在としてのガビをこう表現する。
「フリックはガビの名前を挙げるたびに目を輝かせる。すべての土台であるトレーニングのレベルが、ガビの存在によって劇的に向上したと語っていた。彼は圧倒的なパーソナリティと極めて質の高いフットボールセンスを兼ね備え、競争の基準値を引き上げる男だ。ガビを擁するというのは常に風が背中を押してくれるかのように、自分たちに味方するハリケーンを手に入れるようなものだ」
W杯でカーボベルデ相手にまさかのスコアレスドロー発進となったスペイン代表だが、反撃に転じなければならないチームにおいて、ガビがもたらす効果は必ず重要なものとなる。
文●下村正幸
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