6月21日に行われるサマーマイルシリーズ、しらさぎステークス(GⅢ・阪神・芝1600メートル)は、一昨年まで米子ステークス(オープン・阪神・芝1600メートル)として施行されてきた。
それが昨年の番組改編によってレース名が変更されるとともに、格付けがオープン特別からGⅢ(新設重賞)へとジャンプアップ。1着馬に与えられる本賞金はかつての2700万円から4100万円へと、大幅に増額された。
とりわけ本賞金(5着馬までが対象)が大きく引き上げられたことは、切実な厩舎経営、厩舎の懐事情において、大きな意味を帯びてくる。
しらさぎSにエコロアルバ(牡3)を出走させてきた田村康仁厩舎(美浦)は、2022年に6億7969万円に上る賞金(全管理馬が1年間に獲得した本賞金総額)を稼ぎ出した。この数字は1997年に厩舎を開業してからの最高額にあたる。
ところが、その後の年間獲得賞金は3億円台に留まり、今年に入ってからここまでの獲得賞金は、2022年を大きく下回る1億7254万円。このうち調教師に配分される報酬は獲得賞金の10%だから、田村氏がおよそ半年で手にした報酬は、約1700万円(特別出走手当や出走奨励金などは除く)ということになる。厩務員に支払う基本給などを考えると、台所事情は厳しいと言わざるをえない。
田村師が今回、エコロアルバの出走に踏み切った背景にはまず、こんな懐事情があったのだと推察できる。
加えて、この時期の別定重量戦に出走する3歳馬には「大幅斤量減」という特典が与えられる。しらさぎSにおけるエコロアルバの別定重量は、裸同然の53キロ。この点も陣営を「その気」にさせたことは想像に難くなく、各社の単勝予想オッズで同馬が1番人気に推されているゆえんでもあるだろう。
雨予報「道悪OK」の血統背景と重馬場のGIで4着
さらに言えば、しらさぎSが行われる前日の阪神競馬場には、梅雨前線の通過にともなう大雨予報が出ている。レース当日も一時雨(降水確率60%)となっており、レースは稍重か重馬場で行われる可能性が極めて高い。
父モズアスコット×母父フレンチデピュティの血統背景を考えると、エコロアルバはおそらく「道悪ノープロブレム」のクチだろう。事実、小雨が降る重馬場で行われた朝日杯FS(GI・阪神・芝1600メートル)を4着とこなしている。
しかし、である。勝負の世界では必ずしも、陣営の思い描く青写真通りにコトが進むわけではない。筆者が最も懸念しているのは「ローテの乱れ」だ。
エコロアルバは朝日杯FS出走後に体調を崩し、前走NHKマイルC(GI・東京・芝1600メートル)に「ぶっつけ本番」で臨んだ。しかもその後に「しばらくは使えない」ほどの反動が出たため、陣営は長期の放牧休養に出すことを決断したのである。
ところが放牧休養中に調子が上向いてきたことから急遽、方針を変更。本賞金が大幅に増額されたしらさぎSへの出走に、あえて踏み切ったのだ。
陣営が下した判断の成否は、レースで明らかになるだろう。
(日高次郎/競馬アナリスト)

