ピンチを救ったのは、アイドルグループ・嵐のラストツアーだった。今年3月、活動終了を前にした嵐が大和ハウスプレミストドーム(札幌ドーム)で3日間の公演を行い、約15万人のファンが全国から終結した。昨年11月のSnow Man、今年3月のVaundyの大型公演も相次ぎ、物販売上は大きく伸びた。2025年度の決算で、札幌ドームの営業利益が約2億1000万円の黒字となったことが明らかに。営業黒字は3期ぶりで、正式な数字は6月25日の株主総会で公表される。
しかし、である。ラストツアーという一生に一度の特需は、来年度には存在しない。それがこの黒字の核心に座っている。
収益の背景には、日本ハムファイターズの本拠地移転後の問題が横たわる。本拠地時代の札幌ドームは、ファイターズの年間約60試合という安定した興行で成り立っていた。
それが2023年に北広島のエスコンフィールドへ移転し、巨大な穴が空いた。コンサドーレ札幌のホームゲームは今も重要な柱だが、プロ野球の年間約60試合分の穴を単独で埋める規模ではない。
運営会社は2030年度までに売上高30億円を目指す一方、現状の売上高は20億円超の見込みにとどまる。既存の貸館事業だけでどこまで伸ばせるのか、という課題は残るのだ。
もうひとつの稼ぎ頭が、大和ハウス工業とのネーミングライツ契約による広告収入だ。契約金額は非公表だが、複数の報道では年2億5000万円規模とされている。今回の営業利益2億1000万円に対して、命名権収入はそれを上回る規模になる計算だ。
命名権収益は営業努力の成果だが、ドーム本来のイベント集客力とは別の固定収入でもある。「補助金頼み」を脱したあとに「命名権頼み」「大型公演頼み」が待っていたとすれば、問題の本質は変わっていない。
YOASOBIの2日間公演はあるけれど…
2026年度の足元は不安定だ。4月時点の稼働率の見込みは64%と、2025年度の71%から早くも下がっている。イベント主催者への補助金「ドーム活用促進費」は、今年度から廃止された。11月にYOASOBIの2日間公演が予定されており、大型誘致は続いているが、嵐が3日間で動員した約15万人と比べると、規模は異なる。
現在の指定管理期間は2027年度末まで。次の更新期には、第三セクター運営を続けるのか、より民間活力を取り込むのかも論点になりうる。
黒字は確かに前進だ。6億5100万円の赤字を出した2023年度からすれば、隔世の感がある。だが補助金頼みを脱した先に何があるか。2026年度の数字が、それを証明する最初の機会になるだろう。
嵐のラストツアーのような大規模集客が見込めない年でも、命名権が切れても、自力で黒字を出せるドームになれるのか。その答えが出るまで「復活」という言葉は使えない。
(ケン高田)

