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英国の解説陣が称賛した日本の“チャンネル”への侵入。共通理解がチーム全体に浸透。どこへ走り、誰がスペースを使い、どのタイミングでボールを出すか【W杯】

英国の解説陣が称賛した日本の“チャンネル”への侵入。共通理解がチーム全体に浸透。どこへ走り、誰がスペースを使い、どのタイミングでボールを出すか【W杯】


「日本はこの連係プレーが上手い」「日本は分かってやっている」

 日本代表のW杯初戦となったオランダ戦。英国の解説陣が、日本のある攻撃パターンを繰り返し称賛していた。褒めていたのは、元マンチェスター・ユナイテッドのギャリー・ネビルと、横浜F・マリノスやセルティックを率い、日本サッカーをよく知るアンジェ・ポステコグルーである。

 2-2の引き分けに終わった一戦では、中村敬斗のゴールや終盤に生まれた鎌田大地の同点弾が大きな話題となった。しかし、ネビルとポステコグルーが注目したのは、得点シーンだけではなかった。彼らが高く評価したのは、日本が見せた組織的な崩しだった。

 象徴的だったのが、43分の場面である。

 日本はオランダ陣内でボールを保持していた。鎌田が中盤で前を向くと、同じ高さまで上がってきた右CBの渡辺剛へパスを出す。渡辺は右サイドの堂安律へ展開した。

 ここから日本の狙いが見えてくる。

 堂安がタッチライン際でボールを受けると、渡辺はそのまま前方へ走り出した。堂安の内側を通り、相手のCBとSBの間へ入り込むアンダーラップだった。

 堂安からリターンパスを受けた渡辺は、そのまま右サイド深くへ侵入。クロスを送り、最後はファーポスト側に入ってきた中村がシュートを放った。ボールはゴール左へ外れたものの、前半の日本における決定機のひとつだった。
 
 この場面について、ネビルは興味深い指摘をした。

「日本の攻撃が優れていたシーンだ。実はオランダは、守備の形自体は悪くなかった。ただ最後のところで少し対応が曖昧になった。日本が成功したのは、あの“チャンネルへのランニング”だ」

 ネビルが評価したのは、渡辺が走り込んだ場所だった。

 もともと チャンネル(channel) は、「水路や航路、海峡」を意味する言葉だ。サッカーでも考え方は同じで、攻撃側が侵入する「通路」というニュアンスになる。イギリスサッカーにおける「チャンネル」とは、主にCBとSBの間にできるスペースを指す。

 英国の解説では頻繁に登場する用語で、守備側にとっては非常に厄介なエリアでもある。CBは中央を守りたい。SBは外側を警戒する。その間にできるスペースへ攻撃側が侵入すると、どちらが対応するのか判断が難しくなる。

 ネビルは映像を見返しながら、「日本は、チャンネルへのランニングをかなり上手くやる」と繰り返した。

「チャンネルへ上手く走り込む。そして、そこにボールが送られてくる。さらに攻撃の選手がファーポストへ入り込む。この時、シュートを打ったのは中村だ。一方の守備側はボールの落下地点を見失ってしまった」

 大外にいる堂安の位置取り、アンダーラップを仕掛ける渡辺のランニング、そして中村のゴール前への侵入。それぞれが連動していたからこそ、オランダ守備陣は判断を迷わされたのである。ネビルが称賛したのも、そうした連係プレーだった。

 ポステコグルーもまた、このプレーを高く評価した。

「ギャリーの言う通り、日本はチャンネルへのランニングが上手い。チャンネルやハーフスペースへ入り込む動きだ」

 そして、続けてこんな言葉を口にした。

「日本は分かっているんだよ。ただ単純にクロスボールを放り込んでも、オランダ代表のセンターバック、ファン・ダイクやファン・ヘッケ相手では勝てないことをね。彼らには高さがある」

 ファン・ダイクとファン・ヘッケは空中戦に強く、単純なクロス勝負では分が悪い。だから日本は高さで競り合うのではなく、その前の段階で守備ラインを動かし、スペースを攻略しようとしていた。
 
 前半には、同じ狙いが別の形でも見られた。

 45分、鎌田が中盤中央でボールを持った場面だ。上田綺世はいったん中盤へ下がるようなフェイントを見せる。すると次の瞬間、上田が一気にディフェンスラインの背後へ加速した。

 上田が走ったのも、CBのファン・ダイクと左SBの間だった。鎌田のスルーパスが通り、上田はシュートまで持ち込む。この場面についても、ポステコグルーは日本のプレーを称賛した。

「素晴らしいラン、そして、なんというパスだ。優れたプレーだよ。上田のフィニッシュさえ決まれば完璧だった」

 注目したいのは、ポステコグルーが「ランとパス」をセットで評価していることだ。味方の動きを理解し、そのタイミングに合わせてボールを出す。こうした連係があったからこそ、オランダ守備陣の背後を突くことができた。

 後半にも、アンダーラップから似たような場面があった。

 堂安が右サイドでボールを受けると再び、渡辺が内側のレーンから走り出す。狙ったのは、やはり相手CBとSBの間のスペース、つまりチャンネルだった。オランダはクロス前に対応したため決定機につながらなかったが、日本が同じ形を繰り返し狙っていたことは明らかだった。
 
 どこへ走るのか。誰がスペースを使うのか。どのタイミングでボールを出すのか──。この試合で英国の解説者たちが評価したのは、そうした共通理解が日本代表のチーム全体に浸透している点だった。

 オランダ戦で日本は二度、リードを許しながらも追いついた。その結果に目が向きがちだが、ネビルやポステコグルーが注目していたのは、その裏側にある組織的な崩しだった。チャンネルへのランニングは、その象徴とも言える。

 次戦のチュニジア戦では、相手がより深く構えてくる可能性もある。そうなれば、こうした細かな連係やスペース攻略はさらに重要になるだろう。相手の隙をつく攻撃、そして攻撃時にCBが前線へ加わる動きは、ポイントになってくるはずだ。

 英国の解説陣が称賛した日本の組織力。その真価が再び、試されることになる。

文●田嶋コウスケ

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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