日本対チュニジアの試合前、私はチュニジアの記者、そしてサッカー連盟の幹部と話をすることができた。
まずは、チュニジアのテレビ局のベテラン記者、ヴゥエドゥネ・マハムッド氏。
「チュニジアでは、日本戦こそが危機に瀕しているチュニジアを再生する鍵であるという見方が大きい。ただ私個人としては、日本戦で何が何でも勝とうと、何が何でもゴールを決めようという気持ちが大きくなるあまり、守備がおろそかになってしまうのではと心配している」
「(初戦のスウェーデン戦で)1-5という屈辱的な大敗を喫した今、日本戦はチュニジアサッカー史上最も重要な試合のひとつとなった。そんな重要な戦いにおいて、日本は考えうる限り最悪の相手だ」
また、私はFIFAの会議があったホテルでチュニジアサッカー連盟の複数幹部から話を聞くことができた。ただ、残念ながら名前を出すことはできない。現在大変デリケートな時期にあり、彼らは最初、私に話をすることも渋っていたが、匿名にするという約束で語ってくれた。
ひとり目はホテルや練習場をコーディネートしたり、セキュリティーなどを管轄する役職にある人物だ。
「新監督に経験豊かなエルベ・ルナールを迎えたのは、チームに新たな希望をもたらす唯一の解決策だった。これ以外の方法はなかったと思う。ルナールの1試合当たりの報酬は10万ドル(約1600万円)。決して安くはないが、選手にモチベーションを与えるには必要なことだった。混乱し、苛立っていた選手たちが新たなやる気に溢れている。ただしルナールはチュニジアで仕事をしたことがなく、選手のことも知らない。つまり新監督は希望でもあると同時に、アキレス腱でもある。この人事は大きな賭けだ。全ての鍵を握るのはルナールである」
この人物は、こんな話もしてくれた。
「ルナールと選手はまだ十分な話し合いができていない。そこで彼の側にはチームをよく知るコーチが2人付き、もうひとりルナールがフランスから呼び寄せた人物が相談役に付いている。この人物を呼ぶことがルナールの監督就任の条件だった」
また別の連盟幹部は、まさに日本代表を研究するスタッフ。日本チームをよく知り、新監督にその情報を伝えることが役割だという。
「日本はアジア最強のチームであり、新監督もそれを認めている。こんな重要な試合でそんな日本と対戦することは、本当に大きな挑戦だ。しかし、新体制になってから真っ先にオランダと対戦するよりは、日本と対戦する方がよかったと私は思う。なぜなら日本は“サッカー”をしてくれるからだ。つまりチュニジアにもプレーをさせてくれる。試合を破壊しようとはしない」
「日本はとてもいいチームで、優秀な選手が数多くいる。私は日本対オランダの試合をスタジアムで観戦したが、日本はオランダの高さに苦労していた。日本からゴールを奪うには、的確なクロスを上げることが肝心だ。中央の守備はよくカバーしているので突破は難しいが、それでもチュニジアは日本に勝つことができるし、次のラウンドに進むことも不可能ではない」
「チュニジアは死んではいない。対戦相手が日本というのは、勝利へのモチベーションを高めてくれる。チェスのように、ポーンを最適な場所に配することが大事だ。気温が高くなりそうだから、選手たちのエネルギーがある最初の30分がすべての鍵となるだろう」
文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当も務め、1998年と2002年のW杯ではブラジル代表の広報スタッフとして活躍。ジーコやカフー、ドゥンガらとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
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