もう真夏の外出は、根性で乗り切る時代ではないらしい。気象庁は今年、最高気温40度以上の日を「酷暑日」と新たに決めた。猛暑日を超える暑さが日常化したことで、服そのものが冷却機器になる流れも加速している。
これまでのファン付きウェアは「現場作業用のベスト」という印象が強かった。建設現場や配送、農作業では見慣れた光景だが、街中で着るには抵抗があったのだろう。犬の散歩や野球観戦に、作業着然としたベストを選ぶ勇気はなかなか出ない。
そこに登場したのが、はるやま商事の大きいサイズ専門店「フォーエル」が6月11日に発売した、2つの冷却ウェアだ。ファン付きの日常着と、ペルチェを組み合わせたハイブリッド型である。サイズは3Lと5Lのみという潔さも専門店らしい。汗をかきやすい体格の大きい男性にとって、Tシャツにファンを仕込む発想はシンプルで分かりやすい。
仕組みはというと、身頃の2つのファンが外気を取り込み、汗の気化熱で体を冷やすというもの。カラーはブラック、ベージュ、カーキの3色で、価格は税別1万7900円、素材はナイロン88%にポリウレタン12%。価格は普通のTシャツとは別物で、夏の外出ギアと見るべき商品だ。
上位モデルは「ペルチェ&ファン付ウェア(バッテリー付)」だ。首元のペルチェ素子とファンを組み合わせたハイブリッド仕様で、同社によると、環境温度30度でペルチェの表面温度は約21度低下し、ペルチェ2個とファン2個の同時使用でモバイルバッテリー約2時間45分の連続稼働が可能だとしている。サイズは3Lと5L、カラーはブラックのみで、価格は税別3万2900円だ。首元まで冷やす分、価格は装備らしいものになった。
使えるシーンは幅広く違和感なし
ファン付きウェアやペルチェベストは近年、広く使われており、使用感の傾向は良し悪しが分かれる。風が抜けるだけで体感が変わるという声が目立つ一方、静かな室内や電車内では動作音が気になるという指摘もある。
作業着型のベストは涼しいが、街中やスポーツ観戦、犬の散歩には着にくいという声はやはり根強い。ペルチェは触れた部分を冷やせる一方、排熱やバッテリー残量、重さという課題もある。両者の組み合わせは、互いの弱点を補う狙いといえよう。
Tシャツ型なら使えるシーンは広い。キャンプ、釣り、スポーツ観戦、洗車、庭仕事、犬の散歩、子供の部活の応援、花火大会の見物にも違和感なく着られる。ただし衝動買いできる価格ではないため、夏の装備として1着持つ、という発想で選ぶのが向いている。
暑さへの備えへの関心は社会全体で高まり、2025年6月には職場の熱中症対策強化に関する改正労働安全衛生規則が施行された。夏はもう我慢でやり過ごす季節ではなく、装備を選ぶようになったのだろう。フォーエルのファン付Tシャツは、現場の作業着に合った冷却ウェアが日常着に広がっていく流れを象徴する一着だ。今後は一般サイズ展開にも期待したい。
今年の夏、Tシャツを選ぶ基準は柄や色だけでなく「風が出るか、首元が冷えるか」に変わっていくかもしれない。
(ケン高田)

