広いアメリカをツーリングしようと思えば、自然と長い距離を走ることになる。しかし、大排気量でトルクのあるハーレーに見合うだけの耐久性があるチェーンは当時存在せず、おのずとこまめな調整が必要になり、とても煩わしいものだった。
こまめな調整が必要ないから
そこで採用されたのが「ベルトドライブ」だ。ベルトといっても単なるゴムではなく、NASAが開発したコグドベルトというもの。丈夫なケブラー繊維をシリコンラバーで挟み込んだ構造で、チェーンより寿命が長く、衝撃吸収性に優れている他、メインテナンスの必要がほとんどないとメリット尽くし。また、ベルトには排気量を前提とした安全基準の設定がなく、時代の流れで耐久性に見合わないチェーンをいつまでも採用するようなごまかしが通用しなくなったこともひとつの理由だ。

ベルトドライブは基本的にリアサスのストローク量が少ないハーレーには有効だが、ストローク量の多いモデルには向かない。というのも、ベルトはサスが沈むと“張る”ため、その時のための余裕、つまり「遊び」を多く作る必要がある。が、ベルトを緩めるとコマ飛びを誘発してしまうのだ。
「パンアメリカ」は何でチェーンドライブ!?

ハーレーダビッドソンの現行ラインアップの中でベルトドライブではなく、チェーンを採用しているモデルが存在するのをご存じだろうか!? オフロードを走ることを想定した「パンアメリカ」がそうで、これはリアサスのストローク量が多い分、遊びの量も多くとる必要があるから。チェーンならスプロケとの噛み込み量が深いため、ベルトのようなコマ飛びの心配がないのだ。

(出典/「CLUB HARLEY 2026年6月号」)