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「今のプレーでは上には勝てない」女子テニス期待の17歳、沢代榎音が模索する現在地と進むべき道<SMASH>

「今のプレーでは上には勝てない」女子テニス期待の17歳、沢代榎音が模索する現在地と進むべき道<SMASH>

「自分がどれくらいの地位にいるのか、わからない......」

 5月末に群馬県で開催された女子テニスのツアー下部大会「高崎国際オープン」。その1回戦で敗れた沢代榎音(かのん)は、1人、人気のない部屋で泣いていた。

 その前週に開催された「大東建託オープン富山大会week1」で、沢代は国際大会初優勝を手にしていた。プロも参戦する大会を17歳で制した事実は、客観的には大きな戦果に映る。ジュニアから一般に移行したばかりの若手は、大きな自信を得たかに思われた。

 だが当の本人は、「ぜんぜん、ノリノリになれてないです」と困惑気味に微笑む。優勝した大東建託オープンは、世界ランキングが得られる大会群の中では、最も下のカテゴリーの「ITF W15」。対して高崎国際オープンは、ITF(国際テニス連盟)公認大会群では最上位の「W100」。世界ランキング100~200位が参戦選手のボリューム層であり、グランドスラムなどの大舞台で活躍した顔も散見する。沢代は、複数のW100大会にもワイルドカード(主催者推薦枠)で参戦してきたが、まだ勝利は得られていない。

 W15や、その上のW35カテゴリーなら上位進出ができる。なのにW100になると、とたんに歯が立たなくなる。地図も羅針盤もまだ手元にない中で、「自分がどこにいるのかがわからない」——それが、彼女の現在地だ。
  沢代が現状を把握しあぐねている訳は、単純に結果だけに起因するのではない。大会に応じた対戦相手のレベルの違いを、肌で感じているからでもある。

「同じフルセットで2時間の試合でも、ジュニアとプロでは疲れ方が全然違う」と沢代は言う。単純な体力の問題か、あるいはプロ特有の会場を満たす緊張感も関係しているのか。

「フィジカルが足りないからなのか、外にも理由があるのか......。何が違うんだろうって思っています、いつも」

 ここでも彼女は、答えが見えず迷っていた。

 もっともテニス面での課題は、本人もわかっている。

 沢代の武器は、機動力と戦略性。ストローク戦の中で相手の弱点を突き、ミスを誘うのが彼女のテニスのベースだ。そのプレーでは、上位選手を相手にした時、突破口は開けない。そのことは、本人も気付いている。ただW15大会や同世代の選手が相手なら、今も勝てる。
 「W15の大会では、試合をしながらちょくちょく、自分が弱気になっていたり、緊張して思い切り打ててないなと感じていたんです。それでも、そこまで怖さを感じない。このままやっていても流れを持っていかれることはないかなと。でも上のレベルに行ったら、今のプレーでは絶対に勝てないんだろうなと思いながら、試合していたことがあったんです」

 その「今のプレーでは上には勝てない」との予感が現実になったのが、高崎国際オープン1回戦の清水綾乃との試合だろう。沢代は清水と過去2度対戦し、いずれも勝利。その時は「粘り強くボールを打ち返していたら、相手がミスしてくれた」という。

 ところが高崎での3度目の対戦では、「清水さんがあまり打ってこない」との印象を受けた。相手のボールが遅いと、得意のカウンターが生かせない。自らボールを打ち展開しなくてはと焦ると、ミスが増えた。過去2回の対戦とあまりに異なる展開に「なぜ!?」と自問自答を重ねるたびに、苛立ちも募っていく。スコアは0-6、3-6。
  清水は試合後に、「過去2戦は自分から打ってミスばかりだったので、少し球威を抑え、カウンターを封じるためにボールもやや中央に集めた」と言う。10年近いプロキャリアを持つ清水にしてみれば、若手に何度も負けるわけにはいかないとの意地もあっただろう。沢代が対峙しているのは、上位勢のプライドでもあった。

「富山での優勝はうれしかったけれど、早くW15レベルは抜け出したいという気持ちの方が大きい」と、沢代は断言する。ただ、今がその時なのかは、まだはっきりとわからない。

 その答えを探すためだろうか、沢代は今週開催の「大東建託オープン札幌大会week1」(W15)にも出場した(2回戦で敗退)。現在地を知るためには、対戦相手との距離を測り、一歩ずつ進んでいくしかない。彼女は地図を描きながら、進むべき道を探している最中だ。

取材・文●内田暁

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配信元: THE DIGEST

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