
アミーゴ、まあ座れよ――メキシコに来て、改めて実感。本来ワールドカップはこういう国でやるほうが、楽しいし、盛り上がる【W杯戦記】
日本対チュニジアの試合を取材するため、メキシコのモンテレイにやってきた。
ここモンテレイはさかのぼること15年前、2011年U-17ワールドカップで日本が3試合(グループステージ2試合とラウンド16)を戦った場所である。
3試合の結果は2勝1分け。日本はフランス、アルゼンチンと同居する厳しいグループステージを首位通過し、最終的にベスト8進出を果たしている。
メキシコのサッカーファンの目は厳しい。17歳以下の若い選手たちによる大会であろうと、つまらない試合をすれば、容赦なくブーイングが浴びせられた一方で、彼らを納得させることができれば、大声援で後押ししてもらえた。
「ハーポン、ハーポン!」
15年前のU-17日本代表が、がっちりとメキシコファンの心を掴むことができたのは、常に攻撃的なスタイルを崩さなかったからだ。
当時のメンバーである南野拓実が、怪我で今大会を登録外となってしまったのは残念だが、ここモンテレイは日本にとってゲンの良い場所と言えるのかもしれない。
この原稿はチュニジア戦を前に書いているため、その結果は分からないが、再びスタンドにハポン・コールが響くような戦いになってくれたら最高だ。
さて、アメリカからメキシコに移動してきて感じるのは、やはりと言うべきか、サッカーに対する熱量の違いだ。
チュニジア戦の前々日、グアダラハラでメキシコ対韓国の試合が行なわれていたが、試合開始に合わせてモンテレイの中心部に出てみると、どこを歩いていても試合実況の音声があたりから聞こえてきた。
しっかりとしたテレビを構えている店はもちろんのこと、ちょっとした屋台のような出店でも、店の人がスマホで試合を見ていたからだ。
それだけではない。街を歩く多くの人たちが、公式、非公式を問わず、メキシコ代表のユニホームを身につけていて、我が国の代表チームに対する関心は極めて高い。
しばらく街の様子を見て回ってから、大型ビジョンが設置されている中心部の公園に行ってみたが、画面が見える場所という場所は、まさに立錐の余地もないほどの人であふれかえっていた。
なかなかスコアが動かない膠着した試合展開とあって、ピンチも、チャンスも大歓声。その間にも、わずかな隙間に新たなファンが潜り込んでくる。
試合後の混乱を避けるべく、試合が終わる前にその場を離れることにしたのだが、歩いている途中、バイクの修理屋の店先にテレビを出し、店員なのか、近所の人たちなのか、4、5人が集まってビールを飲みながら、試合を観戦していた場に出くわした。
「おー、アミーゴ!」
空いている椅子に座るよう勧められ、結局、試合終了までそこで一緒にテレビ観戦をすることになった。
以来、昼間でもその修理屋の前を通ると、店員から声をかけられるようになっている。アメリカからメキシコにやってくると、率直に言って、不便なことも多い。だが、人はやさしいし、何よりみんなサッカーが好きだ。
今大会、モンテレイで行なわれる試合は、わずか4試合にすぎない。北中米3か国の共催だとは言うものの、実際は“ほぼアメリカ”で開かれている大会である。
しかし、本来ワールドカップはこういう国でやるほうが、楽しいし、盛り上がる。メキシコに来て、改めてそんなことを実感している。
取材・文●浅田真樹(スポーツライター)
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