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[本田泰人の眼]弾丸ミドル、絶妙なアシスト、ループヘッド。エースの覚醒、それこそがチュニジア戦の最大の収穫だ【W杯】
【W杯GS第2節】日本 4-0 チュニジア/6月20日/エスタディオ・モンテレイ
ようやく日本のエースが、その真価を示してくれた。
グループステージ第2節のチュニジア戦。上田綺世は1-0で迎えた31分に強烈なミドルシュートを叩き込み、待望のワールドカップ初ゴールを記録。69分には伊東純也のゴールをアシストし、83分には芸術的なループヘッドまで決めた。2ゴール・1アシスト。日本の4-0の快勝を象徴する大車輪の活躍だった。
ただ、元ディフェンダーの立場からあえて厳しく振り返るなら、この試合で日本が本格的なプレッシャーを受ける時間はほとんどなかった。
チュニジアのシュートはわずか2本。リスクを冒してでも点を奪いに来る迫力は感じられず、最後までスイッチが入らなかった。前半は激しく指示を飛ばしていたエルベ・ルナール監督も、後半に入るとベンチから聞こえてくる声は明らかに少なくなった。
内容的には、日本があと数点、取っていても不思議ではなかった。
初戦後に監督交代という荒療治に踏み切ったチュニジアに対し、日本は森保一監督のもとで8年間、積み上げてきたチームだ。その差が随所に表われた試合だったと言える。
悲願であるベスト8以上を目ざすのであれば、こうした相手にはしっかり圧倒し、確実に仕留めなければならない。むしろ、それくらいはやって当たり前だ。
チュニジア戦で私が最もシビれたのは、開始4分の鎌田大地が挙げた先制点と、チームの3点目だ。
どちらの場面にも、現代サッカーにおける「崩し」のエッセンスが凝縮されていた。
まず先制点。田中碧が高い位置へ入り込み、縦パスを受ける。守備側からすると、中盤の選手があの位置で強力なポスト役になると、どうしても中央を締めざるを得なくなる。
田中はそこで絶妙なタメを作りながら、左サイドのスペースへ正確なパスを供給した。
これを受けた中村敬斗の判断が素晴らしかった。
相手ディフェンダーは中村の得意なカットインを警戒し、中を閉めていた。しかし中村はその心理を見抜き、迷わず縦へ突破する。完璧なファーストタッチから一気に相手を置き去りにし、ゴール脇の危険地帯であるポケットへ侵入した。中村の仕掛けのバリエーションと自信は、今の日本代表における大きな武器になっている。
そして最後は、中村の折り返しを鎌田が鮮やかなヒールシュートで流し込んだ。田中のポストプレー、中村のポケット攻略、鎌田の高い技術。ノンストップで連動した、日本らしい美しいゴールだった。
そして3点目。2-0のまま、やや停滞感が漂い始めた時間帯だったが、日本はワンタッチの連係で得点した。
田中の鋭い縦パスを、上田がダイレクトでフリック。その瞬間に伊東が裏へ抜け出し、ゴールキーパーとの1対1を冷静に仕留めた。
縦パスからフリック、そして裏への飛び出し。守備側からすると、一瞬で最終ラインを突破されるため、対応する余裕がない。チュニジアにとっては、まさに悪夢のような崩しだった。
守備陣も最後まで集中を切らさず、完璧なクリーンシートを達成した。キーパーの鈴木彩艶はゴール前で抜群の安定感を見せ、冨安健洋、伊藤洋輝、板倉滉の3バックも非常に堅かった。
なかでも冨安の存在感は別格だった。対人守備、カバーリング、ビルドアップ。そのすべてで高いレベルを維持し続けていた。
伊藤も球際で激しく戦い抜き、板倉は遠藤航が不在のなかで最終ラインから効果的な縦パスを供給した。また、右ウイングバックの堂安律も攻守両面で献身的な働きを見せていた。
終盤には菅原由勢、鈴木淳之介、瀬古歩夢、鈴木唯人、後藤啓介が投入された。途中出場組にはもう少しインパクトが欲しかったけど、ゲームをしっかり締めくくった点は評価できる。
この試合のMVPは、文句なしで上田だ。
冒頭でも触れたけど、弾丸ミドルの先制ゴール、伊東のゴールを演出したアシスト、そしてループヘッド。決定力だけでなく、ポストプレーや周囲との連係面でも大きな成長を感じさせた。
エースの覚醒。それこそが、この試合最大の収穫だったと言える。
次戦の相手であるスウェーデンは、オランダに1-5で敗れたけど、侮れない相手だ。前線にはヴィクトル・ヨケレス、アレクサンデル・イサクという強力な2トップがいて、そこにヤシン・アヤリも絡んでくる。特にカウンターの破壊力は非常に高く、日本としては後ろの枚数を確保しながらリスク管理を徹底しなければならない。
一方で、守備組織そのものは決して攻略不可能な相手ではない。日本が自分たちの形を作れれば、十分に得点できるはずだ。
その鍵を握るのは鎌田だろう。
今の日本代表において、鎌田は攻撃の生命線と言っていい。相手がマンマーク気味に潰しにきた時に、どうフリーにするのか。あるいは鎌田が引きつけたスペースを誰が使うのか。そこは間違いなく勝負のポイントになる。
日本はこれで昨年10月のパラグアイ戦から9戦負けなし(7勝2分け)。遠藤の離脱というアクシデントを乗り越えながら、結果を積み重ねていることは評価に値するし、チーム全体の自信も間違いなく深まっているだろう。
チュニジア戦の4-0は評価できる。しかし、繰り返しになるけど、これくらいはやって当たり前だ。ベスト8以上を本気で目ざすのであれば、このレベルの相手には圧倒して勝たなければならない。
今回の勝利で勝点4となり、決勝トーナメント進出が見えてきた。でも、ラウンド32の相手を論じるつもりはない。ブラジルかモロッコか。どちらが戦いやすいか。そんな話をするのはまだ早い。
まずはスウェーデン戦だ。
相手は勝つために前へ出てくることが予想される。日本もチュニジア戦とは比べものにならないプレッシャーを受けるはずだ。そのなかで自分たちのサッカーを貫き、結果を出せるかどうか。
しかし今の日本は、簡単には崩れない高い組織力を持っている。試練を乗り越えるだけのポテンシャルがあるのも確かだ。
まずはスウェーデンを叩くこと。ブラジルかモロッコかの話は、それからだ。
▼チュニジア戦の採点
スタメン)
GK鈴木彩艶/6.5
DF伊藤洋輝/6.5
DF板倉 滉/6.5
DF冨安健洋/6.5
MF佐野海舟/7.0
MF鎌田大地/7.0
MF堂安 律/6.5
MF田中 碧 /6.5
MF中村敬斗/7.0
MF伊東純也/7.0
FW上田綺世/7.5
途中出場)
DF瀬古歩夢/6.0
DF菅原由勢/6.0
DF鈴木淳之介/6.0
MF鈴木唯人/6.0
FW後藤啓介/6.0
監督)
森保 一/6.5
【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。
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