
カイを主人公に描く宇宙世紀の物語。『機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのレポートより-』第1巻 作:ことぶきつかさ/原作:矢立肇、富野由悠季(KADOKAWA)
【画像4枚】うん確かに居たわ こちらが当時のジョブ・ジョンとオスカ・ダブリンです
終幕のあとも人生は続く…主役ではなかった彼らの「その後」
『機動戦士ガンダム』において、強襲揚陸艦「ホワイトベース(WB)」に乗り込んだ少年少女たちの多くは、「一年戦争」後も生き延びています。しかし、その後の人生がアニメ本編で描かれたのは、「アムロ・レイ」や「ブライト・ノア」、「ミライ・ヤシマ」や「ハヤト・コバヤシ」等ごく一部です。その他のクルーたちはカメオ出演にとどまるか、その後の足取りが不明瞭なままとなっています。
そうした空白を補完し、彼ら一人ひとりの人生を深く描き出しているのがスピンオフのコミック群です。意外な転身やキャラクター同士の有機的なつながりが描かれ、アニメ本編の世界観をさらに奥深いものにしています。
その中心人物といえるのが「カイ・シデン」です。カイは続編『機動戦士Zガンダム』では軍を離れ、フリーのジャーナリストに転身していました。地球連邦軍内の暴走エリート部隊「ティターンズ」の悪行を追う一方で、反ティターンズ組織「カラバ」に協力していたのです。
その延長から、マンガ「デイアフタートゥモロー」シリーズ(作:ことぶきつかさ/原作:矢立肇、富野由悠季)では主人公に抜てきされ、「宇宙世紀の裏側」を追う語り部として活躍します。各地を飛び回り、多くの人物を取材する立場にあることから、元WBクルーたちを物語へ再登場させ、戦後の生き様を伝える「ハブ(人脈の中心人物)」として機能しているのです。
なかでも注目を集めたのが、本編でもカイと深い関わりを持っていた「セイラ・マス」でしょう。セイラは『機動戦士ガンダムZZ』終盤で、「リィナ・アーシタ」を救った資産家として登場しましたが、『デイアフタートゥモロー』では戦災孤児の支援活動に取り組み、カイのジャーナリスト活動を支えるスポンサーだったことが描かれています。また、その傍らには成長したリィナの姿もあり、『ZZ』から穏やかな年月が流れたことを感じさせました。

『機動戦士ガンダム ピューリッツァー ―アムロ・レイは極光の彼方へ―』第1巻 漫画:才谷ウメタロウ/脚本:大脇千尋/原案:矢立肇、富野由悠季(KADOKAWA)
オペレーターや整備兵たちにも意外な「その後」が
さらにマンガ『機動戦士ガンダム ピューリッツァー ―アムロ・レイは極光の彼方へ―』(漫画:才谷ウメタロウ/脚本:大脇千尋/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)では、かつてWBで暮らしていた戦災孤児3人組のひとり、「キッカ」が主人公となります。大学生になったキッカは、「英雄ではないアムロ像」を描く伝記の執筆を決意し、カイの世話になり、彼の情報網や人脈を通じてセイラをはじめとする人々へたどり着いていくのでした。
この流れのなかでは、3人組のひとりだった「レツ」もさりげなく登場します。一方で、戦死した「カツ」の不在が改めて寂しさを感じさせる場面でもありました。
また、主役級とはほど遠かったクルーたちにも、意外なキャリアパスが用意されています。その代表例が「ジョブ・ジョン」でしょう。本編では影の薄い存在でしたが、数十年後を描く「機動戦士ガンダムF90」シリーズでは、海軍戦略研究所「サナリィ」に参加し、「ガンダムF90」開発を主導する幹部となっていました。
その縁から、WBの整備兵だった「オムル・ハング」にも光が当てられます。『デイアフタートゥモロー』では、オムルがジョブをサナリィへスカウトする場面が描かれており、ふたりとも「新たなガンダムの誕生」に関わる大出世を遂げているのです。
さらに意表を突いたのが、元WBオペレーターである「オスカ・ダブリン」の再登場です。『ピューリッツァー』では、「通常のザクの3倍」という印象的なセリフを残した彼の戦後の姿が描かれています。
オスカは『Z』時代にはカラバへ参加し、ティターンズ壊滅後は地球連邦軍情報局へ異動していました。ニュータイプ能力を恐れる連邦上層部によって厳重な監視下に置かれていたアムロやブライトを陰から支えるため、あえて軍内部に身を置いていたのです。
「ガンダム」シリーズでは、あくまで映像作品が正史とされる見方が一般的といえます。しかし、数々のスピンオフマンガで描かれたサブキャラクターたちの人生は、一人ひとりに確かな物語があることを感じさせます。そこには「雑草という草はない」と言うべき、生きることの重みが描かれているのです。
