
今の日本代表にとって最大の朗報。4年前の悔しさから這い上がったエース、積み上げた18ゴール。大舞台で快挙達成【W杯】
【W杯GS第2節】日本 4-0 チュニジア/6月20日/エスタディオ・モンテレイ
日本代表が過去7回のワールドカップで、一度しか勝っていなかったグループステージ第2戦。北中米大会を戦っているチームは“鬼門”を突破するべく、現地6月20日のチュニジア戦に挑んだ。
開始4分に鎌田大地が先制点を奪取。31分には上田綺世が追加点をマークし、前半を2-0で終える。
後半には伊東純也と上田がネットを揺らし、終わってみれば4-0の圧勝。同日に、一足先に行なわれたオランダ対スウェーデンが、オランダの5-1勝利という結果に終わったことで、日本は得失点差で下回りグループ2位につける形になったが、ラウンド32進出に大きく前進したのは紛れもない事実と言っていい。
そしてこの試合で日本のW杯史上、初の1試合2ゴールという偉業を達成した上田は、「それはあんまり考えてなかったです」と笑みをのぞかせつつ、「チームに必要なだけ点を取ることを求められているのはフォワードの本質。今日は、少しは仕事ができたんじゃないかと思います」と胸を張った。
その堂々たる立ち振る舞いは、2022年カタールW杯の時とはまったく違っていた。
思い起こせば4年前。上田は第2戦・コスタリカ戦で、1トップで先発。W杯初出場を飾ったが、仕事らしい仕事ができずに前半のみで交代。チームも0-1で敗れ、力不足を痛感したのだ。
「僕は(カタールW杯では)コスタリカ戦しか出れていないし、あれしかできなかった。欧州5大リーグのトップトップでやってる(三笘)薫君や(堂安)律とか同世代の選手たちとの差を感じました。『ドイツとかスペインの試合に出たら、コスタリカ戦でできなかった自分は何ができたんだろう』という思いもあった」と、2か月後の2023年2月に本音を吐露。ゼロから這い上がっていかなければいけないという危機感を募らせたのだ。
そこから上田は所属クラブで得点を量産していく。当時プレーしていたサークル・ブルージュでは2022-23シーズンに22ゴールをマーク。1年でオランダの名門フェイエノールトへステップアップすると、3年目の25-26シーズンは25点を奪い、欧州主要リーグ初の日本人得点王に輝いたのだ。
日本代表においては、2019年コパ・アメリカから4年間は足踏み状態が続いたが、23年6月のエルサルバドル戦で待望の代表初ゴールをゲット。そこから第二次森保ジャパンの3年半で、28試合出場18ゴールを記録。多彩なパターンからゴールを奪えるトップストライカーへと飛躍を遂げたのである。
「(フェイエノールトでの)今シーズンが『良い結果』だと周りに言われたとしても、自分が4年前に感じた悔しさは、同じ場所でしか張らせない。『自分自身がチームを勝たせられない』ということに悔しさもありつつ、ここまで来たので、この試合では少しは貢献できたんじゃないかと思います」と、本人もW杯スコアラーの仲間入りができた安堵感を口にする。“日本の真のエースFW”と認められる存在価値を示したのではないか。
実際、チュニジア戦の2つのゴールも、点取り屋の非凡な能力が凝縮されていた。1点目は、「正直、自分で打つことは決めていた」と覚悟を持って蹴り込んだミドルだった。板倉滉の縦パスを受けた時、伊東がフリーで裏抜けしたのだが、「純也君をおとりにさせてもらいました」と、良い意味でエゴイストになり切って、右足を振り抜いたのだ。
そして2点目は、佐野海舟が右ポケットを取る動きから浮き球のクロスを上げ、滞空時間の長いヘッドで仕留めた形だった。
「チームとしてニアゾーンをいろんな選手が突き、相手をかく乱させていくことでズレを生んで、ゴール前でスペースを作るのは戦術的にも練習していた。海舟から良いボールが来たので、ジャンプのタイミングもうまく噛み合いました」と、上田は“してやったり”の表情を浮かべた。
上田はゴールへの道筋を自分なりにイメージし、動き方を徹底的に分析し、それを具現化することで確実に結果を残してきた。それは以前と比べて格段にブラッシュアップされている。
上田の進化はポストプレーや守備のハードワークなど様々な要素があるが、特にフィニッシュに関しては、自分が思い描いたことを形にできる精度や鋭さが飛躍的に向上したと言っていい。それがW杯で1試合2ゴールという目に見える数字につながったのだろう。
ご存じの通り、日本のW杯最多得点者は、3大会で4ゴールの本田圭佑だが、今の上田なら、その数字を超えていきそうな予感もある。
絶対的エースがチームを勝たせるゴールを決め続けてくれれば、日本はまだ見ぬベスト8はもちろんのこと、本当にその先まで辿り着くかもしれない。
上田綺世の覚醒は、今の日本代表にとって最大の朗報と言えるはずだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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