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オオカミの群れが「森の王・バイソンの子」を襲撃ーー怒れる成獣らが返り討ちに

オオカミの群れが「森の王・バイソンの子」を襲撃ーー怒れる成獣らが返り討ちに

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ヨーロッパの原生林には、長く「森の王(the king of the forest)」と呼ばれてきた動物がいます。

それが、ヨーロッパ最大級の陸上哺乳類であるヨーロッパバイソンです。

巨大な体と分厚い首、群れを守る力強さから、この動物は人間以外にはほとんど捕食されない「非被食種」と考えられてきました。

しかし最近、ポーランドのビャウォヴィエジャ原生林で、そんな“森の王”にオオカミの群れが襲いかかる、きわめて珍しい映像が記録されました。

しかも標的になったのは、生まれたばかりの子牛です。

この映像は、ヨーロッパバイソンとオオカミの関係を見直す重要な手がかりになるかもしれません。

研究の詳細はポーランド科学アカデミー(PAN)により、2026年5月29日付で学術誌『Ecology and Evolution』に掲載されました。

※ 実際の襲撃映像は記事内に掲載してあります。

目次

  • 「森の王」は本当に襲われないのか?
  • オオカミのバイソン襲撃を記録!しかし、その後…

「森の王」は本当に襲われないのか?

ヨーロッパバイソンは、かつてヨーロッパ各地に広く分布していましたが、狩猟や生息地の減少によって数を減らし、1919年には野生個体が絶滅しました。

その後、飼育下に残された個体をもとに再導入が進められ、1952年にはビャウォヴィエジャ原生林にも戻されました。

現在、この森はヨーロッパバイソンの重要な生息地の1つです。

ヨーロッパバイソン/ Credit: ja.wikipedia

一方で、ヨーロッパバイソンはあまりにも大きく強いため、現代の生態学ではしばしば「オオカミの主な獲物ではない」と扱われてきました。

オオカミにとって、ノロジカ、アカシカ、イノシシのような動物のほうが、ずっと捕らえやすい獲物だからです。

しかし歴史資料をたどると、話は少し違って見えます。

19世紀のビャウォヴィエジャ原生林では、オオカミによるバイソンの捕殺記録が残されており、1840年代には年平均で約8頭のバイソンが殺されていたとされています。

つまり、ヨーロッパバイソンは「絶対に襲われない動物」ではなかった可能性があります。

ただし、現代の森でオオカミがバイソンを襲う場面は、ほとんど記録されてきませんでした。

そこで重要になるのが、今回カメラトラップに残された映像です。

この映像は、バイソンが今でもオオカミの潜在的な獲物になりうることを、直接示す貴重な記録だったのです。

オオカミのバイソン襲撃を記録!しかし、その後…

記録が撮影されたのは、2025年9月15日の朝でした。

カメラトラップには、7頭のオオカミが11頭のヨーロッパバイソンの群れに接近する様子が映っていました。

群れの中には成体のメスやオス、若い個体に加えて、生まれたばかりの子牛が含まれていました。

オオカミたちが狙ったのは、この最も弱い子牛です。

最初に数頭のオオカミが画面に現れ、それを追うように成体のメスバイソンたちが走りました。

しかしこの動きによって、子牛が一時的に群れから離れ、無防備な状態になってしまいます。

するとオオカミたちは子牛を取り囲み、首に噛みつき、引きずって連れ去ろうとしました。

まさに、巨大なバイソンの群れの中で生じた一瞬の隙を突いた攻撃です。

ところが、ここで終わりではありませんでした。

2頭の成体メスがすぐに戻り、オオカミを追い払ったのです。

その後、オオカミは再び子牛を捕らえようとしましたが、今度は成体バイソンたちが角を向けて突進し、群れ全体で子牛を守るような動きを見せました。

実際の映像がこちら。

結果として、映像には直接の捕殺は記録されていません。

つまり、今回確認されたのは「捕食成功」ではなく「捕食未遂」です。

それでも研究者たちは、この観察が重要だと考えています。

なぜなら、ヨーロッパバイソンは完全な非被食種ではなく、特に子牛のような弱い個体はオオカミの標的になりうると示されたからです。

さらに、もしこうした捕食の試みがこれまで考えられていたより頻繁に起きているなら、オオカミはバイソンの個体数を自然に調整する小さな役割を果たしている可能性もあります。

もちろん、これだけで「オオカミがバイソンの個体数を大きく左右している」とは言えません。

今回の研究は、あくまで1回の映像記録に基づく観察報告です。

しかし、森の中で起きたこの短い攻防は、巨大草食獣と大型捕食者の関係が、私たちの想像以上に複雑であることを教えてくれます。

「森の王」と呼ばれるバイソンであっても、完全に安全な存在ではありません。

そしてその一方で、群れで子を守る成獣たちの行動は、王の名にふさわしい力強さを見せつけるものだったのです。

参考文献

Watch bison herd defend a newborn calf from wolf attack in a primeval Polish forest
https://www.livescience.com/animals/land-mammals/watch-bison-herd-defend-a-newborn-calf-from-wolf-attack-in-a-primeval-polish-forest

元論文

The King in the Crosshairs: Evidence of a Predation Attempt on European Bison by Wolves
https://doi.org/10.1002/ece3.73752

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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