
血液型と聞くと、日本では性格診断を思い浮かべるかもしれません。
しかし医学の世界では、血液型はもっと現実的な意味を持っています。
赤血球の表面にある抗原やタンパク質の違いは、輸血の適合性だけでなく、病気へのかかりやすさとも関係している可能性があるからです。
では、血液型によって糖尿病のリスクも変わるのでしょうか。
中国医科大学附属盛京医院の先行研究は、ABO式血液型およびRh式血液型とさまざまな健康リスクの関連を調べた既存研究をまとめ直し、その信頼性を検証。
その結果、B型の血液型を持つ人は、それ以外の人に比べて2型糖尿病のリスクがやや高い可能性が示されたのです。
研究の詳細は2024年5月20日付で医学誌『BMC Medicine』に掲載されています。
目次
- 血液型と病気の関連性
- 最高ランクの証拠が残ったのは「B型と2型糖尿病」だけだった
血液型と病気の関連性
人間の血液型は、赤血球の表面にある「抗原」の違いによって分類されます。
A型にはA抗原、B型にはB抗原、AB型にはその両方があり、O型にはA抗原もB抗原もありません。
さらに、Rh因子というタンパク質の有無によって、血液型は陽性または陰性に分けられます。
こうした違いは、輸血や妊娠時の血液適合性に重要ですが、近年では病気のリスクとも関連する可能性が指摘されてきました。
ただし、これまでの研究では「A型はこの病気に多い」「O型はこの病気に少ない」といった報告が数多くある一方で、結果が一貫しないものも少なくありませんでした。
そこで研究チームは2024年に、個別の研究ではなく、過去に発表されたメタ解析付きの系統的レビューをさらにまとめる調査を実施。
チームは、2024年2月16日までに公開された文献をデータベースから検索し、最終的に51本の系統的レビューとメタ解析を解析対象にしました。
そこには、がん、感染症、心血管疾患、口腔疾患、妊娠関連、代謝疾患など、合計270件の血液型と健康アウトカムの関連が含まれていました。
そしてチームは、それぞれの関連について、結果の一貫性、研究規模、統計的な強さ、小規模研究による過大評価の可能性、肯定的な結果が不自然に多すぎないかなどを厳しく点検しました。
最高ランクの証拠が残ったのは「B型と2型糖尿病」だけだった
その結果、270件の関連のうち統計的に有意だったものは89件ありました。
しかし、最も高い証拠ランクである「説得力のある証拠」に到達したのは、B型血液型と2型糖尿病リスクの関連だけでした。
具体的には、B型の人は非B型の人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが高かったのです。
簡単に言えば、B型ではない人と比べて、相対的に約28%高い関連が見られました。
ここで重要なのは、この結果を「B型だから糖尿病になる」と受け取ってはいけない点です。
この研究が示したのは、血液型と2型糖尿病の間に統計的な関連があるということであり、血液型が糖尿病を直接引き起こすと証明したわけではありません。
また、28%という数字も、食生活、運動不足、肥満、年齢、家族歴といった主要なリスク要因に比べれば、かなり小さな要素です。
実際、2型糖尿病のリスクを考えるうえでは、体重管理、食事内容、身体活動、睡眠、喫煙などの生活習慣のほうがはるかに大きな意味を持ちます。
つまりこの研究は、「B型の人は心配しなければならない」という話ではありません。
むしろ、血液型という変えられない体質的要因も、病気のリスクを理解するうえで補助的な手がかりになる可能性がある、という結果です。
チームは、なぜB型と2型糖尿病が関連するのかについては、この研究では直接検証していません。
近年では、血液型と腸内細菌叢の違いが代謝に影響する可能性も指摘されていますが、現時点ではまだ仮説の段階です。
そのため今後は、性別、地域、食生活、遺伝的背景などをより丁寧に調整した大規模研究や、メカニズムを調べる研究が必要になります。
この研究は、血液型が病気の運命を決めると示したものではありません。
しかし、これまで雑多に語られてきた「血液型と病気」の関係を厳しくふるいにかけた結果、B型と2型糖尿病の関連だけが最も強い証拠として残った点に大きな意味があります。
参考文献
One Blood Type Appears to Carry Higher Risk of Type 2 Diabetes
https://www.sciencealert.com/one-blood-type-appears-to-carry-higher-risk-of-type-2-diabetes
元論文
ABO and Rhesus blood groups and multiple health outcomes: an umbrella review of systematic reviews with meta-analyses of observational studies
https://doi.org/10.1186/s12916-024-03423-x
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

