最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
アリを操るゾンビ菌にさらに寄生する「新種の細菌」を発見

アリを操るゾンビ菌にさらに寄生する「新種の細菌」を発見

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

世界には、アリに寄生してゾンビのように操ってしまう恐ろしい菌類が存在します。

しかし今回、マレーシア・サバ大学(Universiti Malaysia Sabah)の最新研究により、さらにその上をいく寄生細菌がいることが明らかになりました。

研究チームは、ボルネオ島・サバ州のダナムバレー保全地域で採集されたアリの標本から、新種の菌類「プレウロコルディセプス・コルヌシンネマタ(Pleurocordyceps cornusynnemata)」を発見し、新たに記載。

そして、この新種細菌は、アリに寄生するゾンビ菌にさらに寄生して餌食にしていたのです。

研究成果は2026年4月9日付で学術誌『Phytotaxa』に掲載されています。

目次

  • アリを操るゾンビ菌に、さらに寄生する細菌
  • 角のような形をした新種、ボルネオの森で発見

アリを操るゾンビ菌に、さらに寄生する細菌

「ゾンビ菌」と呼ばれる菌類の代表例は「オフィオコルディセプス属(Ophiocordyceps)」の一部です。

この菌はアリなどの昆虫に感染し、宿主の行動を操作し、自在に変化させます。

感染したアリは通常の行動を離れ、菌にとって胞子を広げやすい場所へ移動し、葉や枝に噛みついたまま死んでいきます。

その後、菌はアリの体から柄のような構造を伸ばし、胞子をまき散らします。

まるでアリが菌に操られているように見えるため、「ゾンビ菌」と呼ばれているのです。

ゾンビ菌に感染してゾンビ化したアリ/ Credit: en.wikipedia

ただし、これは映画のように脳を完全に乗っ取るという意味ではありません。

近年の研究では、菌は神経系や筋肉、生理状態に影響し、宿主の行動を変えている可能性が高いと考えられています。

今回見つかった新種細菌(プレウロコルディセプス・コルヌシンネマタ」は、このゾンビ菌そのものではありません。

この新種は、すでにゾンビ菌に感染しているアリの体内で、増殖中のゾンビ菌の組織に入り込み、それを栄養源として利用すると考えられています。

つまり、関係を整理すると、まずアリがゾンビ菌に寄生され、そのゾンビ菌がさらに新種細菌に寄生されるという二重構造です。

これを踏まえて、チームはこの菌を「重複寄生菌(=寄生者に寄生する菌)」と呼ぶ理由はここにあります。

角のような形をした新種、ボルネオの森で発見

新種の大きな特徴は、名前の由来にもなった、はっきりした角のような構造です。

プレウロコルディセプス・コルヌシンネマタ(Pleurocordyceps cornusynnemata)の「コルヌ(cornu)」は角を意味し、「シンネマタ(synnemata)」は菌糸が束になって伸びる構造を指します。

この特徴的な姿により、既知のプレウロコルディセプス属の種とは区別されました。

【新種細菌の実際の画像がこちら】

またチームは、見た目だけでなくDNAの情報からも、この菌が新種であることを確かめています。

さらに研究者たちは、こうした菌類が将来的に抗菌薬の開発や、農業害虫を抑える生物的防除に役立つ可能性にも触れています。

ただし、今回の論文で薬効や害虫防除効果が実証されたわけではありません。

あくまで現時点で明らかになったのは、新種の分類学的な発見と、菌類同士の複雑な寄生関係です。

それでも、アリを操るゾンビ菌に、さらに別の菌が寄生するという事実は、自然界の関係が私たちの想像以上に入り組んでいることを教えてくれます。

【新種細菌が重複寄生したアリの画像がこちら。苦手な方は閲覧にご注意ください】

自然界には「操る者を操る者」がいる

ゾンビ菌は、昆虫を操る恐ろしい存在として知られてきました。

しかし今回の発見は、そのゾンビ菌でさえ、別の菌に利用される立場になりうることを示しています。

森の中では、捕食者と獲物だけでなく、寄生者とその寄生者が複雑なネットワークを作っています。

ボルネオの熱帯雨林で見つかった小さな菌類は、自然界には「操る者をさらに利用する者」が存在することを、静かに物語っているのです。

参考文献

Scientists discover ‘hyperparasite’ in Malaysia Borneo jungle
https://phys.org/news/2026-06-scientists-hyperparasite-malaysia-borneo-jungle.html

元論文

Taxonomy and phylogeny of Pleurocordyceps (Polycephalomycetaceae, Hypocreales) associated with ants and cicadas from Malaysia, including a new species and new records
https://doi.org/10.11646/phytotaxa.750.4.1

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

提供元

プロフィール画像

ナゾロジー

ナゾロジーはkusuguru株式会社が運営する科学情報サイトです。読者をワクワクさせ、科学好きな人を増やすことを理念に運営しています。 現在、世界はたくさんの便利なテクノロジーによって支えられています。しかし、その背景にある科学の原理や法則を知る機会はあまりありません。 身近に潜む科学現象からちょっと難しい最先端の研究まで、その原理や面白さを分かりやすく伝えられるようにニュースを発信していきます。

あなたにおすすめ