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「GLEATするって何なのか、まだ分かってない」T-Hawkが団体再定義へ挑む理由

「GLEATするって何なのか、まだ分かってない」T-Hawkが団体再定義へ挑む理由

GLEATは2020年設立、プレ旗揚げ戦を経て2021年7月に正式に旗揚げした新興プロレス団体だ。7月1日には5周年記念のビッグマッチをSGCホール有明で開催する。

 運営会社のリデット・エンターテイメントは広告代理店として成功し、かつては長州力のプロデュース興行などを手掛けていた。プロレスリング・ノアの親会社だったこともある。

 丸藤正道らノア勢の参戦も話題になっている7.1有明大会。シングル王座G-REXをかけたタイトルマッチでは、王者エル・リンダマンにT-Hawkが挑戦する。T-Hawkはトーナメント3試合を勝ち上がっての挑戦権獲得。リンダマンとはデビューしたドラゴンゲートから一緒で、T-Hawkが先輩になる。「アイツ(リンダマン)が18歳の頃からの付き合い」で、ことのほか可愛がってきたし、厳しく接してもきた。

 同門対決であり“兄弟対決”といった趣もある王座戦は、GLEATの中でも鉄板と言える顔合わせだ。T-Hawkも元G-REX王者であり、ドラゴンゲート、DDT、WRESTLE-1(W-1)、全日本プロレスでもベルトを巻いてきた。W-1ではシングル王者になり、全日本での宮原健斗との三冠戦も記憶に残る激闘だった。

 リンダマンとの一戦は、団体の大一番でベルトをかけるにふさわしい。しかしT-Hawkは、試合を前に「自分たちが変わらなければ」と言う。

 田中稔、鈴木鼓太郎といったベテラン勢も含め実力のある選手たちが集まっているGLEATだが、まだ集客面で成功したとは言えない。今回のような大舞台は「選手が連れていくんじゃなく、会社に連れて行ってもらってる、夢を見させてもらってる状態」だとT-Hawk。

 リンダマンとのタイトル戦も、「今まで通りにやれば60点から80点の試合にはなるでしょうね。赤点にはならない、合格点は取れる。でもそれでいいのか、と」。
 
 ドラゴンゲート退団後、CIMA、T-Hawk、リンダマンを中心とするユニット「#STRONGHEARTS」で各団体を席巻。自分たちのプロレスに絶対的な自信を持っていた。激しく、スピーディで華やかな、大技を多用するプロレスだ。このスタイルがベストであり、それをやらせたら自分たちがトップだという自負があった。

 そんな気持ちが変わり始めたのは2年ほど前だった。

「自分にはボム系、ドライバー系のフィニッシュ技があって、そこにどう持っていくかが勝負だったんですよ。フィニッシュから逆算するスタイルですよね。でもそればっかり考えてると表現の幅が狭くなっちゃうなって」

 30代、ケガもあるから昔と同じようには動けない。野球にたとえるなら「配球を変えました」。80点の技を5つ、6つ持っているより、120点の技が一つあればいいと考えるようになったという。

「引き算で試合をするようになりましたね」

 トーナメント1回戦は田村ハヤトにエビ固めで勝利。唐突な丸め込みに見えたが、実は鮮やかな両足タックルでテイクダウンし、相手を死に体にしていた。準決勝で河上隆一に勝利した技は下からの腕ひしぎ十字固め。石田凱士との決勝戦でフィニッシュとなったのは、以前から得意としてきた逆水平チョップである。T-Hawkにとっての“120点の技”だ。

 チョップでのフィニッシュは現代のプロレスではレア中のレアだろう。しかしチョップもそこからの抑え込みもまさに渾身。トーナメント決勝を制するだけの説得力があった。
  6月20日に行なわれたタッグマッチ、リンダマンとの前哨戦も丸め込みで勝利。しかも試合の大半をチョップと張り手で構成していた。“技らしい技”はほんの数発といったところ。それでもテンポがよく気迫がこもっているから地味な印象はないし飽きることもない。

 2年ほど前からはブラジリアン柔術を学んでいる。準決勝で見せた下からの十字はもちろん、決勝ではバックを取り、石田の腹の下にヒザを差し入れることで身動きを封じてロープエスケープに持ち込んでいる。試合の隠れた“名場面”だった。
 
 ディテールをおろそかにしないから、意外性のあるフィニッシュに説得力が生まれる。細かい技術については「そこまでお客さんに伝わらなくても構わない」と言うが「切り抜き動画で見た技をパクって使うことだってできる時代だからこそ、自分は嘘のない、積み上げてきたものを見せたい」とも。

 必要最低限の要素だけで試合を作り出す“プロレス・ミニマリスト”が今のT-Hawkだ。DDTで活躍する青木真也の影響も大きい。昨年の青木とのシングルマッチはチョップ一本で勝負。その手応えが決勝戦のフィニッシュにつながっている。

 これまでの“激しく派手なプロレス”のエッセンスも残しつつ、彼は“いい試合”、“面白いプロレス”について、既成概念に捉われずに練り直す作業をしているのだ。

「そこはめちゃくちゃ考えるし、だからなのか今、プロレスが凄く楽しいですね。ワクワクします。もともと何についても“これって本当に正解なのか?”と考えるタイプなんですよ」

 ベースには反骨心がある。名門・駒大苫小牧高校野球部では甲子園に行ったが補欠。ドラゴンゲートでは同期が全員やめ、1人だけで先輩と練習して潰される毎日だった。上から押さえつけてくる先輩にも、下から伸びてくる後輩にも負けたくない。「ナメんじゃねえぞ」という気持ちでやってきた。反骨心とはつまり、現状に疑問を持ち続けることだ。

 GLEATという団体そのものも再定義しようとしている。旗揚げ時からさまざまな面で“支柱”だったCIMAは昨年、退団。CIMAは「疾走感のあるプロレス」、「スタイリッシュなプロレス」を掲げてきたが、それだけでなくてもいいとT-Hawk。

「ベルトを獲ったら、いろんなタイプの試合をしてベルトに“旅”をさせたいですね」

 いい試合とは一つのパターンに限らない。それをベルトの歴史に刻み込みたい。団体のスローガン、大会のエンディングで使われる決め台詞は「GLEATしようぜ!」。だがT-Hawkは使わない。「GLEATするっていうのがどういうことなのか、まだ分かってない。探してる最中」だからだ。GLEATとは何か。それを考えることもテーマになる。
  これまでのGLEATには、完成されたエンタメを見せる舞台というイメージがあった。T-Hawkはそれを“GLEATのプロレスを作り上げていくドキュメント”にしようとしている。

「僕のファイトスタイルもそうですけど、完成するまで時間はかかるでしょうね。浸透するのにも時間がかかる。最短距離ってないんですよ。でも、みんなでやればできると思う。これまでのチャンピオンって“俺がGLEATを引っ張る”というタイプが多かった。以前の僕もそう。今のリンダマンもそうです。でも団体なんて1人で引っ張れるもんじゃない。それじゃ苦しくなるだけです。全部1人でなんとかしようとしているリンダマンを見ると“俺たちもいるだろ”と言いたくなる」

 
 自分自身、「ナメられたくない」と1人で突っ張ってきた。しかし36歳になって思うのは「次の世代につなげること。恩返しじゃないですけど、プロレスに“返す”フェイズになってるなと」。GLEATをどう作り、プロレスに何を残せるか。リンダマンとのタイトルマッチは、今現在のT-Hawkの思考、思想を表現する場でもある。

「たぶん過去のT-Hawk対リンダマンとは違う試合になるでしょうね」

 それは“いかに自分のフィニッシュ技にもっていくか”の闘いではなく“いつ、どんな形で試合が終わるか分からないプロレス”だ。

「それでも、お客さんを満足して帰す自信はありますよ。ファイトスタイルが変わっても、そこはブレないですね。俺はお客さんの顔色をうかがうような試合はしないですけど、必ず気持ちよく帰ってもらいます」

 時には観客動員についても悔しさを隠さない。歯に衣着せぬ言葉とミニマルなプロレス。“リアリズム”を磨き直して、T-HawkはGLEATという団体の魅力を再構築しようとしているのだ。

取材・文●橋本宗洋

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配信元: THE DIGEST

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