
人間の声は、どこまで大きくできるのでしょうか。
豪州キャンベラに住む男性、ジョセフ・マクグレイル=ベイトアップ氏は、たった一語の「now(今)」で、まるでジェットエンジンのような音量をたたき出しました。
その記録は122.4デシベルです。
これはチェーンソーやロックコンサート、近距離の救急車のサイレン、またはジェットエンジンにも匹敵するレベルです。
ギネス世界記録はこの声を「個人による最も大きな声(男性)」として認定しました。
ただし、人間の声としてこれより大きな記録が存在しないわけではありません。
2000年には英国のジル・ドレイク氏が129dBの悲鳴を記録しています。
しかしこれは「Scream(悲鳴・絶叫)」の記録であり、今回の「Shout(言葉として発した大声)」とは別カテゴリーだと思われます。
目次
- 幼少期は「静かな子供」、世界一大きな「大声の男性」に
- 大声でギネス記録を更新
幼少期は「静かな子供」、世界一大きな「大声の男性」に
マクグレイル=ベイトアップ氏は、キャンベラとクイーンビアンの公式タウン・クライヤー、つまり町の布告人をしています。
タウン・クライヤーとは、昔ながらの衣装をまとい、人々の前で大きな声で告知を行う役割です。
彼は2017年にキャンベラの公式タウン・クライヤーに任命され、地域イベントや学校のバザー、カーショーなどで声を張り上げてきました。
ときにはスポーツカーのエンジン音に負けないように叫ぶ必要もあるといいます。
しかし、彼はもともと大声の子どもだったわけではありません。
本人によると、子どものころはとても内気で、大きな声を出すタイプではありませんでした。
変化のきっかけは、学校を出た後に演劇の世界へ入ったことです。
マイクを使わない劇場で声を届ける訓練を重ねるうちに、彼の声は少しずつ大きくなっていきました。
その後、2022年にはオーストラリアのタウン・クライヤー団体に加わり、競技としても大声を出すようになりました。
2024年には「Oyez, Oyez, Oyez」という布告前の呼びかけで98dBを記録し、団体の競技会で優勝しています。
実際の映像がこちら。視聴の際は音量にご注意ください。
その経験から、彼はギネス世界記録の「叫び声」分野に目を向けるようになりました。
大声でギネス記録を更新
今回、マクグレイル=ベイトアップ氏が破ったのは、1994年に北アイルランドの小学校教師アナリサ・フラナガン氏が記録した121.7dBです。
フラナガン氏は「quiet(静かに)」という言葉を叫び、長らく記録保持者となっていました。
マクグレイル=ベイトアップ氏は、娘と一緒に最も大きな音量を出せる言葉を探し、最終的に「now」に決めたといいます。
記録挑戦は5月2日、キャンベラのラジオスタジオで行われました。
現場には専門の音響技師と立会人が入り、記録ファイルはギネス世界記録へ送られました。
その結果、同氏は122.4dBというギネス記録を更新したのです。
【同氏が「now」と叫ぶ映像は、こちらの記事内でご覧いただけます】
122.4dBと121.7dBの差は、数字だけ見るとわずか0.7dBです。
しかしデシベルは対数で表されるため、音のエネルギーとしては単純な足し算ではありません。
この差は、音響エネルギーで見るとおよそ17%の更新にあたります。
ただし、この挑戦には代償もありました。
マクグレイル=ベイトアップ氏は、たった一語を記録するために7回も挑戦し、その後数日間は声がしわがれてしまったと話しています。
本人は「実際に練習する方法はない」と語っており、世界記録挑戦のためには声をその日に温存するしかなかったようです。
ちなみにマクグレイル=ベイトアップ氏が世界記録を破るのは、これが初めてではありません。
実は彼は過去に、まったく別のギネス記録を保持しており、2019年に、18メートル離れた40センチの的に10本の矢を射るスピード記録を樹立しています。
ただしその記録は、9か月後に7歳の少年によって大きく更新されました。
それでも彼は、記録が破られることを前向きに受け止めています。
「記録とは破られるためにあるものです」と彼は語っています。
静かな子どもだった男性が、演劇と町の布告を通じて声を鍛え、ついにはジェットエンジン級の“大声”で世界記録に届きました。
人間の声には、思っている以上の可能性が眠っているのかもしれません。
参考文献
The World Has A New Loudest Person, And He Can Yell At 122.4dB. That’s Even More Impressive When You Know Decibels Are Logarithmic.
https://www.iflscience.com/the-world-has-a-new-loudest-person-and-he-can-yell-at-1224db-thats-even-more-impressive-when-you-know-decibels-are-logarithmic-83895
Aussie town crier’s 122.4-decibel yell earns Guinness World Record
https://www.upi.com/Odd_News/2026/06/19/australia-Guinness-World-Records-loudest-yell/6111781882915/
Australian town crier has loudest shout in the world after growing up as the ‘quiet kid’
https://www.guinnessworldrecords.com/news/2026/6/australian-town-crier-has-loudest-shout-in-the-world-after-growing-up-as-the-quiet-kid
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

