ワールドカップ期間中は移籍市場が停滞すると言われるが、捲土重来を期すレアル・マドリーには当てはまらないようだ。大会そっちのけでマルク・ククレジャ、ベルナルド・シウバ、イブラヒマ・コナテの獲得を立て続けに発表。フロレンティーノ・ペレス会長が選挙期間中に公約として掲げたデンゼル・ドゥムフリースの加入も、正式発表を待つ段階に入っている。
4人に共通するのは、いずれも即戦力である点だ。2シーズン連続の無冠を受け、補強の必要性が高まるなか、スペイン紙『AS』のルイス・ニエト記者は次のように分析する。
「誰も望んでいなかった会長選が唯一もたらした成果は、クラブが移籍市場へより目を向ける契機となった点だ。対抗馬エンリケ・リケルメの出馬がフロレンティーノ・ペレスに火をつけ、さらにジョゼ・モウリーニョの就任が決定打となった。こうした要素が重なり、近年はフリーエージェントや成長途上の若手有望株に狙いを絞っていたマドリーは、補強戦略を大きく転換した」
同じく『AS』のマルコ・ルイス記者も、新指揮官の影響力の大きさを強調している。
「モウリーニョはマドリーという船の舵を力強く握った。13年ぶりの復帰に際して求めたのは2点だけだった。補強ポジションや獲得選手に関する発言権、そしてクラブ内における自身の権限の保証である。その影響はすでに随所に表われている。マドリーは新指揮官の意向に沿って補強方針を変更した。モウリーニョが望むのは、タイトル獲得へ直結するソリッドなチームだ。ドゥムフリース、コナテ、ククレジャはエリートレベルで実績を積み重ねてきた。B・シウバもロッカールームをまとめ、試合展開に応じてゲームをコントロールできる、指揮官好みの百戦錬磨の選手である」
なかでも注目を集めているのがククレジャの獲得だ。スペイン紙『EL PAÍS』によれば、クラブ内では昨夏アルバロ・カレーラスの呼び戻しに5000万ユーロを投じたばかりにもかかわらず、再び左サイドバック獲得に約5500万ユーロを投入する案に反対意見もあったという。しかし、モウリーニョの強い意向がそうした声を押し切り、交渉はわずか48時間でまとまった。
ククレジャだけではない。B・シウバはフランコ・マスタントゥオーノ、コナテはディーン・ハイセン、ドゥムフリースはトレント・アレクサンダー=アーノルドと、それぞれ昨夏加入した新戦力とポジションが重なる。攻撃的MF、CB、右サイドバックと競争が激化する状況について、ニエト記者は「マドリーはすでに補強済みのポジションにも新戦力を加えている。しかし、これは過去の失敗を認識し、改善へ動き出した証拠だ」と説明する。
モウリーニョの下で、マドリーは大きな変革期を迎えている。バルセロナの重鎮カルロス・レシャック氏は、その変化に警戒感を示す。
「今回の復帰で、モウリーニョには失うものより得るものの方が多い。マドリーのロッカールームに権威をもたらせる人物がいるとすれば、それは彼だ。周囲を巻き込む力に加え、2年間タイトルから遠ざかり、選手たちに向けられる視線が厳しくなっている現状を考えれば、その相乗効果によってマドリーはさらに危険なチームへと変貌するだろう」
もちろん補強はまだ終わっていない。現地ではセントラルMF獲得が最後のピースと見られており、ここにきてチェルシーのエンソ・フェルナンデス獲得案が再浮上している。『AS』によれば、リールのアイユーブ・ブアディやボルシア・ドルトムントのフェリックス・ヌメチャも候補に挙がるなか、モウリーニョが最も熱望しているのはアルゼンチン代表MFだという。ここでもクラブが最優先しているのは、やはり即戦力だ。
文●下村正幸
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