間もなく開幕する今季3つ目のテニス四大大会「ウインブルドン」(6月29日~7月12日/イギリス・ロンドン/芝コート)の男子シングルスに、ディフェンディングチャンピオンとして出場する世界ランキング1位のヤニック・シナー(イタリア/24歳)が、大会前のメディア対応で自身にとって同大会が持つ特別な意味を語った。
イタリア北部の小さな町で育ったシナーにとって、ウインブルドンはあまりにも遠い存在だったという。今でこそ世界王者として男子テニス界をけん引する立場にあるが、当時は自分がいつか“テニスの聖地”でプレーすることすら想像していなかった。
「正直に言うと、幼い頃は、自分が今のような立場にいるなんて想像もしなかったし、聖地ウインブルドンでプレーすることさえも考えられなかった。自分とはあまりにもかけ離れた舞台だと思っていたんだ」
だがそんな夢のような舞台に立つだけにとどまらず、昨年には男女を通じてイタリア人選手初となるシングルス優勝を経験。幼い頃に憧れていた偉大な選手たちと同じように、聖地の歴史に名を刻んだ。
その中でも、シナーにとって特に忘れられないのが、カルロス・アルカラス(スペイン/現2位)との決勝戦の“マッチポイント”だという。優勝を決めた瞬間、視線の先には家族とチーム、そして兄の姿があった。
「最後のポイントをどう決めたのかを今でも覚えている。その時、家族やチームのみんな、兄がボックス席にいるのが見えた。本当に信じられないような瞬間だった」
世界1位に上り詰め、すでに数々の大舞台を経験してきたシナーにとっても、ウインブルドンで味わった歓喜は格別なものだった。タイトルそのものの価値はもちろん、幼少期には遠い夢にしか見えなかった場所で、自身を支えてきた人々と喜びを分かち合えたことが、何よりも大きな意味を持っている。
再びあの瞬間を味わいたい――。シナーはそうした思いを隠さない一方で、一度味わった“かけがえのない経験”に対する満足感もうかがわせた。
「もちろん、あの感覚をまた味わいたいとは思う。でももし2度とその瞬間が訪れなくても、1度は経験できたわけだし、それを忘れることは一生ない」
聖地のコートでタイトル防衛に挑むシナー。果たして今年も“特別な瞬間”を迎えることはできるのか。
文●中村光佑
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