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『危険な相手』だったスウェーデン。日本が苦戦した明確な理由と覚悟を決めた森保監督の“らしい采配”【識者コラム】

『危険な相手』だったスウェーデン。日本が苦戦した明確な理由と覚悟を決めた森保監督の“らしい采配”【識者コラム】


 サッカーはナイーブな心理戦だ。

 グループFの本命オランダが最も怖れたのは、日本に番狂わせの白星を献上することだったはずだ。反面、直接対決を落とさなければ、得失点差では優位に立てると踏んだに違いない。オランダは初戦を無難に引き分けで終えると、2戦目以降は後顧の憂いなく自慢の攻撃力を爆発させた。

 一方、スウェーデンも同じように日本を警戒した。ただしオランダとは逆で、格下の立場に回っていた。FIFAランクは未勝利だった大陸予選が反映されていたし、何より直前のオランダ戦では5失点していた。

 そこでオランダとは別の方法でリスク回避を図るしかなかった。要するに、それはゲームを壊すことだった。両国を比べれば、日本が優位なのはMFの攻防や構成力なので、スウェーデンが活路を見出すなら前線に並べたアレクサンデル・イサク、ヴィクトル・ヨケレス、アントニー・エランガの3人にロングボールを届けるのが得策なのは自明の理だった。

 スウェーデンがMFを飛ばして蹴り込んで来れば、日本だけがボールを滑らせながら流麗に展開していくのは難しい。必然的に日本も高い集中度が不可欠な厳しい闘いを強いられることになった。

 それでも日本は守備の綻びを見せず、徐々に主導権を握っていく。田中碧は全方位で危険を察知して潰しにかかり、とりわけヨケレスへの対応は水際立っていた。また前田大然のシャドー起用も功を奏し、度重なるプレスバックで攻撃の芽を摘んでいく。チュニジア戦に続き、前線(堂安律)のフリックを挟んだハイテンポの崩しで先制するまでは理想的な展開だった。
 
 だが、もともとスウェーデンは、戦力を見る限り格下ではなかった。この日双方でプレーした16人ずつの市場価値を比べれば、スウェーデンの選手たちの総計は日本の2.4倍になる。もちろんイサクの160億円近い化け物のような数字が突出しているが、日本で最高の鈴木彩艶はスウェーデン代表の中では9番目に過ぎない。市場価値が選手の能力を正確に反映しているとは限らないとしても、個々が相応の力量や経験値を備えていることは間違いなかった。

 そういう意味でスウェーデンは、本当に危険な相手だった。潜在能力に比べれば、明らかに過小評価され自信も失いかけていた。しかし先に失点したことで逆に方向性が明確になり、前線にボールを送ると全体も押し上げるようになり、さらに同点ゴールが勇気をもたらした。

 森保一監督は、諸々難しい選択を迫られた。率直にスウェーデン戦の勝利は最重要課題ではなかった。対戦相手はともかく、次戦こそが今大会の日本のハイライトになるのは間違いなかった。指揮官は覚悟を決めて中村敬斗を下げた。代わりに長友佑都を送り込む策が最適だったかは判らないが、森保監督らしい采配ではあった。

 スウェーデンの攻勢には拍車がかかり、左サイドでの優位性どころか、前線での落ち着き場所も失った日本は防戦一方になる。守護神のスーパーセーブ連発がなければ失っていた試合だった。ただし、その鈴木を早くから抜擢して使い続けてきたのは紛れもなく森保監督なので、ワールドカップへ向けてチーム作りという観点を重ねれば、やはりこの難しいグループを2位で抜けられたのは指揮官の功績という見方も出来る。

 ブラジルは組み合わせ抽選を終えた時点で、最も対戦する可能性の高い相手と想定されたので、十分な対策も練られているはずだ。しかも今回のブラジルは必ずしも優勝候補とは言えず、ラフィーニャの復帰が叶わなければ、さらにチャンスは広がるかもしれない。

 いつか日本が頂点を目ざすなら、現在地を見極めるうえでも格好の試金石になる。

文●加部究(スポーツライター)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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