
金田喜稔がスウェーデン戦を斬る!「彩艶の安定感は落ち着きをもたらしていた。終盤には勝点1を死守するビッグプレー」【W杯】
[北中米ワールドカップGS最終節]日本 1-1 スウェーデン/6月25日/ダラス・スタジアム
北中米ワールドカップのグループステージ最終節。日本代表は、ダラス・スタジアムでスウェーデン代表と対戦し、1-1で引き分けた。
グループステージは1勝2分けの無敗。勝点5を獲得して2位で決勝トーナメントに進出できたのは、素晴らしい結果だと思う。選手を入れ替えながら戦い、体力の消耗を抑えられたのも大きい。特にスウェーデン戦では、それまでフル稼働だった佐野海舟を休ませられたのは、次戦に向けての好材料だ。
試合序盤の日本とスウェーデンは、互いに勝利を目ざしているけど、守備をしっかり固めてリスクを冒さなかった。両チームとも勝利以上に「負けてはいけない」という意識が強かったはず。バランスを崩してまで攻撃に出るよりも、相手の隙を窺う。そんな膠着した時間が続いたように思った。
戦術的にも、日本とスウェーデンはよく似ていた。日本は基本的に3-4-3、スウェーデンもヴィクトル・ヨケレスを頂点に3-4-3のシステムを採用していた。そのため、ミラーゲームで1対1の局面が多くなり、互いに潰し合う展開になりがちだった。
そんなゲームで、先手を取ったのは日本だった。56分に前田が先制点を挙げた。この得点は、前線の3人の連係が生んだ素晴らしい形から生まれた。
起点となった上田のポストプレー、堂安の鋭い縦パス、そして裏へ抜ける前田のタイミングとスピード。3人の特長が見事に連鎖して、相手の守備を崩し切った。
それにしても、前線の選手たちの守備への貢献は際立っていたね。前田や堂安がプレスバックしてボールを奪うシーンが何度も見られた。彼らが敵の背後からプレッシャーを掛け続けることで、中盤や最終ラインの選手は非常に守りやすくなる。こうした献身性は他の選手にも当てはまるし、それが今の日本の揺るぎない強さだと思う。
日本は先制したけど、リードも束の間だった。62分、アントニー・エランガにカットインから狙いすましたシュートを決められ、同点に追いつかれてしまった。
この失点は、2-2で引き分けた初戦のオランダ戦で、クリセンシオ・サマービルに決められたゴールと非常によく似ていた。同じような形で失点しているのは、明確な課題として捉えなければならない。
では、どうすれば防げたのか。ポイントは、相手がカットインしてシュートを打つコースを、いかに遮断できるかだ。2つの失点シーンを振り返ると、そのエリアをカバーすべきだったのは、ダブルボランチの一角の鎌田だったのではないだろうか。
もちろん、鎌田1人の責任ではない。でも、ボランチの選手が相手のシュートコースに対して、一歩二歩、踏み込み、視野に入るだけでも相手はシュートを打ちにくくなる。もう一度、ボールを持ち直す必要があれば、それだけで攻撃のテンポは遅れ、失点のリスクは格段に下がる。
エランガのシュートは強烈で、さすがの鈴木彩艶も止められなかった。ただ、試合を通して、彩艶のパフォーマンスは素晴らしかった。開始早々のピンチを凌いだ好セーブや数々の見事なシュートストップなど、彼の安定感はチームに落ち着きをもたらしていた。試合終盤には、アレクサンデル・イサクの決定的なヘディングシュートを防いだのは、日本の勝点1を死守するビッグプレーだった。
攻撃面でも、効いていたよね。前線の上田や前田へ正確なロングフィード。彼のキックは、有効な武器になると思う。キーパーへのバックパスが、逃げの一手ではなく、一気にチャンスを作り出す攻撃の第一歩になる。この形をワールドカップの舞台で見せられたのは、チームにとって大きな自信になるはずだ。選手たちも「彩艶のキック1本でシュートまで行ける」という共通認識を持てただろうね。
さて、決勝トーナメント1回戦の相手は強豪ブラジルだ。注意すべきは、カットインからのシュートを武器とするヴィニシウス・ジュニオールだろうか。彼の得意技をチームとしていかに消していくか。中盤の選手が戻ってシュートコースを消し、縦への突破はサイドバックとセンターバックで対応するなど、明確な決まりごとが必要になってくるだろう。
ブラジル戦は、お互いにチャンスの多いオープンな展開になると思っている。ブラジルの選手たちは、スウェーデンのように全員が規律を持ってハードワークをするわけではない。特に前線の選手は守備をしない場面も多い。
そのため、日本のビルドアップに対してプレッシャーが緩くなる時間帯も出てくるはずだ。そうなれば、日本がボールを持って攻め込むチャンスは、スウェーデン戦のそれより増えるだろう。そして何より「先に点を取る」といった強いマインドを持つことだ。
ブラジルは、個々の能力は世界トップクラスだけど、ひとたび失点すると精神的なもろさを見せ、一気に崩れることがある。かつてブラジル・ワールドカップでドイツに1-7で大敗した時があったように、その傾向は今も変わっていないと思う。
だからこそ、日本にはブラジル相手に臆することなく攻めてほしい。取られても取り返すくらいの強い気持ちで、打ち合いを制するくらいの気概でピッチに立ってほしい。前線からのプレッシングも、相手が繋ごうとしてくる分、スウェーデン戦よりも効果的にハマるはずだ。
4年に一度の最高の舞台で、ブラジルと真剣勝負ができる。これは、今の日本のサッカーを世界中にアピールする絶好の機会だ。持てる力をすべてぶつけてくれることを期待しているよ。
【著者プロフィール】金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、68歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜FM)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。
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