このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがスゴイ!」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。
第48回は、日本ランク最高17位で、引退後は国内トップの学生やジュニアを多く育てている宮崎靖雄氏に話を聞いた。宮崎氏が推すのは、アメリカ期待の20歳、ラーナー・ティエン。フォアもバックも「力みがないフォーム」に注目してほしいと語る。
「ティエンはストロークを打つ際、下半身と上半身の連動が非常に優れている選手です。だからスイングに力みがなく、相手としてはコースが読めずに苦労します」
ティエンがそのようなフォームを身に付けられたのは、昨年の夏からコーチを務めるマイケル・チャンの存在が大きいという。
「チャンについてトレーニングを重ね、下半身が強くなったことで、余計に上半身の力みがなくなりました。以前のティエンはそこまで下半身が強くありませんでしたが、今はテイクバック時の身体のひねりがより深くなっています。そうすると力を抜いてスイングできるんです。腕ではなく体幹で打っているのが見ていてわかります」
世界のトップ選手であれば、大抵は体幹主導で打つものだが、ティエンもそれができるようになって上位に食い込んできたと宮崎氏は分析する。そしてこのことは、今後グランドスラムで活躍していく上で大きなカギになるという。
「5セットマッチを2週間、勝ち抜いていくには、いかに無駄な体力を使わずに、効率良く力を出していけるかが重要で、そのスキルがないと通用しません。ティエンは若くしてその能力に長けています」と宮崎氏。彼の力みのないフォームは「いいボールを打つだけでなく体力温存にもつながる」ため、長丁場の試合にも対応できるということだ。
実際、今年の全豪オープンではベスト8のうち7人が上位8シードで占められたが、1人だけ下位シードで残ったのがティエン(第25シード)だった。すでにティエンの強みはグランドスラムで結果として表れてきている。「今後がさらに期待できます」と宮崎氏が言うように、近い将来には優勝争いする姿を見られるかもしれない。
◆Learner Tien/ラーナー・ティエン(アメリカ)
2005年12月2日生まれ。180cm、73kgg、左利き、両手BH。少年期から全米テニス協会の選手育成プログラムで力を付け、23年にプロ転向。昨年メスでツアー初優勝を飾り、ネクストジェンも制覇。得意なサーフェスはハードコートで、今年の全豪OPでは初の四大大会ベスト8に進出した。ATP最高位18位(26年5月25日付)。
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
※『スマッシュ』2026年7月号を再編集
【連続写真】体幹のひねり戻しを使ったティエンのフォアハンド「30コマの超分解写真」
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