
「日本について言わせて!」英国でその評価は確実に変わっている。GSで示した技術、規律、連動性「今大会でかなり勝ち進むかもしれない」【現地発】
北中米W杯のグループステージF組の第2節、日本対チュニジア戦は、イギリス時間の早朝5時キックオフだった。試合は4-0で日本の圧勝。終了後、英BBCラジオを聞いていると、情報番組のプレゼンテーターが興奮気味にこう話し始めた。
「番組が始まるまで、日本対チュニジアを見ていたんだ。日本について言わせて! 日本の技術レベルは本当に驚異的だよ。ゴールキーパーからフォワードまで全員、本当に凄い。私はそれなりにサッカーを見てきたけど、今大会で最も技術力の高いチームは日本だと思うんだ。本当に素晴らしい」
さらに彼は、日本のプレーを「とてもクリーン」と表現し、センターバックからストライカーまで全員が足もとのボール扱いに自信を持っていると続けた。
「まるでボールが足にくっついているみたいなんだ(笑)。こういうことを言うのは私が最初ではないと思うが、今回のワールドカップで日本代表は優勝候補のダークホース(大穴)だよ」
日本代表への評価は試合を重ねるごとに高まっている。そう感じる場面が、英国メディアやラジオの中で何度もあった。
もちろん、その下地は以前からあった。三笘薫や鎌田大地、田中碧、遠藤航。プレミアリーグで存在感を示す日本人選手は増え、これまで冨安健洋、吉田麻也、岡崎慎司、香川真司らが築いてきた信頼もある。イギリスのサッカーファンにとって、日本代表はもはや遠い国の未知のチームではない。
英国の視線がさらに大きく変わったのは、3月31日にサッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムで行なわれたイングランドとの強化試合だった。日本が1-0で勝利すると、識者や記者の見方は明らかに変わった。ガリー・ネビルは「日本はイングランドを切り裂いた」と評し、ロイ・キーンも日本を侮れない存在として認めるような発言を残した。
こうして迎えたW杯本大会。初戦の相手はオランダだった。
結果は2-2の引き分け。この試合で英国の解説者たちがまず評価したのは、日本の守備組織だった。キーンは「日本はブロックを作って守るのが非常に上手い。オランダとしては、相手を動かさなければならない。ただ、日本は本当に規律正しく守っていた」と話した。
ネビルも同じ見方だった。「守りに入った時の日本はとても強い。守備が強固だ」と、日本の粘り強さと組織力を高く評価していた。
一方で、称賛だけでは終わらなかった。前半の日本は慎重な入り方を見せ、失点して追いかける展開になってから、ようやく攻撃のギアを上げた。そこに物足りなさを感じたのが、オーストラリア代表やセルティック、横浜F・マリノスを率いた経験を持つアンジェ・ポステコグルーだった。
彼は「なぜ最初からしない? 日本にはオランダに勝利できる力があるのに」と訴えた。
これは、日本への評価が高いからこそ出た言葉だった。日本には、オランダ相手にも勝ち切れる力があるのではないか。英国側の視線は、すでにそこまで進んでいた。
第2戦のチュニジア戦では、こうした評価が一気に表面化した。
4-0というスコアもさることながら、英国メディアで繰り返し語られたのは、日本の技術力だった。GKから最前線まで、全員がボールを扱える。狭い局面でも慌てず、短いパスをつなぎ、相手の重心をずらして前進する。チーム全体の技術水準が話題になった。
現役時代はリバプールなどでプレーした解説者のチャーリー・アダムは、日本についてこう話した。
「ワールドカップの2試合を通して見てみると、日本の選手たちがどれほど走っているのか、どれだけ高いレベルでプレーしているのかが分かる。90分を過ぎてアディショナルタイムに入っても、運動量が落ちない。本当に驚異的だ。まったく止まらないからね。正直、どの時間帯を振り返っても、『ここからチュニジアが盛り返して支配するかもしれない』と思う時間はなかった。日本は最初から最後まで試合を支配した。それは選手たちへの大きな賛辞だ」
そして、1-1で引き分けた第3戦のスウェーデン戦である。
英紙タイムズは日本について、「いつものように、見ていて非常に気持ちの良い、整った、正確で技術力の高いサッカーを披露した」と記した。ここで重要なのは、「いつものように」という表現だ。日本の良質なサッカーは、もはや一度きりの驚きではなく、継続的な特長として認識されている。
中継を担当した英BBC放送のスタジオでは、元スコットランド代表MFのスコット・ブラウンが、日本とスウェーデンの前線を比較した。
スウェーデンにはリバプールのアレクサンデル・イサク、アーセナルのヴィクトル・ヨケレス、ニューカッスルのアントニー・エランガがいる。3人の市場価値を合わせれば、総額2億4000万ポンド規模(約512億2800万円)という豪華な前線だ。だがブラウンは、3人が連動しているようには見えなかったと指摘した。
一方で日本については、短いコンビネーションを使い、積極的に裏へ走り、お互いのためにプレーしていたと評価した。日本の前線は、上田綺世、前田大然、堂安律の3人。前線の一体感という点では、日本のほうが明らかに上だったと、ブラウンは断言した。
グループステージの3試合を通じて、日本代表は「善戦するアジアのチーム」ではなく、「勝ち進む可能性を持つチーム」として語られるようになった。スポーツサイトのアスレティックの報道でも、こうした空気はよく表われていた。
「日本は、まさに上昇気流に乗っている。たとえばオランダ戦の先発11人は全員がヨーロッパでプレーする選手たちだった。つまり、日本は決して侮れる相手ではないということ。もちろんオランダはそのことを痛感したはずだ」
英ラジオ局トークスポーツでは、バーンリーやエバートンを率いた英国人指揮官のショーン・ダイチも、日本について興味深い見方を示した。
「日本は今大会でかなり勝ち進むかもしれない。ダークホース的な存在かもしれないな。70~80年代の南米のチームみたいな感じだよ。よく知られていない存在というか。2004年にギリシャがユーロを優勝した時みたいなものかな」
少し大げさに聞こえるかもしれないが、英国での日本評は確実に変わっている。その視線の先にあるのが、決勝トーナメント1回戦のブラジル戦だ。
グループステージで示した技術、規律、連動性は、ブラジルを相手にどこまで通用するのか。そして、英国で高まっている期待感が本物かどうか。森保ジャパンの現在地は、ブラジルとの大一番でより鮮明になるはずだ。
文●田嶋コウスケ
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