けっこう前に記事にしたが、人生で初めて島根県を旅してきた。1泊2日、航空券込みで3万円以内という格安旅行だった。詳しくは過去記事をご覧いただきたい。
もちろん島根といえば、日本三大そばのひとつ「出雲そば」。
旅の途中には、同僚・佐藤さんおすすめのお蕎麦屋さんで、佐藤さんが「日本一うまい」と豪語する鴨南蛮そばも食べた。彼の言う通り、それはめちゃくちゃうまかった……。
しかし、私の旅はそれだけでは終わらない。
旅先でスーパーを見つけたら、とりあえず入る。そして干しそば売り場をパトロール。そこで見つけたのが、今回ご紹介する遠藤製麺『本場 出雲そば』である。
製造者である遠藤製麺は島根県にある製麺所であり、もしかしたら東京ではあまり見かけないメーカーなのかもしれない。少なくとも、この連載では初登場。そんな貴重なこの干しそばを手に入れられただけでも、島根へ来た甲斐があったというものだ。
ちなみに遠藤製麺は明治16年(1883年)創業。パッケージには「出雲名産」の文字が躍り、「出雲推奨商品」という表記もある。地元で親しまれている一品なのだろう。
商品の紹介はこのくらいにして、このそば、実は茹で方がものすごく面白かった。連載300回近いのに、これまでになかった作り方がパッケージ裏には書かれていたのだ。
説明どおりに作ってみよう。
まずは大きな鍋に湯を沸かす。
沸騰したら、そばをバラバラにして湯へ入れ、箸で軽くほぐす。
再び沸騰したら、カップ1杯ほどの水を差して静める。
再び沸騰したら火を止め、そのままフタをして約5分待機。
5分後、そばを1〜2本取り出して硬さを確認し、ちょうど良ければザルへ。
その後は冷水でしっかり洗い、キリッと締めれば完成だ。
つまり、このそばは “火を止めてから5分間フタをして待つ” という、これまで見たことのない斬新な茹で方なのである。
“火止め5分蒸らし蕎麦”。果たして、どんな味がするのだろう──
太さも食感も良く、噛んだあとにほんの少しザラッとした舌触りが残るのも悪くない。
しかし、あえて乱暴に例えるなら、「緑のたぬき」をワンランク本格的にしたような味。
あるいは、スーパーやコンビニの弁当コーナーで売られている、「生麺タイプの割子そば」を思わせる味でもある。
もちろん、それが悪いという意味ではない。こういう素朴なそばを食べたくなる日もあるし、家庭で食べるそばとしては十分においしい。
ただ、今回これを食べて改めて思った。
島根県で食べたそばは、本当にどれもうまかった。
空港を含めて3軒のそば屋に入ったが、どの店もレベルが高く、「さすが出雲そば」と思わせる一杯ばかりだった。
そんなハイレベルな島根のそばを知ったあとだからこそ、この「いかにも家そば」という味が、逆に新鮮に感じられた。
店で食べる出雲そばとは、まるで違う方向を向いた味。だからこそ、「出雲の家そばって、こういう世界なんだな」と思わせてくれた。
「家そば」か「外そば」かで判定するなら、今回はもちろん「家」だ。
しかし、ハイレベルな島根のそばを知ったあとだからこそ、この家そばの意外性が、より味わい深く感じられたのかもしれない。
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24
