
金田喜稔がブラジル戦を斬る!「守備から攻撃につなげる力をチームで作り出せなかった。全体のマインドが守り一辺倒に」【W杯】
[北中米ワールドカップ ラウンド32]日本 1-2 ブラジル/6月29日/ヒューストン・スタジアム
日本代表は北中米ワールドカップのラウンド32で、ブラジル代表とヒューストン・スタジアムで対戦し、1-2で敗れた。
悔しいね。本当に惜しかったし、残念だった。試合を通して、守る意識は絶対的に必要だったけど、それ以上に相手が4-3-3で来た時にどう攻めるか。そして中盤の軸となるカゼミーロの両脇のスペースをどのように使い、相手のディフェンスラインとボランチの間のスペースをどう攻略するか。ヴィニシウス・ジュニオールの抑え方などが主な課題だった。
日本は29分に先制した。佐野海舟が見事なインターセプトからドリブルで持ち上がってミドルシュートを放ち、ネットを揺らした。素晴らしいゴールだったね。彼はボールを持っている相手が何をしようとしているかを読み取る能力に長けている。この得点もまさにその特長を存分に発揮していた。
先手を取ってから、日本は完璧に近い守備を見せていた。ただ、追加点を奪いに行くよりも守りに入りすぎてしまっていた印象があったね。
後半の日本は、集中した守備で相手の攻撃を食い止めることができていた。だけど、56分に一瞬の隙を突かれて、カゼミーロに同点弾を決められてしまった。その後、日本の全体のマインドが守り一辺倒になってしまい、攻撃への切り替えがなかなかできていなかった。守備から攻撃につなげる力をチームで作り出せなかった。それがブラジルとの差だった。
南野拓実や三笘薫、遠藤航の不在。そして、グループステージ第1節のオランダ戦で負傷し、ブラジル戦にベンチ入りも出番がなかった久保建英など、厳しい選手事情を考えれば、戦略的に守備に回らざるを得なかったのかもしれない。だが、守って相手の攻撃を弾き返すだけでは、追加点を奪えない。
ただ、日本は攻撃に関して、手をこまねいていたわけではない。たとえば、フォワードの上田綺世にボールが入った時、上田は強力なディフェンス陣を相手によく身体を張ってキープしようとしてくれていた。
問題は、上田へのサポートがほとんどなかったことだ。彼が相手と競り合った後に誰がフォローに行くのか。こぼれ球を誰が拾うのか。そこが見えなかった。守備のためのポジショニングは整理されていたが、自分のマークするべき相手を追い越してでも上田を助けに行く動きが、ボランチの佐野も鎌田大地も十分にできていなかった。これが、後半に攻撃の流れを作れなかった大きな原因だと思う。また、全体が下がりすぎて、相手ディフェンスの前のスペースを上手く使えていなかった。
さらに、堂安律と中村敬斗が長い時間5バックの一角として守備に追われていたのも、攻撃の流れを作れなかった原因の1つだろう。両選手とも守備を非常によく頑張っていた。しかし、彼らは守備で相当体力を削られていたため、攻撃に切り替わった時に前へ出て行くエネルギーが残っていなかった。1対1で仕掛けられる場面でもクロスやバックパスが目立ち、本来の持ち味を発揮できていなかった。
日本の怪我人も多かったが、それはどこの国も同じ。ブラジルもラフィーニャやロドリゴを欠き、ベストメンバーではない状況だった。それでもブラジルは後半からボールをつなぎ、攻撃の形を変えられた。その理由は、カルロ・アンチェロッティ監督の力だと思う。
相手にリードをされた状況でどのように得点を奪うか。この時に、スタイルをきっちりと変えられる。これがブラジルの強さの1つだと思う。事実としてブラジルは後半、ヴィニシウスを左サイドに張らせ、サイドからのクロス攻撃を増やしてゴール前で勝負する形を明確にしてきた。
ブラジルの戦術変化の影響で、日本のディフェンスラインは大きく揺さぶられた。その結果、ペナルティエリア内で生まれたわずかなスペースを見逃さなかったガブリエウ・マルチネッリに逆転弾を決められてしまった。
森保一監督は、常に「良い守備から良い攻撃へ」と言ってきたが、ブラジル戦で「良い攻撃」を作り出すのがいかに難しいかを痛感させられたね。厳しく言えば、良い守備の後の攻撃力が、強豪国相手には足りなかった。
結果的に敗れたものの、今大会の日本の安定感は、これまでのワールドカップと比べても過去最高だったと思う。だけど、1-1で引き分けたグループステージ最終節のスウェーデン戦もブラジル戦も先制点を取っておきながら勝ち切れていない。先制後に試合をコントロールし、追加点を奪ってとどめを刺す展開に持ち込めなかった。
これまでを振り返ると、ロシア・ワールドカップのラウンド16のベルギー戦も似たような形だった。2点をリードしながらも、後半に3点を叩き込まれて逆転負けを喫した。先制した試合の優位性を活かしきれていないよね。これは日本の長年の課題かもしれない。
では、どうすれば変わるのか。やはり追加点を奪う力、奪いに行くマインドが不可欠だと思う。日本の選手たちには規律があり、集中力も高い。そのため、「追加点を取る」方向性に舵を切っても良いのではないか。攻撃に重きを置いても、今の選手たちは守備をおろそかにはしないはずだ。
カタール・ワールドカップ後の4年間で、森保監督は上手くチーム作りをしてきたと思う。チームの一体感を上手く保ち、見事にまとめてきた。だからこそ、もっと上に行ってほしかった。この事実をどう評価し、次につなげていくか。冷静な判断が求められるだろう。
ここまで素晴らしい戦いを見せてくれた選手や監督、スタッフ、そして応援してきたすべての人たちに「お疲れさま」と伝えたい。
これから日本はさらに成長するはず。今日味わった悔しさを4年後に晴らしてくれることを願っているよ。
【著者プロフィール】金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、68歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜FM)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。
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