
結果はモリヤスとアンチェロッティの差。日本はもっと高いレベルで戦える。がっかりした。もし延長に入っていたら?多分…【ブラジル人記者の視点】
森保ジャパンは現地6月29日、北中米ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、ブラジル代表とアメリカのヒューストン・スタジアムで対戦。1-2で接戦を落とし、ベスト32で涙を呑んだ。
3-2で逆転勝利し、ブラジル初撃破を果たした昨年10月の一戦は親善試合。W杯でのブラジル戦は20年ぶり(前回は1-4で敗戦)となったなか、29分にハーフウェイライン付近でボールを奪った佐野海舟が一気に持ち上がり、見事に先制点を挙げた。
しかし、このリードを守り切れず。後半に入って56分、ガブリエウ・マガリャンイスのクロスをカゼミーロに頭で合わせられ、ついに失点。同点に追いつかれると、延長戦突入の直前だった90+5分に自陣でのボールロストから、ガブリエウ・マルチネッリに押し込まれ、痛恨の勝ち越し点を浴びた。
カルロ・アンチェロッティ監督が率いるサッカー王国との差はどこにあったのか。日本サッカーを長く深く取材するブラジル人記者、チアゴ・ボンテンポ氏に見解を求めた。
――◆――◆――
――試合前に話を伺った際には、「多分PK戦になる。PK戦でザイオン(GK鈴木彩艶)がヒーローになって日本が勝つ。50-50の試合だと思う。ブラジルがちょっとだけ上で、ブラジルが55、日本が45ぐらい。どっちが勝つか分からない」と仰っていましたね。その見立て通り、非常に際どい試合となりました。
「前半は50-50みたいな状況だったけど、後半はブラジルが一方的に攻めた。前半は全てが日本の計画通りだったけど、後半にアンチェロッティがチームにたくさんの小さな変化を加えた。例えば、ハーフタイム明けにエンドリッキを投入して、ヴィニシウスのポジショニングが変わった。
前半のヴィニシウスはフォワードだけのポジションにいて、トミヤス(冨安健洋)とドウアン(堂安律)があまりスペースを与えなかった。でも後半はもっと深いポジションにいて、ウイングにも流れて、そのポジションからたくさんのプレーを演出できた。後半のヴィニシウスはすごく日本を苦しませた。
他の変化は、前半はブラジルがほとんど中央に攻めていたのに対し、後半はウイングから攻めたことだ。中央はあまりスペースがなく、タニグチ(谷口彰悟)もよく守っていた。でも後半はウイングから攻めてクロスも上げ、日本の弱点を見つけた。
ウイングバックとサイドのセンターバックの間は、オランダ戦とスウェーデン戦でもスペースを与えて失点した。この試合でもまた、特に左サイドのヒロキ・イトウ(伊藤洋輝)とナカムラ(中村敬斗)のところはそんなに安定感がなくて、そこから同点ゴールが生まれた。
それだけじゃなくて、ブラジルは他にたくさんのチャンスを作っていて、同点になったシーンがたとえゴールにならなくても、他のプレーでブラジルがすぐ点を決めると思った」
――森保一監督はこの日、まず66分に堂安律と中村敬斗を下げ、菅原由勢と鈴木淳之介を投入しました。守備を強化すると、さらに78分に鎌田大地と伊東純也に代え、田中碧と町野修斗を送り込みました。そして最後の一手として、勝ち越し点を浴びた直後の90+7分、前田大然から小川航基に代えました。
「後半の森保監督の交代は、まずは守備を修正するためだった。ただウイングバックの2人、ドウアンとナカムラを交代した時に、日本の攻撃がなくなったと思う。その時からもう日本は攻撃が何もできなかった。そして守備はそんなに良くならなかった。スガワラは本職のディフェンダーだけど、彼よりドウアンの方が守備の仕事をしていたと思う。
モリヤスの次の交代カード、タナカとマチノも試合を勝つためじゃないと思った。ずっと『延長戦に行きたい』という思いが透けて見えた。そして、どうしてマチノなのか。それは分からなかった。全く分からなかった。多分、ユイト・スズキ(鈴木唯人)はまだ調子が良くないのかな。どうしてシオガイ(塩貝健人)を入れない?マチノが代表でもクラブでもそんなに活躍できていないので、なぜ彼を入れたのか分からなかった。
後半はブラジルだけが攻めて、ゴールのチャンスを作ったので、この試合で90分間で勝つのに値するのはブラジルだけだ。モリヤスの采配は守備だけだったので、選手の特徴を活かせなくて、もったいないと思った」
――アンチェロッティ監督と森保監督の差が出たと。
「そうそうそう、そう感じた。さっきブラジルメディアで試合後の分析を書いた時は、『試合の結果はモリヤスとアンチェロッティの差だ』と指摘した。選手たちの差はそんなに大きくないけど、監督の差はすごく大きい。
どうしてモリヤスは選手のポテンシャルを活かさなかったのか。アンチェロッティは、チームの状況はとても悪かったけど、後半の交代だけじゃなくて、修正力で日本を圧倒した。
多分、試合の内容だけを見たらブラジルが遥かに強かった。でも選手たちの能力だけを考えたら、日本はもっと良い内容の試合を見せてほしかった。日本はもっと高いレベルで戦えると思うので、内容的にはとてもがっかりしたね」
――監督の修正力に加え、両国の明暗を分けた部分はありますか?
「例えばヴィニシウス。彼のプレーが変わった時にその差が見えた。もし日本にミトマ(三笘薫)がいたら、ミトマだけができるプレーがあるよね。ヴィニシウスしにしかできないプレーがたくさんあった。トミヤスとサノを抜いて、ポストを叩いたシーン。あれが入っていたら、ワールドクラスのゴールだった。
それにブラジルのセンターバック、特にガブリエウ・マガリャンイスはウエダ(上田綺世)に完全に勝ったと思う。日本は守備面では、まずまずできた時があったけど、攻撃面では特にウエダがあまり良いプレーができなかった。今日のトミヤスも、普段よりそんなに良い調子じゃなかった。日本の守備のキープレーヤー、ザイオン、サノが良くできたけど、トミヤスはあまりだったね。
そしてやはり、ブラジルは交代カードが良かった。カゼミーロを下げてファビーニョを入れたのも良かったし、途中出場のマルチネッリも決勝ゴールを決めた。日本の交代カードはあまりインパクトがなかった。それも試合の結果に影響があったね」
――先ほど「森保監督は延長戦にもつれ込ませようとしていた」という分析がありましたが、もし延長戦に入っていたとしたら、どんな展開になっていたと思いますか?
「多分、延長になったらモリヤスはPK戦を狙うかなと思っていた。守備だけをやっていたので。そのような、1チームが攻めて、もう片方は守備だけという試合展開なら、PK戦に行ったら守備をしていたチームにかなりチャンスがある。メンタル面でも。多分、モリヤスはそれも考えていたけど、一般的にチームの差が大きい時にこのような展開を狙う。今のブラジルと日本はそんなに差はないと思うので、だからこそがっかりしたね」
取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)
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