東京都小平市の公園で、鉄道写真の撮影を趣味とする「撮り鉄」仲間の男子中学生に集団で暴行を加え、高額なカメラなどを奪ったとして、警視庁は少年ら4人を強盗の疑いで逮捕していたことがわかった。
逮捕されたのは、東京都練馬区に住む職業不詳の男(18)をはじめ、東京都国分寺市の高校生の少年(15)、埼玉県川越市の中学生の少年(14)、神奈川県川崎市の高校生の少年(15)の計4人。なぜ同じ趣味のコミュニティ内で、少年たちは“撮り鉄”にとって大切なカメラを奪い、暴行を加えたのか。背景を詳報する。
現場は電車が撮影できる隠れ人気スポット
事件の概要を、社会部記者が解説する。
「被疑者らは共謀のうえ、今年4月4日午後1時30分ごろから午後3時10分ごろまでの約1時間半以上にわたり、小平市内の公園で10代の男子中学生を4人で取り囲みました。
被害者に対して『50万円をよこせ』『(持っている)カメラをよこせ』などと脅したうえ、胸ぐらをつかんで左肩を殴打したほか、腹部を足で踏みつけるなどの暴行を加え、現金5000円と時価15万円相当のカメラ1台を力ずくで奪い取った疑いが持たれています」
警視庁によると、逮捕された4人と被害者の男子中学生は、以前からSNSを通じて鉄道写真の撮影現場などで交流のあった「撮り鉄」仲間だったという。
しかし、昨年7月ごろにSNS上でのやり取りを巡って何らかのいさかいが発生。事件当日、被害者の中学生は加害者の少年グループ側から「また一緒に電車の写真を撮影しに行こう」などと誘い出され、現場の公園に呼び出されていた。
調べに対し、18歳の男は容疑を一部否認しているものの、残る少年3人は「間違いありません」と容疑を認めている。
事件の舞台となった小平市内の公園は線路や踏切が近く、ファンの間では以前から、鉄道をきれいに撮影できる「隠れスポット」として知られていた。近隣住民はこう証言した。
「あの公園にはジャングルジムや見晴らし台があり、線路脇に位置することから撮影スポットになっています。そのため、大きな三脚やカメラを抱えた少年や若い人たちが集まって、わちゃわちゃと撮影している姿をよく見かけますね。
普段から大声で騒ぐといった目立った迷惑行為はそれほど記憶にありません。ただ、一部の熱心な人たちは、高さが2メートル20センチほどあるジャングルジムの一番高いところにまで登って、上からカメラを構えて撮影していました。
床やウッドデッキの上に三脚を置いて撮るのが普通だと思っていましたが、わざわざ危ない高い場所にまで登るのを見て、写真に対する気合いの入り方が違うなと感じていました」
現場やSNS上で『ゴミ』『障害物』といった汚い言葉が飛び交うことも…
同じ趣味を持つ仲間同士で、なぜ今回のような事件が起きたのか。長年、鉄道撮影を続けている愛好家(30代男性)は、近年の若い撮り鉄コミュニティについてこう話す。
「もちろん、マナーを守って楽しんでいる人が大半です。ただ、若い撮り鉄の一部には、写真を芸術として楽しむというより、一点の曇りもない『完璧な記録』を残すことに強くこだわる人たちもいます。
撮影時に太陽が雲に隠れたり、一般の通行人が画面を横切ったりしただけで過剰に反応する人もいる。現場やSNS上で『ゴミ』『障害物』といった汚い言葉が飛び交うこともあり、他者への攻撃につながりやすい空気が生まれていると感じます」
さらに、SNSの普及がグループ内の「排他性」や「マウンティング」に拍車をかけているという。
「ネット上の撮り鉄コミュニティでは、高額な機材を持っていることや、珍しい列車を良い構図で撮れたことが評価されやすく、序列のようなものが生まれやすい。今回、SNS上のやり取りを巡っていさかいが起きたとのことですが、狭いコミュニティの中で一度トラブルになると、集団から攻撃の対象にされるケースもあります。
かつては鉄道雑誌などのメディアがマナー啓発の役割を担っていましたが、いまの若い世代は雑誌や本をあまり読まず、SNSだけでつながる個人行動が中心です。先輩から現場のマナーを教わる機会も少なく、一部のコミュニティでは、自浄作用が働きにくい面はあると思います」(同前)
実際、有名な撮影地の周辺では、私有地や農地への無断侵入、列車と接触しかねない危険な場所への立ち入りが問題になるケースもあるという。
「立ち入り禁止の斜面に侵入したり、線路に近い場所へ脚立を立てたりと、危なっかしい場面を見ることがあります。撮影者たちが公道に広がってしまい、歩行者や車の通行の妨げになることもある。もちろん全員ではありませんが、周囲への配慮を欠いた行動が目立つ現場もあります」(同前)
SNSでつながった同じ趣味の仲間同士による今回の事件。警視庁は、トラブルがエスカレートした経緯や4人それぞれの関与について慎重に捜査を進めている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

